優勝候補・日本ハムに何が起きているのか 「新庄体制」5年目に見えた“誤算”と現場のズレ
優勝候補と見られていたチームが、なぜ波に乗れないのか。
今年のパ・リーグで、開幕前の評判が高かったのは日本ハムだ。昨シーズンは2年連続の2位に終わったものの、終盤までソフトバンクと優勝争いを演じ、勝率.593は日本一となった2016年以降では最高の数字だった。オフには最大のライバルであるソフトバンクを自由契約となった有原航平を獲得。近年では最も充実した戦力と見る声が多かった。【西尾典文/野球ライター】
フロント主導の現場管理
ところが、ふたを開けてみればソフトバンクとの開幕カードで3連敗。その後もチームはなかなか波に乗れず、セ・パ交流戦開幕時点でBクラスの4位に沈んでいる。この状況を予想したファンは少なかったのではないだろうか。

苦戦の大きな要因は、不安定な投手陣だ。期待の大きかった有原は開幕から打ち込まれる試合が続き、5試合に先発して1勝4敗、防御率は8点台と低迷。4月27日には登録抹消となり、二軍暮らしが続いている。
昨シーズンブレイクした達孝太は4連敗を喫するなど負けが先行。伊藤大海、加藤貴之、北山亘基の実績ある3人は勝ち越しているが、防御率は3点前後と、“投高打低”と言われる現在のNPBで決して褒められる数字ではない。
リリーフ陣は抑えの柳川大晟こそ安定しているが、そこにつなぐまでの中継ぎは安定感を欠いている。交流戦前最後のカードとなったソフトバンクとの3連戦では合計28失点で3連敗。現在のチーム状況をよく表していると言えそうだ。
打線は、12球団トップのチーム本塁打数をマークするなど長打力が大きな武器である。チーム打率は西武、オリックス、ソフトバンクの上位3チームより低い。中軸を任されている清宮幸太郎、郡司裕也、万波中正、野村佑希がそろって2割台前半の打率に沈んでおり、ホームランの多さが得点力に直結しているとは言い切れない。
この背景には、チーム内のある事情が絡んでいるという。球団関係者はこう話す。
「他の球団でもそうですが、最近はコーチだけが指導するのではなく、アナリストの出すデータをもとにしてピッチングやバッティングを作っていくことが主流になっています。もちろん、それで伸びる選手はいますが、全員に合うわけではありません。
特にバッティングに関しては、打球速度や角度を重視し過ぎる傾向が強い。日本ハムはフロント主導で現場を管理しており、その結果としてホームランは増えているかもしれません。反面、淡白な内容の打撃が増えているように見えますね」
新庄監督との方針のズレも原因?
その言葉通り、チームの三振数はパ・リーグ最多となっている。ホームランか三振かという豪快な野球は見ていて楽しいかもしれない。とはいえ、それだけで勝てるほど野球は簡単ではない。
チームの問題点は他にもあるようだ。現場を預かる新庄剛志監督とフロントとの間にある“ズレ”である。前出の球団関係者はこう続ける。
「フロントとしては、ここ数年積極的にお金を使って補強し、戦力を整えてきました。新庄監督も当初の2年間は、いろいろと試しながら選手を引き上げてきています。新庄監督は破天荒なイメージとは逆に、野球に関しては細かいプレーを重視する傾向が強い。監督に就任して最初の秋季キャンプでも、走塁や守備について細かく指導していました。ツーランスクイズやダブルスチールといった作戦も、新庄監督になってから目立っています。一方、今の主力には細かい野球に長けた選手が多いわけではありません。選手自身も、チームプレーや細かい野球より、個人の技術を伸ばすことを重視しているように見える。そのあたりのズレが、チームが波に乗り切れない要因の一つではないでしょうか」
新庄監督は5月27日の阪神戦後、上川畑大悟の守備と走塁のミスについて指摘した。上川畑は翌日に登録抹消となっている。オーダーについても、同じ打順で固定されている選手は少なく、完全に日替わり打線に近い。新庄監督の目指す野球にマッチする形を探し続けている証拠と言えるだろう。
開幕前は優勝候補と見られながら、投手陣は安定せず、打線は長打力の一方で粗さが目立つ。フロント主導で整えてきた戦力と、新庄監督が求める細かい野球との間にズレがあるとすれば、簡単に解決できる問題ではない。
就任5年目の新庄監督にとって、今年は結果が問われるシーズンである。得意としてきたセ・パ交流戦をきっかけに巻き返せるのか。編成と現場のズレが響き続けるのか。日本ハムの現在地は、これからの数週間ではっきり見えてきそうだ。
※成績は2026年5月28日終了時点
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
