記事のポイントメイクアップ・バイ・マリオは、単発のインフルエンサー施策よりも長期的なコミュニティ構築を重視している。同ブランドは既存の愛用者を中心に起用し、オーガニックな支持をペイド施策へ自然につなげている。EMVやクリック数だけでなく、クリエイターとの関係性そのものをブランド資産として捉えている。
インフルエンサーマーケティングは、ビューティー業界でもっともダイナミックな領域のひとつだ。近年、ブランドは単発のインフルエンサーキャンペーンよりも、長期的なコミュニティ構築を優先する傾向を強めている。数百万のフォロワーを抱えるメガクリエイターだけに頼るのではなく、あらゆる規模のクリエイターと協業するブランドが増えている。そして、記憶に残る体験を提供することは、ある意味で報酬を伴う仕事の機会を提供することと同じくらい重要になっている。メイクアップ・バイ・マリオ(Makeup by Mario)でインフルエンサー&コミュニケーション部門のシニアマネジャーを務めるマリサ・サージェンティ氏は、ブランドのコミュニティ構築、ブランドにマッチするクリエイターの選定、そしてペイドとオーガニックのソーシャルメディアコンテンツのバランス調整に取り組んでいる。新たに発足したクリエイターネットワーク「グロッシー・キャンパス(Glossy Campus)」とのライブディスカッションのなかで、Glossy編集長のジル・マノフ氏がサージェンティ氏にインタビューを実施。メイクアップ・バイ・マリオのコミュニティ構築への取り組み、コミュニティメンバーがスター創業者のマリオ・デディヴァノヴィッチ氏を身近に感じられるよう同社が実践している施策、そして同社が(ゆっくりとながら)拡大しているペイドソーシャル施策などについて、話を聞いた。なお、本インタビューは読みやすさのため、軽微な編集を加えている。

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――メイクアップ・バイ・マリオのコミュニティはどのようなものかで、誰がそこに参加しているのか?

「とても強固なコミュニティで、アーティスト、美容愛好家、あらゆるレベルのコンテンツクリエイターが参加している。強いコミュニティを作るうえでカギとなる要素は、2つに集約されると私は考えている。それはオーセンティシティ(真正性)と、傾聴だ。メイクアップ・バイ・マリオは真の芸術性の上に築かれてきたブランドであり、我々はコミュニティに寄り添い、彼らが望むものに真摯に耳を傾けることで成長してきた。たとえば、3月に初代の『エセリアル・アイズ・パレット(Ethereal Eyes Palette)』を復刻したばかりだが、その需要は非常に大きかった。インスタグラムに寄せられたコメントの約70%が『エセリアル・アイズ・パレットを復活させてほしい』という内容だったというデータもあり、これは本当に驚異的だ。我々はその需要を察知し、マリオがそれを消費者に届けることができた。そしていまや、定番ラインとして恒久的に復活している。これは、コミュニティが我々に寄せてくれている信頼を、まさにたしかなものにしている」。

――このコミュニティを支えているものは何か。何が人々を引き寄せているのか。単に人々の声に耳を傾け、交流しているからなのだろうか?

「そう、それもひとつだが、マリオ自身の誠実さ、そして彼のストーリーが特別なものであるということも大きな要素だ。マリオは25年以上前にセフォラ(Sephora)でメイクアップの道を歩みはじめた。本当に文字どおりゼロからスタートしてこの世界を築き上げたという、非常に特別なストーリーで、人々はそのストーリーに深く共感している。それ自体がコミュニティ構築プロセスの一部だ。そのストーリーをコミュニティと共有し、ソーシャル上であれ対面であれ、あらゆる接点でコミュニティがマリオを身近に感じられるようにすることを大切にしている」。

――ナノ、マイクロ、マクロといった各層のインフルエンサーとの協業、さらにペイドとオーガニックといった全方位と、どのようにバランスをとっているのか?

「この5〜10年で、クリエイター、そしてビューティーブランドとクリエイターのパートナーシップという領域は、非常に大きく変化してきた。かつてはマクロ層を中心とした大型のパートナーシップに集中していた。それは認知獲得の面ではいまも非常に有効だが、近年は人々がマイクロクリエイターに強く共感するようになっており、まるで彼らを実際に知っているかのような親近感を抱いている。我々は、その両方に積極的に投資していきたいと考えている。マクロインフルエンサーによる認知獲得の施策だけを追いかけるのではなく、より小規模なクリエイターや、その中間に位置する『エスタブリッシュド・クリエイター(established creator)』と我々が呼んでいる層も含めて関わっていきたい。我々はあらゆる層のクリエイターと関係を築き、彼らが『見られている』『聞かれている』と感じられるようにし、メイクアップ・バイ・マリオがインフルエンサーとしての歩み全体を支えてくれていると感じてもらえるようにしたい。そして、オーガニックとペイドの比率でいえば、メイクアップ・バイ・マリオは間違いなくオーガニック寄りのブランドだ。しかし、最近はペイドにも少しずつ踏み込みはじめており、その点にはとてもワクワクしている。ペイドが多大な認知を生み出し、戦略的にキャンペーンを支えてくれることはわかっている。しかしオーガニックには、それに代えがたい力があることもまた事実だ」。

――ブランドに対する自然な愛着を、どのように育んでいるのか?

「メイクアップ・バイ・マリオのようなブランドにジョインすると、すでに非常に多くの愛が存在していることに気づく。我々はその愛を一方的に受け取るのではなく、同じだけのものを返していきたいと考えている。たとえば、彼らのコンテンツをブースト(広告出稿で増幅)させてもらえないかと打診したり、マリオとのコラボレーションに興味があるかを確認したり、イベントやマスタークラスに招待したりというように。マリオと対面で時間を共有できるというのは、本当に特別な体験だからだ」。

――ペイドパートナーシップではどのような点を重視するのか。オーガニックとは、どのように違うのか。どのようなクリエイターがブランドとの協業に向いているのか?

「クリエイターを選ぶ際、我々が主に見ているのは、すでに当ブランドの製品を使っているクリエイターだ。ブランドとのあいだに何らかのつながりがあるとわかることは、我々にとって非常に重要だ。なんとなく適当な商品を使っているだけだと、見ている人にはわかってしまうものだ。Z世代は、いまやあらゆるソーシャルメディア上でそうした違和感をすぐに見抜く。お金をもらっているから使っているだけだ、ということを彼らはすぐに察する。そのため、すべてのコンテンツが本物であり、もとからメイクアップ・バイ・マリオを愛用しているクリエイターによるものだと感じられるよう徹底したいと考えている。これは、先ほど触れた『クリエイターに報いる』という話にもつながる。彼らが自発的に作っているオーガニックなコンテンツは素晴らしいものであり、我々はきちんと見ているということを、彼らにも感じてもらいたい。実際、あらゆるソーシャルメディアからコンテンツを収集するツールを社内で活用しており、クリエイターが我々をタグ付けすれば必ず把握できる仕組みになっている。だからこそ、彼らが長期にわたってどれだけ投稿してくれているかを把握し、将来的に製品について語ってもらう機会を提供できることには大きな価値がある。そうした流れで進めれば、特定の台本やブリーフを渡すよりも、ペイドパートナーシップに移行したときに自然なコンテンツに仕上がる」。

――投稿に関するデータポイントは、具体的にどのような点に注目しているのか。たとえばシェア数の価値については多くの議論を耳にするが、あなたはどこに注目しているのか?

「クリック数やデータだけが重要なのではない。成功しているブランドを見ると、その理由はクリエイターとの関係構築に大きく投資しているからだとわかる。単に数字を見るだけではない。シーディングや単発のUGCキャンペーンを通じて初期から投資している相手が、いずれ大きなクリエイターへと成長することもある。そうした関係は成果として返ってくるだけでなく、非常に強固な関係性を築くことにもつながる。彼らの歩みを目の当たりにし、成長に寄り添えるというのは、本当に素晴らしい経験だ。そのため、EMV(Earned Media Value)やクリック数、シェア数は我々ブランドにとって非常に重要だが、それだけがすべてではない。今後我々が何より大切にしたいのは、関係性そのものであり、コミュニティのなかでどう存在し、それが今後どう発展していくのかという視点だ」。[原文:How Makeup by Mario balances paid and organic content]Sara Spruch-Feiner(翻訳、編集:藏西隆介)