「市民クラブの限界を目ざす」水戸が新たな中期経営計画を発表『Go J1からGo Asiaへ』小島社長は夢を語ることをためらわない
J1の舞台で初対戦を迎えた鹿島アントラーズとの“茨城ダービー”は、後輩クラブに軍配が上がった。Jリーグ創設から数々のタイトルを手にしてきた“常勝軍団”を、後発クラブの水戸がJ1の舞台で撃破する。2026年4月4日は、“夢物語”が現実になった日として、水戸サポーターの心に深く刻まれた。
それから6年の時が経ち、J1初年度のシーズンを戦っている水戸は4月27日、新たな中期経営計画を発表した。経営面・トップチーム・アカデミーの3本柱がそれぞれ目ざす次なるフェーズ。経営面に関しては、5年後の2031年までにクラブの事業規模を45億円超まで拡大し、トップチームの目標はACL出場が掲げられた。
さらにアカデミー部門の中期ビジョンは、所属カテゴリーを関東プリンスリーグからその先を含めた上位リーグ進出に定められている。
『Go J1からGo Asiaへ』と銘打たれた中期経営計画のスローガン。責任企業を持たない地方市民クラブの雄にとって、壮大なビジョンに映るが、中期目標の計画を主導した小島社長はこう語った。
「個人的には壮大なビジョンだとは思っていません。『やれる』と思っています。人を活用し、戦える人材を導入すれば、クラブとしての成長率が上がっていく過程で絶対に実現できるというストーリーを描いて実現に向かっていきたいです。
もちろん、大きいことを言ったからには自分にもプレッシャーは掛かっています。昨年の途中からは昇格争いをしていた分も、J1に行かなければいけないプレッシャーと戦ってきましたが、一度そのプレッシャーから解放された後は、周囲の皆さんが『ホーリーホックは凄い』と言ってくださることに、どこか違和感を覚えてきました。
今の状況でお腹いっぱいになってはいけないと強く思いましたし、選手たちがJ1を戦うなかで、このクラブをアジアで戦わせたいという気持ちになったことが一番の理由です」
小島社長も就任7年目。毎年のように右肩上がりでクラブの事業規模を拡大してきた個人的な自負はあるものの、その一方で今後のクラブの成長欲に対する“違和感の正体”が姿を現わしてきた。
トップチーム人件費はJ1の中でも、下から数えた方が早い部類。それだけにJ1残留が現実的な目標であることは大前提としても、他クラブの成長速度を見れば、決して悠長に構えてはいられない。
「26/27シーズンも、27/28シーズンも、現実的にはJ1残留が目標です。ただJ1残留ばかりを口にすると、クラブ経営が“ジリ貧”になります。このクラブが夢と感動と一体感の共有を理念に掲げているなかで、ある程度、届くだろうという現実を見据えながら夢を語らないと、その次を目ざす刺激がないと、“守りの経営”になってしまいます。
今回の中期経営計画を社長室のスタッフと膝を突き合わせた議論を重ねてきたなかで、何がクラブスタッフのモチベーション向上につながり、何がトップチームの現場にも刺さって、自分自身にとっての原動力になるかと考えた時に、『アジアを目ざそう』という結論に達しました」
ただ夢を語っても、数字はシビアな現実を突きつけてくる。2025年決算では過去最高を更新する16億円超(16億4,171万円)の売上を記録したとはいえ、中期目標の数値までは30億円程度の開きがある。
