「メガソーラーの環境破壊大反対」ぺこぱの二人に東大教授がプレゼン。「納得」を勝ち取った「再エネの真実と未来」

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“そもそもメガソーラーは大反対。

地球の環境のためにやっていることなのに山を切り拓いて…。

この矛盾を、どう子どもに説明できるのか。

これはお笑いユニット、ぺこぱの松陰寺太勇さんが、2025年の夏にネット配信番組で北海道・釧路湿原で進むメガソーラー建設をテーマにしたコーナーで語ったコメントだ。再生可能エネルギー(以下、再エネ)は脱炭素社会には必須のものだが、その裏で自然破壊の危険性もはらんでいる。先述した釧路湿原周辺では、天然記念物タンチョウの生息地やオジロワシの巣を含む区域にまで広がっている可能性があり、専門家や住民から懸念の声が上がったのだ。

しかし2026年の今、アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃で原油やLNG(液化天然ガス)の供給不足も予測されている。化石原料によるエネルギーからの脱却が必須ともなっているのだ。

「再エネに懐疑的」と語った松陰寺さんが、相方のシュウペイさんと共に2025年9月「みんなでつくろう再エネの日」(主催:一般社団法人Media is Hope)のトークステージに登壇し、解説者として一緒にステージに上がった東京大学・江守正多教授と、再エネについて語り合った。ぺこぱの二人には江守さんの解説を聞いた後にジャッジをするための「納得」と「いまいち」の札が。江守さんは「今日は、真剣勝負です」気合い十分で挑んだ。

前編では、地球温暖化の現状と再エネ推進の必要性を、お届けした。続く後編では、環境を守りながら二酸化炭素(以下、CO2)排出ゼロを目指すためのライフサイクルなどをテーマに語ったステージでの様子をお伝えする。

【ぺこぱ】シュウペイと松陰寺太勇の2人によるお笑いユニット。「M-1グランプリ2019」では初の決勝進出を果たし、3位に輝く。日本テレビ「ヒルナンデス!」金曜レギュラーや日本テレビ「THE 突破ファイル」などのテレビの他に、ラジオ「ABCラジオ「みっくすっ。 -ぺこぱのチアポンポン-」などコンビとしての活動の他に、YouTube「カズレーザーと松陰寺のチルるーム」、TOKYO MX「RINGAKU!」MC:シュウペイなど個々でもさまざまなメディアで活躍中。

【江守正多】東京大学未来ビジョン研究センター(兼)大学院総合文化研究科広域システム科学系。主な研究分野は気候科学、気候変動に関する科学と社会の問題、気候コミュニケーション。1997年より国立環境研究所に勤務。国立環境研究所気候変動リスク評価研究室長、地球システム領域副領域長等を経て、2022年より東京大学未来ビジョン研究センター教授。総合文化研究科教授を兼務。気候変動に関する政府間パネル第5次、第6次評価報告書主執筆者。

電気自動車は環境にいい?

シュウペイさん(以下、シュウペイ):「電気自動車(以下、EV)って環境にいいの?」ということを教えてください。

気候変動解説おじさんこと江守正多さん(以下、江守):わかりました。ガソリンを使用しないEVは、これから増えていかなくてはなりません。

ただ、どんな手段で充電をするかも重要です。太陽光パネルや、再エネの電力会社で作っている電気など、再エネの電気を使えば、走行時にCO2は出さないことになります。

しかし、普通の電力会社から買っていたらCO2は発生します。また製造する上で、EVは大きなバッテリーを積んでいるため多くの電気を使い、CO2を排出しているのは事実です。

ただし、EVバッテリーに使われる材料の採掘段階から製造、販売され走行時の排気までで、CO2がどれだけ出るかを算出したデータによると、EVは製造段階では多くのCO2を出すけれど、走行時には排出しないので、乗れば乗るほどガソリンエンジン車よりCO2排出が少ないという統計結果が出ています。これは、従来の電力会社から買った電気で充電した場合でも、EVの方がガソリンエンジン車よりもCO2の排出量は低いと報告されています。

江守:再エネが必要かという質問(前編のリンク貼る)で説明したように、2100年に向けてCO2の排出量をゼロに近づけなくてはなりません。このままガソリンエンジン車を使っていたら、どんなに燃費が良くなってもCO2排出量はゼロになりません。

しかしEVは製造の際も、走行時の電気も再エネに転換していけば、排出量はゼロに近づきます。現時点でCO2を出しているとしても、EVを増やしていかなければ、温暖化は止まりません。

ぺこぱ:(二人同時に)納得です!

太陽光パネルはリサイクルができるの?

松陰寺太勇さん(以下、松陰寺):次は「太陽光パネルはリサイクルできるの?」というお話を聞きたいです。最近、太陽光パネルのリサイクル義務化の法案が可決しなかったニュースがありました。非常に残念に思っているんですよ。

江守:環境省と経済産業省がリサイクルの義務化を訴えているということは、技術的にはできる、ということもあります。北九州にある太陽光パネルのリサイクル工場を僕も見てきましたが、すでにパネルをガラス、シリコン、金属部に分離させ、有価物にしていました。販売できる価値のあるものとして再生できるんです。こうした工場は今、日本でも増えています。

松陰寺:技術はあるのに、なぜ法案が通らなかったんでしょう。

江守課題は、どこが経費を負担するか、ということです。リサイクルは、廃棄するより費用がかさみますから。国は生産者負担という法案で進めたかったけれど、「他の家電は違う」という主張があり、今回は通りませんでした。法の整備とプロセスが整えば、太陽光パネルの素材90%がリサイクル可能です

シュウペイ:生産者が負担するとなれば、結局は金額を上乗せして販売するかもしれませんよね。リサイクルのことなど法整備ができてから太陽光パネル設置を推進するというのが順番のような気がします

江守:そうです、そうすべきでした。しかし、再エネへの移行を急がなくてはという動きがあったんです。しかし結果的には制度の整備が遅れたことによって、メガソーラーなど問題になるような乱開発が起きてしまいました。

松陰寺:ビルなどに貼るパネルシートが日本では製造されていますよね。あれをやりましょうよ! 山を切り崩すより、人為的な場所にこのシートを貼っていったらいいと思います。ビルの窓ガラスや線路など、ずっと日に当たっている場所がありますよね。

司会・名取由佳さん(以下、司会):農地の上でもいいんですよね。会場に詳しい方がいらっしゃいます。

東光弘さん(ソーラーシェアリング/プロデューサー):(客席からマイクにて解説)私はソーラーシェアリングを、畑に設置する取り組みをしています。日本の農地の約16%にソーラーセル(太陽電池)をつけると、日本の電力は十分に足りると言われているんですよ。

今からできること

シュウペイ:最後の質問はこれに決めていました。「結局、何をすればいいの?」

江守:私たちにできることは…。エアコンをつけるのを我慢しましょう、と…。

松陰寺:えぇ〜!?

江守:では、ありません。こまめに節電を心がけるなど、CO2の出ない暮らしを意識している方は続けていただけたらと思いますが、それだけで温暖化は止まりません。

地球全体が再エネ化に向かわなくてはならないため、電気の作り方から見直す段階に来ています。CO2排出のない電気を作る社会へとシフトしていく必要があるんです。そうなれば、いくら電気を使ったとしてもCO2は出ませんから、エアコンの温度も我慢せずに使えますよね。車も再エネの電力で充電すれば、走行時にCO2を排出することはありません。

そのためには、変化する社会を誰もが後押しをする気持ちになることも、大事ではないかと思います。

変化の必要性を理解し納得してもらえたら、法の整備も対策も進んでいくはずですからね。ただし、どんなことにもすべて賛成してくださいと言ってるわけではありません。

進め方に疑問があれば声をあげてほしいし、乱開発がおかしいと思ったら批判してほしいと思います。

松陰寺:地球がダメになったら取り替えよう、なんてことはできませんからね。公共施設は次の人を意識して使います。地球だって一緒だと思います。日本だけでなく世界各国の人たちとこの問題に向き合って、次世代に繋げていけたらいいですね。

シュウペイ:自然破壊して建設が進むメガソーラーのこともあって、僕らは再エネの必要性に懐疑的でした。でも今回、分からなかったことを説明してもらえたので今日は「納得」です!

「メガソーラー大反対」だったけど参加したのは…

こうしてぺこぱの二人はさまざまな質問に「納得」の札をあげてステージを終えた。しかし、そもそも松陰寺さんに関してはメガソーラーに大反対だと言っていた。なのになぜ、このイベントの参加を決めたのだろう。ステージを終えた直後の二人に話を聞いた。

松陰寺:単なる知的探究心でした。メガソーラーを建設する目的は分かるのですが、手段や法整備、国民の納得が得られていないのに、それでも進めたい理由を知りたかったんですよね。

シュウペイ:再エネの話に関心がある人はいろいろと調べると思いますが、あまりよく知らない人もいると思うんです。僕らが舞台に立ち、こうして話すことで知ってもらう機会を増やせたらいいなと思ったんです。

松陰寺:ステージで見せてもらった2100年の地球のシミュレーションには驚きました。このままではいけないと思いましたね。ただし、利権が見え隠れしているものなどに関しては、どんどん声をあげていきたいと思います。自然を切り崩すのではなく、ビルや線路などに貼るソーラーパネルがもっと増えればいいなと思います。

シュウペイ:気温が5度も上がると聞いたら、危機感を抱きますよ。現状は遅れていると言っていましたから、このままではさらに温暖化が進んでしまいます。再エネについて正しい知識を学ぶことができたので、より多くの人たちに広めたいし、再エネ推進に賛同する気持ちになれました。CO2削減、そしてゼロに向けてより良い未来をみんなで作っていけたらと思います。

ぺこぱのファンだから会場に来た、

通りががかったら「ぺこぱ」がステージで話していた、

笑い声が聞こえたのでステージを覗いてみた…

この日の観客席には、これまで再エネに関して興味のなかった人たちもいたのではないだろうか。しかしきっかけがどうであれ、ぺこぱの話を聞いた人たちが、何かを始める可能性はある。そしてその行動を見た誰かも、次のアクションを起こすかもしれない。それがどんどんと広がれば――。

地球の未来は、今の私たちにかかっている。

「みんなでつくろう再エネの日」…気候変動を食い止めるための解決策として、効果が期待される再生可能エネルギーのことを多くの人に理解してもらい、広めるためにと一般社団法人Media is Hopeが主催するイベント。3回目を迎えた2025年は、9月27、28日の2日間にわたって開催された。

資料データ提供/江守正多

撮影/umami.

【前編】メガソーラーの環境破壊大反対のぺこぱが東大教授に直撃。再エネって本当に地球を救えるの?