池袋暴走7年、遺族の松永拓也さん「記憶を後世に」…事故当時の捜査幹部「決して風化させない」
東京・池袋で高齢ドライバーの車が暴走し、母子ら11人が死傷した事故から19日で7年となった。
妻の真菜さん(当時31歳)、長女の莉子ちゃん(同3歳)を亡くした松永拓也さん(39)らが現場近くの豊島区東池袋の慰霊碑を訪れ、発生時刻の午後0時23分、手を合わせて2人の冥福(めいふく)を祈った。
その後、報道陣の取材に応じた松永さんは「2人の命を無駄にしたくないという思いで生きてきた」と7年を振り返った。続けて「事故を悲劇で終わらせるのではなく、記憶を後世につなぐことが大事だ」と話した。
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慰霊碑の前には遺族に交じり、警視庁交通捜査課長の高橋哲(あきら)さん(58)の姿があった。事故当時に同課で現場の捜査指揮にあたったのが高橋さんだった。
「乗用車が複数の歩行者をはねた」
あの日、110番を受けて捜査車両で現場に急行すると、大破した乗用車や真っ二つに割れた自転車、横転するゴミ収集車が見えた。約100メートルにわたり車の部品や靴などが散乱し、担架に乗ったけが人が、次々と病院に搬送されていた。凄惨(せいさん)な光景だった。
責任者として、捜査の進捗(しんちょく)を説明するため、松永さん宅に何回か出向いた。2回目に訪問した時のこと。くしゃくしゃに丸めた紙を見せられた。「私の心境もこれと同じ。広げてもしわが残り、元には戻せません」と涙ながらに訴える松永さんに、かける言葉がなかった。
「悲しみや怒り、苦しみにさいなまれる遺族に接し、事故の真相究明をやり遂げようと心に決めた」。粘り強い捜査の末、原因はブレーキとアクセルの踏み間違いだったと突き止めた。車の異常を主張した運転手の男性(2024年、93歳で死去)は、21年9月に禁錮5年の実刑判決が確定した。
あれから7年。高橋さんは、松永さんが癒えることのない心の傷を抱えながらも「誰も被害者にも加害者にもならないために」との思いで講演活動を続け、全国を駆け回る姿を見てきた。豊島区が慰霊碑を設置する際には、私人として寄付したり、毎年事故の発生日に松永さんから近況を聞いて励ましたりしてきた。
19日、慰霊碑の前で「あの日のことは、決して風化させません」と誓った。事故が引き起こした厳しい現実を皆が忘れず、我が身に置き換えて考えられるのなら、危険な運転をもっと減らせるはず。そのために何ができるのか、今後も自身に問いかけていくつもりだ。
