【女子バレー】東レ滋賀の結束美南が語る、秋本美空を見て抱いた″決めないといけない立場″の意識「言い訳できない」
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(33)
東レアローズ滋賀 結束美南 前編
【母の"後押し"で続けたバレー】「自分にしかなれない選手になりたいです」
東レアローズ滋賀の結束美南(19歳)は少し照れ臭そうに言う。おしゃれに手入れしたネイルを光らせ、真剣に語る自分を楽しんでいるようにも映った。

ジャンプ力を生かしたスパイクが武器の結束 photo by アフロスポーツ
今シーズン、高卒ルーキー1年目にして200得点以上を記録。アウトサイドヒッターとして、ポテンシャルの高さを見せた。身長は170cmだが、ジャンプ力は見物で、バックアタックは未来を切り開く武器だ。
「(高校とSVリーグは)ギャップしかないです! 通用する部分はありますけど、通用しないことが多いし簡単にはいきません。それでも、シーズンの最初のほうはデータがなかったので"打ったら決まる"感じでしたが、対策されて拾われて"今ココ"って感じです」
結束は表情をコロコロと変えながら言った。少しも暗さがない。雨でも晴れでも山を登れるタイプだ。
千葉県で生まれ育った結束は、小学2年でバレーボールを始めた。きっかけはお菓子の詰め合わせ。母が通っていた"ママさんバレー"で、チームメイトの子どもたちに誘われた。
「なんのお菓子かは覚えていないんですが......ちょろいんです、自分(笑)」
当初は、母がバレーをする横のコートでドッジボールに夢中だった。次第にバレーをやるようになったが、小学校まででやめるつもりだった。それが、片道1時間をかけて有力クラブに通うことになる。
「あとから聞いた話では、母は『ひとつのことを極めてほしい。やり遂げる力をつけてほしい』って思っていたようです。それでクラブチームの練習を体験することになったんですが、私は『入るか入らないか、自分で決めるからお母さんは何も言わないで』って言ったのに、入部届を書かれていたんです(笑)」
それは母が敷いたレールだったかもしれないが、人生の分岐点では押しの一手で道が決まることもある。行き帰りの車中では、『ハイキュー‼』の漫画、アニメを見るのが楽しかった。結果、彼女は母が描いた物語のなかで輝く主人公になる。勝利が求められるクラブで「ミスしてはいけない」とマイナス思考になった時期もあったが、全国ベスト8と好成績を残した。
【"決めないといけない立場"ゆえの意識】「私は身長が低かったのでスパイクはあまり期待されていませんでした。エースが段違いで、それについていくだけでしたね」
しかし、中学で身長が20cmも伸び、景色が変わった。小ささゆえの僥倖(ぎょうこう)で、レシーブもできるスパイカーになっていた。
「エースの選手はめっちゃ負けず嫌いでした。中学まで一緒で対角に入っていたんですが、自分が身長もジャンプも伸びて決める本数が増えて......もしかしたら敵対視されていたかもしれません。私は"試合に勝ちたい。一緒に頑張ろう"って感じでしたけどね。彼女は身長が伸びず、高校でバレーをやめてしまいました」
結束は気まずそうに言うが、無心でバレーに取り組んだ結果だろう。
「小学校時代のスパイクは全部拾われていました。相手のブロック以前にネットとの戦いで、ジャンプ力がなくて届かなかったんです(苦笑)。それが中学で身長が高くなり、打てるようになった。
高校では、コースを読まれて拾われていたんですが、2、3年生と学年が上がるごとにジャンプ力がついて、ブロックの上から打てるようになりました。そうやって、どんどん変わっていくのが面白かったです」
彼女は地元・千葉県の習志野高校に入学し、2年生の時には同校の38年ぶりとなる春高バレー出場を果たした。
「いいタイミングで強くなったので、"美味しいところもらったな"って感じです!」
結束は弾む声で言う。3年時にも春高バレーに出場したが、自身を感化する存在がいた。高校生のうちに日本代表に選ばれた、同じポジションの秋本美空だ。
「秋本さんがいた共栄学園とはけっこうな頻度で試合をさせてもらっていて、2年の時まではまあまあ勝てたんですが、3年になって勝てなくなって......秋本さんも自分と同じ"決めないといけない立場"でしたから、『自分も言い訳できない。甘えている場合じゃない』と思うようになりました。秋本さんがいなかったら、その考えは持てなかったと思います」
【SVリーグで磨いていること】2年時の春高の試合はコロナ禍で応援に制限があったが、3年生は吹奏楽部が入り、爆音のなかで夢中に戦った。
「オレンジコートにいる自分を想像しているうちに、あっという間に試合が終わりました(笑)。必死過ぎて試合を覚えていません。"あ、終わった"って」
最後の春高は2回戦敗退も、そう言って無邪気に笑う姿が彼女らしい。何気ないきっかけから駆け抜けてきたバレー人生。現在は、そのきっかけを作った母が千葉から滋賀まで応援に駆けつける。
「小学校の時はうるさく言われましたけど、今はプレーを見守ってくれています。応援にきてくれてうれしいですし、愚痴とかも聞いてくれるんです」
結束は優しく口角を上げた。これからやるべきことは心得ている。
「考えるバレーをやっていなかったことを、身にしみて感じています。SVリーグでは"上から打って決める"が通用しないので、ブロックに当てて、どうボールを変化させて決めるかを磨いていかないと。大きくなくても戦えるように、自分のペースで成長したいです」
2024年のU18アジア選手権では銀メダルを獲得している。A代表入りも夢ではない。本人は「今は『入りたい』と言えるほど自信がついていないし、そんな立場じゃないです」と謙虚に言う。しかし、また小さなきっかけで化けるかもしれない。
(後編:影山飛雄と日向翔陽の"最強"コンビに思う、セッターとスパイカーの関係>>)
【プロフィール】
結束美南(けっそく・みなみ)
所属:東レアローズ滋賀
2007年1月16日生まれ、千葉県出身。身長170cm・アウトサイドヒッター。中学時代、JOCジュニアオリンピックカップに千葉県代表として出場。習志野高校2年時には、同校を38年ぶりの春高バレー出場に導いた。翌2025年も春高バレーに出場し、同年3月に東レアローズ滋賀に入団。7月にはU19世界選手権メンバーに選出され、キャプテンを務めた。
