植樹の目的は路上生活者を追い出すこと!? 豊富な資金を持つ「グリーン屋」が行う「エセエコ」の実態

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環境保全は誰のため? リサイクル、再生可能エネルギー、カーボンオフセット―。

すべて超富裕層が潤うための虚偽、巨大マネーのためのグリーン・ビジネスだった!

「サステナビリティ・クラス」とは、高学歴で可処分所得と意識が高い「いい人」たち。エコや倫理的正しさをSNSでアピールし、「環境」を意識した高額商品を買う余裕がある中流階級だ。彼らが「地球の未来のためだ」と思ってやっていたことは、実はグリーン・ビジネスに加担し、弱者を追いやり、格差を広げる原因になっていた……。新たな植民地主義ともいえる「グリーン・ビジネス」の実態を、豊富なデータをもとに明らかにした著書『欲と偽善のサステナビリティ』。サステナビリティの名のもとの「欲と偽善」を、気鋭の研究者が暴くセンセーショナルな意欲作より、一部の章をピックアップしてご紹介。

実在しない森林でグリーンウォッシュ

今ベニスでは、サステナビリティとカッコよさがぎこちなく混ざり合った高級感が、勝ちパターンだ。ファッションブランド、ファーム・リオのウェブサイトを見ると、1ドルの寄付で木を1本植える活動を展開する慈善団体ワン・ツリー・プランテッドと提携したことが報告されている。ファーム・リオでは商品購入1件あたり1本として、これまでに100万本の木を「寄付」してきた。

ワン・ツリー・プランテッドは慈善事業の新たな潮流のひとつで、ほかにもトリリオン・ツリー・キャンペーンやツリーズ・フォー・ザ・フューチャー、プラント・ア・ビリオン・ツリーズなどの慈善団体があり、世界中、特に貧困国で植林プロジェクトを展開して気候変動の影響を「相殺」することを約束している。これは本質的に善行に見える行為だ。調査報道を専門とするジャーナリストのフレッド・ピアスが指摘しているように、「誰でも木は好きだ。植樹に反対するロビー団体などいない」。

とはいえ、こうしたプロジェクトもその効果には議論の余地がある。自生していた樹木は、植林で一掃されて単一樹木化することも珍しくなく、その結果、地元の人から切り離されてしまう。研究者らの調査によれば、多くの場合、後年、植林された樹木はわずかな数しか残らない。中には2%しか残らない事例もあり、世界中で「幻影の森林」(ファントム・フォレスト)が発生している。こうした実在しない森林が「カーボンクレジット」に認定され、炭素排出の相殺として企業に売られるのだ。これは、慈善団体や政府やファーム・リオのような企業が、残った植生や長期的効果ではなく、植樹した木の数をベースに成果を測るからである。植林は単なるグリーンウォッシュにすぎないのではないかとピアスは疑問を呈す。「注目を集めることが目的であり、環境に優しい政府や企業だという印象を世間に与えようとしている」

サボテンがベニスのビーチに植えられた理由

問題はグリーンウォッシュだけではない。ベニスのグリーンドリームは極めて排他的でもある。例えば、ベニスビーチの歩道に置かれたプランター。すでに説明したように、あのプランターはもともと野菜を栽培するために用意されたものだ。しかし、手入れが行き届かなくなり、アガベやサボテンが植えられていた。これは乾燥に強いサステナブルな環境を作るふりをしているにすぎない。実際はとげだらけの植物を使い、路上生活者が歩道で寝泊まりできないようにする地元住民による活動の一部だったのだ。

事実、そこには多くの路上生活者の姿があった。歩道に張ったテントに身を潜め、駐車場に停めた自家用車に寝泊まりしている。アボット・キニー大通りには先住民族抵抗運動を称える壁画がある。アパレルのファリティが依頼して描かせたものだが、よく見ると3台の監視カメラに看板も設置されている。これもファリティが用意したものだが、看板には「うろつく、座る、眠る、横になる」行為は禁止と書かれている。警備員も始終巡回していた。もしこの地域に、家のない先住民族の人たちが他の地域と比較にならないほど大勢いるのだとしたら、この壁画と現実との違いは控えめに言っても皮肉にしか見えない。

都合の悪いものは強制的に排除

それだけではない。アボット・キニー大通りには、白人ヒッピーが多いビーチタウンと、もともと黒人の居住地で、その後ラテンアメリカ系の人々が住むようになったオークウッドとの間に目に見えない境界線があった。

このオークウッドは少なくとも2011年までは活気があったが、2022年に僕たちが訪れたときには、黒人やラテンアメリカ系のコミュニティの多くは消えていた。ブラックコミュニティの中心地はオークウッド公園のオークウッド・レクレーション・センターで、老いも若きもそこに集まり、日がな一日、建物の陰で涼んだり運動場で遊んだりして過ごしていた。

しかしその日は誰一人姿を見せず、いたのはコミュニティセンターで映像を撮影していたクルーだけだった。公園の周囲には高い塀のある豪邸が立ち並ぶ。公園を見下ろすのはファースト・バプテスト教会だ。1910年からコミュニティの重要な存在として役割を果たしてきたが、2017年にメディア王で『バラエティ』誌のオーナーでもあるジェイ・ペンスキーと、妻でヴィクトリアズ・シークレットのモデルだったエレーヌ・アーウィンの夫妻に1180万ドルで買収されている。2人は教会を、屋上デッキと車4台分のガレージがある、豪華なコンドミニアムに変えた。「ブラック・ライブズ・マター」の看板やレインボーフラッグを掲げて「意識の高さ」を誇示してはいても、ベニスの「コミュニティ」は、まさに偽善の生きた見本だった。

チャックから「再生革命」の話を聞いた同じ日の午前中、僕たちは下町の路上生活者のグループや、彼らの住宅を支援するロサンゼルスの活動家たちにインタビューをしていた。インタビューの最中、アーバン・アルケミーのスタッフと路上生活者グループとのいざこざに巻き込まれた。

アーバン・アルケミーは非営利団体で、元受刑者(ほとんどが未成年)に最低賃金を支払い、街の通りから路上生活者を排除させていた。要は「倫理的に行う」ホームレスの取り締まりだ。水や医薬品のような生活必需品を手渡しているボランティアと話をしていたとき、アーバン・アルケミーのパトロールが近付くと、カメラを手にした僕たちを見て、撮影を止めるように言ってきた。穏やかに事を収めようとするどころか、路上生活者のリーダーたちを怒鳴りつけ始めたのだ。

怒鳴られた方は当然、頭に血がのぼり、怒鳴り返す――「この人たちは俺らを助けようとしているだけだ。俺らの生活を脅かしているのはあんたたちの方じゃないか」。

「グリーン屋」でいるためには資金が必要

「グリーン」経済の名のもとにロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーターを支援していた同じ都市が、アーバン・アルケミーにも資金提供していた――それは、ベニス通りで見かけたサボテンプランターの拡大版で、かなり強引なやり方だ。米国各地や他国の都市と同様、ここロサンゼルスでも、民間警備会社とテック企業が手を組み、気候変動に強くサステナブルなモデルとしてブランディングに力を入れてきた不動産開発プロジェクトやビジネス改善地区(BID)にとって都合の悪い人々を排除しようとしている。

ベニスで注目の「環境にやさしいグリーンでヒッピー」なライフスタイル(「ギャングスター」ではなく「グリーンスター(グリーン屋)」とでも呼ぼう)は、明らかに万人向きではない。事情通でなければならず、何よりもグリーンでいられるだけの資金が必要だ。彼らはその資金を一体どこから入手するのか? グリーン屋はたいていテック企業の社員であり、彼らはその資産の多くを、路上生活者を自宅から追い出した不動産業界に投資しているのだ。

ビル・ゲイツやイーロン・マスクのようなITの帝王たちは口々に、この混沌とした状況から僕たちを助け出してくれるのはイノベーションだと断言する。それは今生きている世界を超越した世界をもたらすテクノロジーやエンジニアリングの「ブレークスルー」なのだが、そこに到達するには石油やガスが不可欠だ。

実際、アップルやアルファベット(グーグル)やマイクロソフトなどの企業が生み出した人工知能テクノロジーによって、エクソンモービルなどの石油会社は原油の最大日量を伸ばすための取り組みを最適化している。シリコンバレーは(それを言うならシリコンビーチも)、石油やガソリンがなければ、空回りを始めてあっという間に機能しなくなるだろう。たとえ「よりグリーンな未来」というビジョンに投資していても、サウジアラビア人の投資のように、常に石油がついてまわる。だから、わずかでも風向きが変われば、そのビジョンが単なる見せかけにすぎないことが露呈する。(翻訳:保科京子)

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