遅咲きの御室桜、ヴァイオリンを弾く僧侶 世界遺産・仁和寺で春のフィナーレ
世界文化遺産・仁和寺(京都市右京区)の御室桜(おむろざくら)。遅咲きの八重桜として知られる。

古都・京都の春のフィナーレを彩る。
樹高が2〜3メートルと低いのが特徴で、国宝・五重塔を背景にした雲海のような景色は圧巻。
御室桜は「鼻が低い」のと、「花の背丈が低い」のをかけて「お多福桜」とも呼ばれる。
京都の俗謡に、「鼻(花)は低くても人が好く」とあり、“外見よりも、親しみやすさや愛嬌を持っているほうが、人から愛されるのだ”と詠まれている。


例年より桜の開花が早くなった2026年。近畿のソメイヨシノは早く散っていったが、御室桜は4月中旬に満開を迎えた。




4月12日、重要文化財・観音堂(通常は非公開)で、白い法衣を着た僧侶がバイオリンを奏でていた。


大原英揮(おおはら・えいき)さん。仁和寺を本山とする真言宗御室派の布教師として、2016年から春の「桜布教」として、仁和寺でバイオリンを演奏している。

岡山県倉敷市の音楽一家に生まれた大原さんは、3歳からバイオリンを始め、国立音楽大学を卒業した異色の僧侶。
コロナ禍の2020年の春、全国で緊急事態宣言が出され、外出自粛によるストレスを和らげてもらおうと仁和寺が公式X(当時はツイッター)に投稿したところ、約500万回再生されたという。


通常ならば回廊で演奏するのだが、この日、近畿地方の日中の最高気温は25度まで急上昇し、仁和寺が拝観者の安全に配慮し、急きょ堂内・外陣でのコンサートに切り替えた。


大原さんは、「花は咲く(東日本大震災チャリティーソング)」「時代(中島みゆき)」「また君に恋してる(ビリーバンバン)」など6曲を演奏。


合間にはさんだ法話では、「気持ちが苦しいとき、“苦”の文字を“にがい”と読んでみると、『良薬は口に苦し』という言葉通り、快方に向かうきっかけになるかも知れない」、また「私たちは古来から美しい自然に親しんで生きているが、逆に災害というマイナスのエネルギーを与えるのも自然。私たちはその都度、祈りを捧げ、祭祀によって鎮めてきた。そうやって今を生きていることに感謝していただきたい」と説いた。


※太平洋戦争末期の1945(昭和20)年1月、敗戦濃厚の中、元総理大臣・公爵の近衛文麿が仁和寺を訪れ、戦争終結のためには昭和天皇を退位させるしかないと考え、仁和寺で出家させる案を練ったこともあったという。


