「住宅ローン残債」があるのに“転勤”に!→SNSで「賃貸として貸し出せば得」投稿に非難殺到! いったいナゼ? 知らないと「数千万円」を一括返済するはめに…“制度の落とし穴”とは
赤字で売るよりも、貸せばお得?
SNSの投稿は公務員向けのものであり、「住宅ローンの残債があり、売れば赤字になる。売らずに貸し出し、家賃収入でローンを返せばよい。公務員なら信用力があるのでこれが可能。詳しくはこちらに…」といった概要でした。
DM(ダイレクトメッセージ)への誘導と読み取れる最後の部分はさておき、「赤字で売らず、貸し出せばよい」という主張は一見すると合理的に感じますが、住宅ローン物件の安易な貸し出しは不適切です。
なぜ不適切なのか
住宅ローン物件の安易な貸し出しがなぜ不適切なのかについて、「フラット35(住宅金融支援機構が民間金融機関と連携して提供する融資制度)」を例に説明します。
フラット35は、貸し付ける資金の使途が「本人または親族が住む新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金であること」を要件としています。資金使途に関する注意事項の筆頭には、「第三者に賃貸するなど、投資用物件の取得資金には利用できない」ことを掲げています。
そもそも住宅ローンとは、「自分や家族が住むための住宅」のための資金を、低い金利で借りることができ、長期間にわたって分割で返済できるという、目的が特定された貸付金融商品です。
自己居住が大前提のため、住宅ローン物件を金融機関の承諾なく第三者に賃貸する行為は、契約違反とみなされる可能性があります。目的外利用が判明した場合、一括返済を求められることもあるでしょう。
住宅金融支援機構の場合は、本人またはその親族が該当物件に住んでいることを、転送不要郵便などを利用して定期的に確認しています。「第三者に賃貸するなど、投資用住宅としての利用」や「店舗・事務所など、目的外の利用」が判明した場合、「全額一括返済」となることを契約前に注意しています。
転勤を命じられた場合の適切な対処法
住宅ローンが残っている状態で転勤を命じられ、第三者への賃貸を検討することになった場合の適切な対処法は、「転居や貸し出しをする前に、住宅ローンを契約している金融機関に相談する」ことです。やむを得ない事情による転勤であれば、一定期間の賃貸が認められることがあります。
例えば、住宅金融支援機構は、「返済中に融資住宅を賃貸にしてもよいか」という質問に対し、財形住宅融資の場合と財形住宅融資以外の場合に分けて回答しています。
これによれば、財形住宅融資の場合で転勤等により一時的に居住できないときは、融資住宅に戻ることを前提に、「審査」によって一時的に居住しないことができ、この期間に限り賃貸することが可能としています。
財形住宅融資以外の場合で転勤等のやむを得ない事情により一時的に居住できないときは、融資住宅に戻ることを前提に、金融機関で住所変更の「手続き」をしたうえで、賃貸することが可能と回答しています。
なお、一定期間の賃貸が認められた場合でも、税務の面で住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できなくなる点は、甘んじて受け入れるしかありません。
まとめ
「売らずに貸し出して、家賃収入でローンを返せばよい」という主張は、一見すると合理的に感じます。しかし、住宅ローンは自己居住が大前提であり、無断賃貸は契約違反となる可能性があります。加えて、自己居住でなくなれば住宅ローン控除を利用できなくなり、税務上の不利益も生じ得るでしょう。
住宅ローンが残っている状態で転勤を命じられたときは、後々、契約違反や税務上の違法行為とならないよう、住宅ローンを契約している金融機関に速やかに相談しましょう。
出典
住宅金融支援機構 【フラット35】ご利用条件
国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
執筆者 : 福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
