「ほとんどの商品が値上がりする」 人気スーパー社長が警鐘 ガソリン代は「補助金のツケを国民が払うだけ」指摘も
【全2回(前編/後編)の前編】
桜の名所は花見客でにぎわうが、後になって“あの頃は平和だった”と振り返る日が来るかもしれない。イラン攻撃による「原油高」への対策を声高らかにうたう高市政権。政策を誤れば電気・ガス代の記録的上昇が確実視され、「家計への影響」は計り知れないのだ。
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【実際の写真】“ガッツポーズで絶叫”だけじゃない! ホワイトハウスが公開した「高市首相」の姿
桜満開の季節にもかかわらず、日本経済に目を転じれば“花散らしの嵐”が吹き荒れる様相を呈している。
株価は5万円を割る寸前まで下がり、円相場も一時1ドル=160円台となって1年8カ月ぶりの円安水準。金融市場は大混乱の最中にある。

イラン情勢が原因なのは言うまでもないが、原油の価格高騰と調達の問題は解決の見通しが立たない。世界の原油先物市場は乱高下が続き、ご存じのとおり国内のガソリン価格は史上最高値を更新。また必要な原油の約9割を中東に頼るのに、ホルムズ海峡が封鎖されて大半のタンカーが航行できないままだ。
「閉じられた部屋から一方的にSNSで発信するだけでは……」
かような国難に対して、高市早苗首相(65)は3月29日、SNSの公式アカウントに〈原油や石油製品については、備蓄の放出により「日本全体として必要となる量」を確保するよう取り組んでいます〉などとコメントを投稿。翌30日も再びSNSで、こう明かした。
〈本日、中東情勢に伴い供給制約が生じる可能性がある重要物資の安定確保のための総合調整を行うため、赤澤大臣に対して、「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当大臣」を発令しました〉
日米首脳会談の地ならしを命じられ、国会で高市氏から“私に恥をかかせるな”とハッパをかけられた赤澤亮正経産相(65)が、再びの大役を担うことになるわけだ。
政治部デスクによれば、
「本来なら首相が自ら会見を開き、丁寧に説明して記者からの質問にも応じないといけないレベルの有事です。にもかかわらず、高市氏は相変わらず自宅代わりの首相公邸と、職場である首相官邸、国会を行ったり来たりの日々。閉じられた部屋から一方的にSNSで発信するだけでは、世間の不安は払拭されません」
確かに件のSNSでのメッセージを見ると、思わず首をかしげたくなる記述が散見される。
「異例ともいえる連日のSNS投稿を要約すると、“石油備蓄放出で需要に対する不足分は賄えている。今後は赤澤大臣が他国などと交渉、必要量の多角的な確保に努める”といった方針が示されるのみ。世界的な原油不足の下、他国からどれだけ融通してもらえる可能性があるのか。すでに確約が取れているのかなどについて、具体策は何も記されていません。赤澤大臣を任命したくだりでは、対策について〈検討を進めてもらいます〉とあるだけでした」(同)
「場当たり的な対応」
高市氏によるSNS投稿に対しては“限りある石油を垂れ流していいのか”など、批判的なコメントが殺到する始末なのである。
「今の政府は、場当たり的な対応に終始しているようにしか見えません」
と指摘するのは、石油元売り大手の旧共同石油(現ENEOS)に勤務経験があり、石油流通システムに詳しい桃山学院大学経営学部教授の小嶌(こじま)正稔氏である。
「実行可能かどうか検証すらできない情報をSNSで発信するのではなく、現状で何がどの程度まで不足し、どういう優先順位で対策するのか。それについて説得力をもって国民に説明していくことが必要です。国が最悪の状況を想定して動かなければ、備蓄が尽きた時に経済だけでなく国民の心が折れ、パニックが起こってしまいます」(同)
「補助金を投入し続ければ、実態価格は下がらない」
目下、高市政権による「令和のオイルショック」への対策は主に二つある。
一つ目は3月16日から始まった石油備蓄の放出。二つ目は、累計約1兆円にも及ぶ石油元売り各社への補助金の支給で、レギュラーガソリンの価格を全国一律1リットルあたり170円程度に抑えることを目的としている。
「世界の中でも多い方とはいえ、日本の石油備蓄は約250日分しかありません。その放出は石油が本当に不足している時に行うべきで、価格を抑えるためにするものではありません。それなのに、補助金でガソリン価格を抑えて需要を喚起しながら、他方で備蓄を放出するのは支離滅裂。政府が本来やるべきは、限られた原油を経済活動に支障がないよう供給することです。優先したいのは、医療器具や日用品に使われるプラスチック製品などの原料となるナフサと、バスなどの公共交通機関やトラックなど物流を担う車のための軽油の生産です」(小嶌氏)
実際、「全日本トラック協会」「日本バス協会」「全国ハイヤー・タクシー連合会」の運送業界3団体は、3月27日に軽油の安定的な確保などを求める要望書を、金子恭之国土交通相(65)に手渡した。すでに運送業界では、一部の燃料販売店が軽油の供給制限を始めた影響が出ているという。
「政府にとっての優先事案は消費の抑制、つまり需要規正です。主に自家用車が使うガソリンは、都市部なら電車やバスに代替することで節約できますが、経済活動の基盤であるナフサや物流トラックなどの軽油の節約を強いるのは難しい。事態が悪化してからでは遅過ぎます。ガソリンスタンドに掲げられた価格看板が目立つからか、政府はガソリン価格を下げることを優先するばかりで、国民の人気取りに終始しています。補助金を投入し続ければ、需要が喚起されて実態価格は下がらない。貴重な石油備蓄を減らすだけで、本質的な物価高騰対策を怠っているのです」(同)
「値上がりするのは、ほとんどの商品」
ホルムズ海峡封鎖で、一時は1リットルあたり200円を超えたスタンドが全国に続出したが、補助金開始後は170円前後に落ち着いた。とはいえ、補助金の原資は税金で値上がり分を補填しているに過ぎない。原油価格が高止まりしたままでは、目先のガソリン価格が安くなったように見えても、最終的なツケは家計が負担する格好なのだ。
さらに新年度を迎えた4月は値上げラッシュが家計を襲う。帝国データバンクの調査によれば、食品2798品目が対象で、マヨネーズなどの調味料やカップ麺などの加工食品、焼酎やウィスキーなど酒類の値段が軒並み上昇している。
「原油高の影響で、引き続き多種多様の製品が値上がりすると予想されます」
とは、都内にスーパーを展開する「アキダイ」社長の秋葉弘道氏(57)だ。
「原油から製造される化学肥料を大量に使うハウス栽培の野菜・果物全般、また化学肥料を使った作物をエサとして与えられる動物の肉類や乳製品も値上がりする可能性があります。ナフサから作られた包装材を使う惣菜パックや菓子類など、値上がりしそうな例を挙げたらキリがない。ほとんどの商品名を言わなければいけません。消費者には大変な負担ですよ」
“トランプふざけんな”
物価高の影響は店頭の様子からも如実に分かるとして、秋葉氏はこう続ける。
「週に1度、特売品セールをやるのですが、ここ最近は開店前から200人ものお客さんが並んでいます。朝9時開店ですが2時間前から並び始める。以前に比べて特売目当てのお客さんが大幅に増えています。目玉商品として卵10個入りパックを税抜き88円で売ったのですが、少しでも安く売るために10万円ほどかかる新聞の折り込みチラシはやめました。皆さん口コミで集まってきてくれるのです」
毎週のように特売セールへ通う60代の女性客は、
「物価高については“トランプふざけんな”と思います。日本政府だってちゃんとしてほしい。今日は安売りのジュースやコーヒー、オリーブオイルなどを買いだめしました。これからいろんなものが値上がりすると聞いているので……」
秋葉氏や女性客が懸念するように、物価高はとどまるところを知らない。
また、イラン攻撃が長引けば、電気・ガスなどの光熱費が「史上最高値」になる見込みが確実というのだ。
後編では、5月以降国民を襲う電気代の高騰について詳しく解説する。
「週刊新潮」2026年4月9日号 掲載
