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相続税は、相続財産の合計額に応じて課税されるため、評価額を下げることが節税につながります。富裕層のあいだでは、銀行や証券会社のウェルスマネジメント部門、プライベートバンキング部門が提案する「株特外し」という手法が知られています。今回はその仕組みと注意点について、公認会計士の岸田康雄氏が解説します。

相続税は「評価額」で決まる

相続税は、相続財産の合計額に税率を掛けて計算されます。正確には、債務や基礎控除額を差し引きますが、基本的には「個別資産の評価額を合計する」形で算定されます。

土地や建物など時価が明確でない資産については、法律で定められた評価方法(路線価方式など)を使って評価されます。ここで重要なのは、「評価額」は「実際の価値」とは異なることがあるという点です。

したがって、評価額をうまく下げることができれば、相続税の負担を軽減することができます。

評価額を下げる方法…1.「資産の組み替え」

評価額を下げる手法のひとつが、「資産の組み替え」です。たとえば、金融資産を不動産に組み替えると、相続税評価は大幅に下がります。特に、賃貸用のタワーマンションなどを保有している場合、評価額は実際の市場価値の約5分の1程度に抑えられることがあります。

ここで重要なのは、評価額は下がっても資産そのものの価値は変わらない点です。これは法律で認められたルールに沿った節税手法であり、違法ではありません。

[図表1]資産組み換えで相続税評価が低くなるイメージ

評価額を下げる方法…2.「持株会社」の活用

会社経営者の場合、自身が経営する事業会社の株式を保有していると、その株式の評価額が高くなることがあります。この評価額を抑える手法として、「持株会社」の設立が挙げられます。

これには、「持株会社が事業会社の株式を保有する」という構造を作ることで、評価の仕方を変えるという狙いがあります。

[図表2]持株会社作成のイメージ

ただし、持株会社が株式ばかりを保有していると、評価額が下がらないという特別ルールが存在します。この状態の会社は「株式保有特定会社(カブトク)」と呼ばれ、節税効果が限定されます。

そこで、持株会社が事業会社の株式以外の資産も保有することで、カブトクを回避する手法があります。それが、「株特外し」です。

[図表3]株特外しした場合の資産構成イメージ

ビル、船、金融資産…株特外しで保有する資産例

株特外しを行う場合、事業会社の株式以外にも以下のような資産を持つことで、評価額を下げる効果が期待できます。

不動産(区分所有マンションや商業ビル1棟など)

船舶や航空機(高額資産として利用可能)

投資信託やETFなどの金融資産

法人契約の生命保険(終身保険など)

航空機やビルなどは非常に高額ですが、事業会社の収益性が高ければ、銀行から融資を受けて購入することも可能です。金融機関がこうした資産を提案する背景には、融資のチャンスを広げたいという思惑もあります。

なお、生命保険の場合、支払った保険料が「保険積立金」として会社の資産に計上されるため、金融資産と同様に扱うことができます。

「節税狙い」が強すぎると、税務署に否認される可能性も

株特外しは合法的な節税手段ですが、以下の点には注意が必要です。

・節税目的だけで資産を取得した場合、認められない可能性がある

・贈与や相続の直前に株特外しを行うと「租税回避行為」として否認されるリスクがある

・資産取得には運用やリスク管理など、合理的な理由が必要

単なる節税目的としてではなく、資産運用や経済的メリットをともなうことが重要です。

「株特外し」活用の際は、運用と“裏づけ”を忘れずに

株特外しは、相続税負担を軽減したい富裕層が活用する代表的な手法のひとつです。持株会社を活用した「カブトク回避」や、不動産・金融資産・生命保険などの組み合わせにより、相続税評価額を下げることができます。

ただし、節税だけを目的とした極端な資産操作は税務署に否認されるリスクがあるため、適切な運用と合理的な理由が欠かせません。

岸田 康雄

公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)