バルト海に浮かぶ6700の島々で構成されたオーランド諸島は、人口3万人で、可愛い一軒家たちが立ち並ぶ平和な群島ですが、かつてはフィンランドとスウェーデンの間で領土問題の火種になったこともあります。この問題解決に、実は日本人も関わっていたという、不思議なアイデンティティを持つオーランド諸島に行ってきました。オーランド諸島に割り当てられている ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は、「.ax」です。

ドメイン島巡り - 世界のドメイン1,000種類以上を取り扱うインターリンクが、「.cc」「.tv」「.sx」等、南太平洋やカリブ海などの「島のドメイン」約50種類に焦点をあて、実際にその島々に行き、島の魅力をレポートします。

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♦オーランド諸島はどこにあるのか?

オーランド諸島は、バルト海の入口に位置するフィンランドの自治領で、スウェーデンとフィンランドの中間にあります。約6700の島々から構成されており、そのうち人が居住しているのは約60。我々は今回、その中心都市であるマリエハムンを調査しました。

オーランド諸島の総面積は1552平方キロメートル、人口は2024年時点で約3万人。その中心であるマリエハムンの総面積は20平方キロメートル、人口は2023年時点で約1万1800人です。使用されている通貨はユーロ、公用語はスウェーデン語。日本との時差は-7時間です。

・目次

♦船内に潜む“時差トリック”

♦【閲覧注意】道に溢れたナメクジをすり抜けて憧れの北欧サウナ体験

♦世界に2つしかない「海賊の旗」

♦知られざる日本人の功績〜オーランドいろいろ〜

♦世界で最も環境に優しい大型旅客船

♦街で見かけた.ax ドメイン

♦現地SIM速度調査

♦船内に潜む“時差トリック”

ストックホルムからオーランド諸島・マリエハムンへは、港のバイキング・ライン・ターミナル (Viking Line Terminal)から「Viking Line」という航路で向かいます。港へはストックホルム中央駅からタクシーで10分。タクシードライバーに「Viking Line」といえばすぐわかってくれました。



場所はココ

自動発券機でチェックインします。チケットが勢いよく飛び出てくるので、手で支えておきましょう。



乗船したのは「ガブリエラ」号。この船は1992年、クロアチアの造船会社ブロドスプリットが、ユーロウェイ社の「フランズ・スエル」号として建造したものなので、船内にはそれなりに年代を感じます。



予約したキャビンはバルコニー付きで、2つのシングルベッドが並んだダブルベッドが入る作り。金額は3名の乗船料込みで660.50ユーロ(約11万3000円)でした。



冷蔵庫には無料ドリンクのサービスもあり、思わずテンションが上がります。



船上の滞在時間はおよそ6時間とたっぷりあるので船内を探検してみました。甲板に出ると、ストックホルム市内のユールゴーデン島にある遊園地「グローナ・ルンド(Gröna Lund)」が見えました



船はスウェーデンとフィンランドの間にある無数の島々を縫うように進みます。その光景はまるで北欧版の瀬戸内海。ゴツゴツとした岩の島や、わずかに生えた植生が点在し、これは紛れもなく北半球の高緯度地域でしか見られない景色。眺めているだけで飽きません。



犬連れの乗客が多く、ペットフレンドリーな雰囲気。乗客層は高齢の夫婦や子連れの家族が中心で、若いカップルはあまり見かけませんでした。



船内のスパにはジェットバスが2つあり、男女がワイングラスを片手にくつろぐ光景が印象的でした。もちろん撮影はできませんが、360度ビューが公式サイトで提供されています。

ほかには、子どもがレゴで自由に遊べる部屋、卓球・サッカー・ゴルフができる部屋、クレーンゲームなど、時間を潰すためのエンタメ施設が充実していていました。船内には免税店もあります。



エンタメエリアを散策していると怖い白黒写真が飾られた「お化け屋敷」を発見しました。「19時スタート」とのことだったので、時間に合わせて行ってみると、近くにいた乗客が「もう入れないよ、19時はフィンランド時間だよ」と教えてくれました。スウェーデンとフィンランドには1時間の時差があり、船はフィンランド側のタイムゾーンで動いていたため、手元の時計で19時のつもりでも、船内はすでに19時を過ぎていたというわけです。船内での「時差トリック」は、慣れるまでは本当に油断なりません。



夕食は、行列ができていた人気のシーフードレストランで食べたかったのですが、20分ほど並んだ末に「事前予約が必要」という事実を知るという痛恨の結末に。船内で食事を予定している方は、事前予約が必要か否かのチェックをお忘れなく……。結局、すぐ隣りにある予約不要のビストロレストランに入り、肉厚なパティが2枚入っている「The Double Burger」(19.5ユーロ、約3300円)、本場の北欧らしい上品な味わいの「Grilled Salmon」(26ユーロ、約4400円)、ベジ系でも満足感のある「Grilled Halloumi」(24ユーロ、約4100円)を注文しました。



キャビンから景色を眺めていると、三角の建物が気になる不思議な島を発見。後にマリエハムンの観光案内所で聞いたところ、「Kobba Klintar」(コッバ・クリンタール)という、マリエハムン港の沖合に浮かぶ小さな岩の島に建つ、歴史あるパイロットステーションだとのことでした。かつては、オーランド諸島を訪れる船舶が安全に港へ入るための水先案内人(パイロット)を乗せる重要な拠点でしたが、役目を終えたあとは小さな博物館兼観光スポットとして公開されているようです。



♦【閲覧注意】道に溢れたナメクジをすり抜けて憧れの北欧サウナ体験

6時間の船旅を経て、マリエハムンに到着しました。

時刻は23時を過ぎていますが、この明るさが幻想的です。



オーランドには独自の旗があります。デザインは、青地に黄色のスカンジナビア十字というスウェーデンの国旗をベースに、赤いスカンジナビア十字(北欧地域でよく見られる十字デザイン)が重ねられたものです。黄色と赤はフィンランドのシンボルカラーでもあり、この旗はスウェーデンとフィンランド、両方の文化的要素を象徴しています。



のどかな街並みを歩いてホテルに向かいます。歩いていて感じたのは、どの家も“北欧美学”を体現しているということ。白やペールトーンの壁に、木の温もりを感じるデザイン。過剰な装飾はなく、シンプルだけれど可愛らしい家々が並んでいます。



どこを切り取っても絵葉書のようで、まるで高級住宅街のような落ち着きと品の良さが漂っているので、つい上を見上げながら歩いてしまいます。ところがふと、足元に目をやると道に黒っぽい塊が、妙に高頻度で落ちています。「犬のフン…?」と思いきや、その物体、よく見るとスルッと光沢があり、なぜか横線が入っている。しゃがんで確認してみると……なんとナメクジの大群でした。北欧の爽やかな街並みと、美しい家々。しかしその足元には、ヌメっとした現実が静かに、しかし大量に存在していたのでした。



およそ50m続いたナメクジゾーンを慎重に、しかし勇敢にナメクジたちを避けながら前進した我々は、北欧サウナの体験ができる「ホテルサボイ」に到着しました。不思議なことに、ナメクジゾーンを過ぎてから島内で再びナメクジ群を見ることはありませんでした。



ホテルサボイの場所はココ。

部屋は「Standard Twin Room」ですが、ツインのほかに2段ベッドもついていました。家族用なのかもしれません。清潔で居心地が良い部屋でした。



翌日の朝、ホテル内のサウナを体験することにしました。利用は男女交代制。サウナ自体は日本のものとよく似ていて、熱した石に水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」も完備。ちょうど他に誰もおらず、貸切状態でゆったりと「ととのう」ことができました。



日本のサウナと違うところは水風呂がないこと。代わりに、水着を着用して隣にあるスイミングプールに入るのが、こちら流の「ととのう」方法のようです。サウナでしっかり温まり、プールにザブン……というスタイルです。



ホテルの朝食メニューはパン、スクランブルエッグ、チーズ、フルーツ、ソーセージ、オーツミルクと充実しています。スイカが甘くて激ウマでした。



♦世界に2つしかない「海賊の旗」

満腹になったところで、オーランド海事博物館に行ってみます。ここには世界で最も古く、かつオリジナルの形を保ったバルク貨物船「Pommern(ポンメルン)」があります。20世紀初頭に造られたこの4本マストの大型帆船は、今なお見事な姿をとどめており、船体の中にも入ることができます。



オーランド海事博物館(Åland Maritime Museum)はココ。

甲板に立つと、まるで100年前の航海にタイムスリップしたような感覚。船のマストに人が登っていたため、体験できるのかと思いきや、その日はスタッフがメンテナンスをしているだけでした。しかし実際に年に1回、登る体験イベントを開催しているそうです。



かつて貨物が積み込まれていた巨大な空間に足を踏み入れると、思わず圧倒されます。静まり返ったその場所に立つと、まるでクジラの腹の中に迷い込んだかのような感覚になります。



船内の一角には、セーラーたちが食事や睡眠をとっていた生活スペースが残されていました。小さなベッドがぎっしり16台並び、まさに「詰め込まれた生活」という言葉がぴったりの空間。この場所で、彼らは何ヶ月も寝起きし、食事をし、笑い、そして耐えてきたのでしょう。狭く、揺れる空間の中で営まれていた日常の重みが、空気に残っているようです。



船着き場へと続く橋の一部に、名前が刻まれたプレートがずらりと並んでいました。よく見ると、そこにはKPMGやABBなど、世界的な企業の名前も。どうやらこの橋は、寄付によって整備されたもので、支援者たちの名前が記念として残されているようです。



併設の博物館には、世界に現存する2枚しかない「本物の海賊旗(スカル&クロスボーン)」のうちの1枚もありました。この旗は、1800年代初頭に北アフリカの地中海沿岸からオーランドに渡ってきたものだそうです。素材は綿で、もともとはカリブ海、西インド諸島などで使われていた可能性もあるのだとか。骸骨と交差する骨が描かれたこのデザインは、言わずと知れた「ジョリー・ロジャー」。18世紀初頭には海賊たちの標準旗として定着していました。



♦知られざる日本人の功績〜オーランドいろいろ〜

マリエハムンの観光案内所を訪れ、ふと思い立って「オーランド諸島と日本に、何か関係はありますか?」と係員に尋ねてみました。少し考えたあと、返ってきた答えは「NITOBE」。『武士道』の著者であり、かつて五千円札の顔にもなった、日本が誇る国際人の新渡戸稲造の名前が出てきました。

国際連盟事務次長となった新渡戸稲造は、1920年、スウェーデン帰属を望むオーランドの住民と、領有を主張するフィンランドが対立したオーランド諸島問題の調停に関わりました。最終的に、統治はフィンランドで公用語はスウェーデン語、広い自治権と非武装化を保障するという裁定が下り、双方が目的を果たす形で問題は解決されました。オーランドが独自の行政・立法、財政権限を持つようになった礎は、この「新渡戸裁定」にありました。



実は、インターネットの住所管理を担っている国際NPO・ICANNの今のCEOはオーランド諸島出身。観光案内所の担当者に「この人をご存じですか?」と写真を見せたところ、「知らないな……でも、彼の名前はオーランド諸島の人の名前だね」との回答でした。さすがに顔までは知られていませんでしたが、この小さな島からICANNのトップが出ているというのはすごいことです。



観光案内所をあとにし、ランチを取りに向かったのは現地の人気カフェレストラン「Svarta Katten」。テラス席もある小さな一軒家です。



場所はココ。

手書きのメニューも可愛いです。



注文したのは、たっぷりのサーモンがのった贅沢なSalmon Mix Toast(12.4ユーロ、約2100円)、しっとりツナと野菜がサンドされたシンプルなTuna Mix Sandwich(7.8ユーロ、約1300円)、ぷりぷりのエビが主役のShrimp Mix Sandwich(マヨネーズ抜き)(8.2ユーロ、約1400円)。素朴ながらも素材の味を活かした美味しさです。ちなみに、店名は「黒猫カフェ」という意味ですが、猫カフェではないので猫はいません。



でも楽しそうに街を散歩する猫に会いました。首輪を着けていますね。



散策中に偶然見つけたViking Line本社。フィンランドの首都ヘルシンキでもなく、スウェーデンの首都ストックホルムでもなく、オーランド諸島のマリエハムンに本社を置くのは、EU加盟国ながらVAT(付加価値税)制度が適用外という自治権を活かすためです。船がマリエハムンに寄港すれば合法的に免税販売が可能となり、酒や香水などの船内販売に大きなメリットがあるため、本社立地と寄港地として選ばれているのです。



マリエハムンの中心街に設置された木製の現代アート彫刻「頭を手に持つ男(Selfreflection)」。他にも街角や公園に地元アーティストのパブリックアートが点在しており、市民や観光客が自由に座ったり写真を撮ったりできる参加型アートとして人気があります。



これはフィンランドでよく見られるタイプのエレベーターの操作パネル。「HISS」はスウェーデン語で「エレベーター」です。



街中を猛スピードで走り抜けていったのはド派手な改造車ではなく、救急車。この黄と緑を基調とした配色は単なるデザインではなく、「救急車であることを一目で分からせ、昼夜を問わず視認性を高める」というヨーロッパ標準に基づいた安全上の意味があります。



♦世界で最も環境に優しい大型旅客船

ストックホルムへと戻ります。帰りの航路では、行きとは異なる「バイキング・グローリー」に乗りました。



この船は 2021 年に就航したばかりの最新フェリーで、船内はぐっとシックでスタイリッシュな雰囲気。照明やインテリアも落ち着いていて、大人の空間といった印象です。この日は雨のため、甲板にはあまり人がいません。



そして何より驚いたのは、この船「世界で最も環境に優しい大型旅客船」とも称されているということ。最新のエネルギー効率や排出ガス制御技術が導入されており、まさに未来の海を走る船といえる存在です。部屋はシーサイドの4人部屋(トイレ・シャワー付き)を予約しました。この部屋は3名の乗船料込みで76.50ユーロ(約1万3100円円)です。



レストランの夕食を予約しました。3名で138ユーロ(約2万4000円)と、部屋代を上回りました。食事はビュッフェ形式で、北欧のサーモンやローストビーフに加えて、なんとキャビアまでありました。さすが最新の船、ラインナップも贅沢です。



ワインやビールも飲み放題です。



圧倒されるオーシャンビューの店内。さすがに窓はピカピカで絶景です。



レストランは時間指定制で、我々は「15時」に予約しました。果たして、この「15時」がフィンランド時間なのか、スウェーデン時間なのかはがわからず、フィンランド時間の15時にレストランへ向かってみると「合ってるよ」とスタッフが笑顔で迎えてくれました。船が現在どこのタイムゾーンにいるかによって判断しているのでしょうか。少し混乱しますが、これもタイムゾーンをまたぐ船旅ならではの体験ですね。



♦街で見かけた.ax ドメイン

2017年からシニア向けサービスを提供している「ビョールケ」。



大型帆船レースイベント「Tall Ships Races Mariehamn」。スポンサーにはViking Line社などの地元・地域団体が入っています。



ヘアサロン「ヘア・バイ・ジュリア」。



サッカーの試合「IFK Mariehamn(マリエハムン) vs FC Haka(ハカ)」の告知看板。



♦現地SIM速度調査

eSIMのUbigiを利用して、マリエハムンの市街地で計測しました。速度は440Mbpsでした。



海外に行く予定のある方はインターリンクがnoteでまとめている記事「最強の海外用eSIMはコレだ!海外用Wi-Fiはやめておくべきこれだけの理由」を参考にしてください。

【随時更新】最強の海外用eSIMはコレだ!海外用Wi-Fiはやめておくべきこれだけの理由 |株式会社インターリンク

https://note.interlink.blog/n/nbc08ddc8169e?gs=95655e6318d0

今回訪れた場所は以下のマップで確認可能です。

(文・写真:インターリンク https://www.interlink.or.jp/

ドメイン島巡り https://islanddomains.earth/)