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40年に及ぶ歴史の結晶

9月1日、横浜ゴムからスタッドレスタイヤ『アイスガードiG80』(通称:アイスガード8)が発表された。同社のスタッドレスタイヤへの取り組みは、1985年に登場した『ガーデックス』から現在まで40年にも及ぶ歴史を持っており、その間、氷上性能アップを追求してきた。アイスガード8はその第8世代となる。

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もっとも注目したいのは、これまで追求し続けてきた氷上性能を革新的に高める、冬用タイヤ新技術コンセプト『冬テック』を採用していること。


パワーのあるGRスープラでもコントロールが容易。    横浜ゴム

冬テックとは、単位面積あたりの氷とゴムの接触点である『接触密度』と、路面とタイヤの『接触面積』のふたつの視点から、冬の路面との接触を最大化するための技術。

接触密度を高めるため、新たに『水膜バスター』と名付けられた新吸水素材を採用。また、ゴムの柔軟性を高めるとともに、劣化抑制効果を持つ『オレンジオイルS+』を新採用している。

従来から採用している『マイクロエッジスティック』、『吸水バルーン』に加え、シリカの配合量を増加したアイスガード8専用コンパウンド『冬ピタ吸水ゴム』を開発している。

水膜バスターは小型で多層構造の吸水素材である。高密度に配合することで、コンパウンド剛性を高める効果も発揮する。吸水性能は先代アイスガード7比で8%向上し、その結果、氷とゴムの接触密度が63%増加した。

また、ウェット・ドライ性能の低下を抑制するため、前述のとおりコンパウンドにはシリカを増量。シリカを増量すると、コンパウンドの柔らかさを維持するのが難しくなるが、オレンジオイルS+の配合によって4年後まで氷上摩擦力の低下を抑制することが可能となった。

AIを駆使してパワーアップ

もうひとつの視点である『接触面積』については、横浜ゴム独自のAIを活用した材料開発技術である『HAICoLab(ハイコラボ)』を駆使して、冬用タイヤの4つの機能である『圧縮抵抗』、『雪柱せん断力』、『凝着摩擦力』、『エッジ効果』を最適化したプロファイル(≒タイヤ形状)を抽出。8%増加したアイスガード史上最大の接地面積、ブロック剛性の7%増加、溝エッジ力の4%増加を実現し、ラグ溝倒れ込み抑制サイプを開発・採用している。

その結果アイスガード8は、冬テックの導入により、氷上制動が14%、氷上旋回(ラップタイム)が13%、氷上加速が13%それぞれ向上。同様に雪上性能、ドライウエット性能、静粛性も向上させている。


サイドウォールには、漢数字の『八』を模したデザインがあしらわれている。    横浜ゴム

外観上の特徴は、縦溝主体のリブデザインが採用されていること。横溝でブロックを分断することなくリブ(ブロック列)剛性を高めたデザインとなっている。

果たして、その実態やいかに

アイスガード8を試乗したのは今春のこと。その時はまだ、テストデータが公式に発表されなかったのだが、試乗会では、横浜ゴムのスタッフが語る言葉の端々から自信が感じられたことが印象深い。

とはいえ、スタッドレスタイヤの登場から約40年。その間ひたすら進化を続けてきた、ある意味もっともホットなタイヤではあるが、先代となるアイスガード7の性能が良かっただけに、「大幅な進化なんてあるのだろうか?」という気分もあり、その自信がどこから出てくるのかを不思議に思いながら試乗に望んだのだった。


先代の7よりもさらに安心感のあるグリップ力を発揮。    横浜ゴム

はたして、試乗してみると確かに良いのだ。印象としては「軍手を着けて氷の路面に手を置いている」ような感覚がある。水分が少なく氷の路面を直にとらえているような感覚。先代モデルと比べて性能の飛躍が感じられた。

アイスガード8の性能を端的に表していたのは氷上テストだった。屋内ブレーキテストコースでは、アイスガード7と比較して制動→加速を試すことができた。20km/hからの急制動は約2mの差があり、しかもググッとタイヤのコンパウンドが氷の路面と摩擦しているのを実感できる減速感がある。

「あ、クルマが止まってくれるな」という安心感があり、これはテストコースよりも一般道で強く実感するはずだ。

また、制動試乗で停止状態から再発進するときの加速が容易であった。単独で走るとアイスガード7も発進加速しやすいのだが、アイスガード8はさらに強くアクセルを踏み込むことができるし、タイヤが空転を始める直前あたりのアクセルコントロールの幅が広く、不思議なくらい楽に発進できてしまうのだ。

ステアリングフィールも大幅向上

氷盤旋回路でもその差は明らかだった。コンスタントに旋回タイムが良く、アイスガード7と比べると、旋回時の手応え、ハンドルの重さ、アクセル操作した時の加速感にひと回りしっかりしている感触がある。ピークグリップを超えてもグリップの落ち込みが少ないのだ。だから、タイム的にも落ち込みが少なく安定している。

もっと速く走ってやろうとペースを上げても、いきなりグリップ限界を超えて大きく外側に膨らんでしまうということがなく、ハンドル舵角が深くなってタイムは多少ロスするが、ほぼそのまま走れてしまうほど、懐が深いのだ。


インフォメーション性の高さとコントロール性の良さを磨き上げたアイスガード8と筆者。    横浜ゴム

雪上性能も良かった。雪上ハンドリング路では特にハンドルを切り出した時の手応えがしっかりしていて、タイヤが雪の路面にグリップしている様子がはっきりと伝わってくる。磨き込まれたコーナーでも、予想以上にハンドルが効き、案外あっさりとコーナーを走り抜けることができて驚く場面もあった。

もちろん万能ではないので、磨かれた路面では当然滑るのだが、そんな場面でも路面との摩擦感が抜けず、滑り成分が増えてくる様子がわかりやすい。

トレッドデザインとコンパウンドが変わって、全体にコンパウンド剛性、ブロック剛性は高くなっているということだが、それがインフォメーション性の良さとして反映されていて、ステアリングを通して手に伝わってくる。

アイスガード・シリーズが、DNAのように受け継ぎ、また磨いてきたインフォメーション性の良さとコントロール性の良さは、アイスガード8にもしっかり継承されていた。