初参戦のJ3で台風の目に。栃木シティを支える2つの強み。不断のアップデートで指揮官は「ある程度、通用してるかな」
4月6日には昨シーズン5位の福島ユナイテッドFCとホームで対戦。38分に田中パウロ淳一、78分に藤原拓海のゴールで二度勝ち越しながら、後半のアディショナルタイムに追いつかれて2−2のドロー。もったいない試合となってしまった。
関東リーグだった2022年から栃木Cを率いて4年目になる今矢直城監督も、多くの時間でハイプレスと高い位置での攻撃ができていたという見解を持ちながらも、後半に少し緩くなったところで中央突破などを許し、2つの失点に繋がってしまったことを認める。
それでも福島のような相手に、それだけ支配的な試合運びができた理由について、今矢監督は「そこはもう選手、コーチ、みんなで日々取り組んでいることが、結果として、内容としてもこうやって表われている」と語る。
現役時代はスイスやオーストラリアでプロのキャリアを築いた経歴を持ち、アンジェ・ポステコグルー監督が率いた横浜F・マリノスの通訳を経て、2020年に清水エスパルスでコーチを務めたあと、関東1部だった栃木Cの監督に就任。2年でJFLに引き上げると、24年にはJFL優勝で、悲願のJリーグ入りに導いた。
これだけ短い期間でカテゴリーが上がると、選手が大幅に入れ替わるケースが多いなかで、栃木Cは田中をはじめ関東1部からチームを支えている選手が多い。JFLからJ3に上がるにあたっては、元セレッソ大阪のDFマテイ・ヨニッチ、DF乾貴哉、FW都倉賢のような経験豊富な選手を何人か補強し、最近では元J1得点王でもある41歳のFWピーター・ウタカの獲得で話題を集めた。
しかし、その他の加入はほぼ大卒ルーキーの選手で、福島戦のスタメンも在籍8年目の鈴木隆雅をはじめ、大半が関東リーグから栃木CとともにJ3に這い上がってきた面々だ。
今矢監督は「アップデートはしなきゃいけないと思いますし、これまでも常にアップデートをしてきたからこそ、(J3でも)ある程度、通用してるかなっていう部分もあります」と自負しているが、横浜FM時代にアタッキングフットボールの流儀を学び、清水などでもJ1の基準に触れてきた指揮官が、攻守に渡るハードワークをベースに、支配的なスタイルをJ3でも押し出して、ここまで結果もついてきていることも注目に値する。
在籍3年目の田中は「ここから這い上がるぞという雰囲気はどの選手からも受け取れる」と語る。彼自身も川崎フロンターレでプロのキャリアをスタートし、J2時代のFC岐阜などで主力を担ってきたが、2022年に松本山雅FCを契約満了となり、Jリーグ合同トライアウトに参加しても、しばらく所属先が決まらず、SNSに自己PRを投稿したほどだ。そこから最短でのJリーグ入りに導いた彼の姿を、若い選手たちも見てきている。
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攻撃的なイメージの強い今矢監督だが、特別に重視するのが即時奪回だ。「ハイプレスと即時奪回は非常に我々がフォーカスしている部分で、即時奪回のための切り替えに関してはカテゴリーがJ3ですけど、そこは世界一を目ざすマインドで、日々から取り組んでいる」と指揮官は強調する。
福島戦でも、後半途中まではボールを奪われた瞬間に、その場で奪い返して二次攻撃に繋げるシーンも多かった。藤原の得点をアシストしたMF土佐陸翼は「(即時奪回は)練習からすごく言われてることなので。練習の紅白戦から、そういうのをみんな意識してやっている」と明かす。
ハイプレスや即時奪回を可能にするには、相手の分析も大事になる。そこに関しては指揮官から伝えられるし、必要ならテクニカルエリアからの指示もあるが、基本は日頃からの意識とトレーニングの積み重ねになってくる。
そしてもうひとつ、今矢監督が選手に求めるのは、恐れず挑んでいくことだ。福島戦ではつなぐ技術が高い相手に対し、アグレッシブな守備が効果的だったなかで、ファウルが多かったこと、イエローカードも4枚、出たことに関しては指揮官も改善していきたいというが、自分たちのストロングで挑むマインドは、栃木Cのここからの戦いを支えていくはずだ。
取材・文●河治良幸
