個別指導塾を経営・運営する中で1500人をサポートした、プロ家庭教師の妻鹿潤です。塾の費用について、「思っていた金額よりもかなり高い金額を支払った」というケースがよくあります。悪質なものだと「途中解約ができないどころか、解約金を取られた」という話を聞くことすらあります。

宣伝チラシや契約時に提示された金額だけで収まると考えるのは「危険」です。気をつけるべき、塾費用の「落とし穴」は、どんな点なのかを解説します。

高額な「教材費」に注意

見落としがちなポイントは「純粋な授業料・指導料以外」の費用です。やっかいなのは、諸費・教材費・模試代・中途退会費など、金額・ルールが塾によってバラバラなことです。「他にかかるものは一切ないでしょうか?」「昨年度の同じ学年の生徒で、一番費用がかかった生徒はおいくらでしょうか? どの項目で費用がかかったのでしょうか?」など、しつこく質問し、追加で費用がかかりそうな全項目を、できる限り把握することが重要です。

受講ルールやカリキュラムが複雑でわかりにくいケースも多々あります。似た講座名も多いためわかりづらく、すでに申し込んでいる「通期講座」で受講できるものだと思っていたら実は「"通年講座"であり"通期講座"ではない」ので、想定外の出費がかさんだという経験談も聞きました。

こうした「見えにくい出費」の中でも、特に注意が必要なのは「教材費」です。実は一時期、家庭教師での高額教材費が大きな問題になりました。「授業料が安い」と思って契約しようとしたら、実は教材費が30万〜40万円といったケースですね。教材費で稼ぐ系の業者は、今でも多数存在します。

また、支払い方法にも注意が必要です。「月々◯千円」と書いてあって、手頃だと思ったら、実は「3年払いのローンだった」というような話もありました。契約上、途中でやめてもお金は戻らないケースも少なくありません。サインする前にきちんと確かめておくべきです。

金額だけでなく、講座内容にも注意が必要です。個別指導塾の「5教科対策します」というチラシを見て、「この値段で5教科は割安」と申し込んだが、失敗だったという話も聞きました。その塾はカリキュラムがなく、毎回違う講師が来て、「今日、何の勉強やる?」とその場で相談して勉強内容を決めるというスタイルでカリキュラムもなし。5教科をまんべんなく対策できる、という保護者のイメージとは違い、期待はずれだったようです。

受験生は「ターゲット」に

受験生は、塾側からすると「1番のターゲット」なので、特に注意が必要です。受験生相手の営業目標は「ひとり100万円」という話がよくあります。私も大手にいた際、厳しい売上ノルマに追われました。夏期講習・冬期講習・春期講習に加え、正月特訓、受験の直前合宿、志望校別特訓講座、過去問演習講座といった特別メニューは高額なことが多く、それぞれ10万〜30万円のケースも普通にあります。

他にも、クラスでの成績が下位だと、系列の個別指導塾を紹介されることがあります。個別指導は、集団授業に比べて割高で、1科目で月額1.5〜3万円はします。受験前に「このままでは受からない」と営業を受けたら、親としては断りづらいでしょう。「塾側に嫌われたくない」とプレッシャーに感じられる方も多いようです。

受験期になって塾を変えたりするのは、避けたいですよね。あとで後悔しないためにも、入塾前に、しつこいぐらいに確認することをオススメします。

【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアコンサルタント・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40〜50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアコンサルタントとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。