オックスフォード大学入学前のロンドン滞在中、テムズ河畔を見学される天皇陛下(1983年6月=時事)

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 天皇陛下は長年にわたり、水問題の研究者として活動を続けられてきた。水関連の活動を「時代に即した新しい公務」と位置付け、海外で行われる国際会議にも積極的に参加。渇水や衛生、津波災害など幅広い分野に関心を寄せ、水専門家としての講演は国際社会から高い評価を受けている。

水上交通を研究
 陛下は英国留学の回顧録の中で、幼少期に初めて興味を抱いたのは旅や人の交通だったと明かしている。お住まいの赤坂御用地に鎌倉時代の街道が通っていたことや、松尾芭蕉の「奥の細道」を読んだことなどがきっかけという。学習院大では「瀬戸内海の水運」を卒業論文のテーマに選択。留学先の英オックスフォード大でも、テムズ川の水上交通を研究した。

 当時はあくまで交通手段としての「水」が関心の対象だったが、1987年に親善訪問したネパールで転機が訪れる。ほそぼそと流れる水をくむため列をつくる民族衣装姿の女性や子どもたちを目にし、「いったいどのくらいの時間がかかるのだろう」と驚いた。これが原体験となり、水不足による労働が女性の地位向上や子どもの教育を遅らせることを実感、強い問題意識を持ったという。

世界の舞台
 水問題の解決が、貧困や教育、ジェンダーなどの課題と密接に関係していると考え、これ以降は水問題との関わりを深めていく。誕生日会見では、たびたび「時代に即した新しい公務」の重要性に言及し、その一つが水関連の取り組みだと説明。国連本部でのスピーチや国際会議での講演など、世界の舞台で水問題の重要性を訴え続けた。

新しいお立場
 同じ水専門家として陛下と交流してきた政策研究大学院大教授の広木謙三さん(59)は、「陛下は水というレンズを通じて、貧困や教育、平和など世界の課題に関心を寄せてきた」と説明。これまで以上に多忙となる日々の中で、水関連の活動を続けられるかは不透明だが、「心の中にできたレンズは消えることはない。新しいお立場でも、研究者としてのご経験がきっと役立つでしょう」と話している。