映画『トラック野郎』で“デコトラ”を装飾した「トラックショップなかむら」ってどんなお店?
<横浜のココがキニナル!>
映画「トラック野郎」に撮影協力した幸浦にある『トラックショップなかむら』どんなパーツを売っているのかキニナル。デコトラのドライバーさんも買いに来るの?(sakiさんのキニナル)
惚れっぽくて喧嘩っ早いが情に厚いトラック運転手の「一番星」こと星桃次郎(菅原文太)と、「やもめのジョナサン」こと松下金造(愛川欽也)のコンビが活躍する娯楽映画『トラック野郎』シリーズ。
若い方はご存じないかもしれないが、1975(昭和50)年に第一作が公開されて大ヒットとなり、その後5年間で10作が制作されたアクションあり、お色気あり、そして笑いありの娯楽活劇である。
そんな『トラック野郎』の撮影に協力した店が横浜にあるという。
懐かしく思い出した筆者は、取材に先立ってDVDで初期の作品を改めて観てみた。
すると、冒頭で「協力:トラックアクセサリー専門店塚本屋中村商店」との字幕スーパーが表示され、映画にも店舗が登場する。
さらに、一作目の「一番星号」は横浜ナンバーで、相棒の「やもめのジョナサン」は川崎市在住という設定だった。映画自体も横浜や川崎に縁があったのだと、なんだか嬉しくなって幸浦の「トラックショップなかむら」へ向かった。
■映画『トラック野郎』のデコトラを装飾した店だった
「元々は、父が青木橋(神奈川区)で中古の車部品を扱う塚本屋中村商店という店をやっていたんですよ」と中村秀夫社長。
中村さんが店を手伝うようになったころ、車部品に加えトラックのアクセサリーも扱い始めたところ、それ目当てのお客さんが増えていった。
塚本屋中村商店はトラックアクセサリーショップとして日本の草分け的な存在となり、トラック運転手たちの口コミで徐々に人気が広がっていった。
そのうちテレビなどで「派手に飾られたトラック」が紹介されるようになる。そこからヒントを得て制作された映画『トラック野郎』が大ヒット。デコレーションされたトラックは、「デコトラ」と呼ばれ、幅広い世代に知られるようになっていく。
『トラック野郎』の目玉であるデコトラの装飾を行ったのが塚本屋中村商店。
「3作目くらいまでの装飾をウチでやったんだよ」と、中村さんが1枚の写真を見せてくれた。
写真は右から、鈴木監督、映画『トラック野郎』の研究をされている桜美林大学の小川准教授、星桃次郎のモデルとなった高田氏、中村さん、そして、映画に出演協力した「哥麿会(うたまろかい)」の会長でトラック野郎のカリスマ的存在である宮崎氏。
映画のヒットがデコトラ人気に拍車をかけ、デコトラ文化は日本を席巻し、高速道路を走ればきらびやかなトラックばかり。デコトラ人気は小中学生にも及び、デコトラ模型やラジコンが発売されるだけではなく、自転車をデコレーションしたデコチャリまで登場し、社会現象ともいえるほどだった。
しかし、その後、映画シリーズが終了してデコトラ人気がひと段落すると、今度はデコトラでの運送や納品に難色を示す取引先が増えるなどし、派手なデコトラは徐々に姿を消していく。
中村さんが現在の場所にトラックアクセサリー専門の「トラックショップなかむら」をオープンしたのは、1989(平成元)年。みなとみらい21地区の再開発を機会に店舗を移した。
「今では時代に逆行しているお店かもしれないね。でもドライバーさんは車の中で過ごす時間がすごく長いから、自分好みの内装にすることでリラックスして楽しく仕事をしたいという方が多いんだよ。だから、内装に凝る方は多い。そういう方がいる限り、求められるものを提供していくのがこのお店の役割なんだと思ってやっている」
そう中村さんが言う通り、店の中にはデコトラをイメージさせるド派手な外装品は少ない。
現在もデコトラ専門の雑誌が2誌あり、デコトライベントが行われるときらびやかなトラックが集まるが、お店のお客さんの大多数は外側から見えない内装に凝って楽しんでいる。派手なデコトラは営業用ではなく、ほぼ完全に趣味の世界になっているそう。
■店内にはこんな商品が
改めて『トラック野郎』を観たせいもあり、ド派手な外装商品を想像していたので、ちょっと期待外れだったが、店内に並ぶ商品は普通の車しか持たない筆者にも十分に楽しめるものだった。
ハンドルカバーはトラックの車種別にそろえている。レザーキルトが一般の主流だが、トラック野郎は応接家具風の金華山(きんかざん)という生地を好むそう。
カバー自体の色や柄だけでなく、ステッチ(縫い目)の色も選んで好みのものをオーダーメイドで作ることもできる。乗用車用サイズもあって、「ネットでは色のイメージが伝わりづらいので、お店にきて実際の色を確かめてみてほしい」とのこと。
そして、変わらぬ人気商品はシフトレバーの先端に取り付けるシフトノブ。きれいな色のものがたくさんある。
樹脂製のものが多く、通販で来る海外からの注文は水中花タイプが人気だそう。普通の車とはネジ口径が違うが、アダプターがあるので取り付け可能。
そのほかの売れ筋商品を一気にご紹介しよう。
各色がそろうサイドマーカーランプ、トラック用ホーン各種(長いのは昔のデコトラ用で見える場所に取り付けた)、テールライトカバー各種、サポートもしっかりした蒸れにくいシートカバーなどなど。
日本の職人が作ったこだわりの商品もあった。ステンレスでできた貼るタイプのデコレーションは職人さんのハンドメイドだ。
元々、デコトラはこのようなデコレーションを車体の傷などを隠すために付けたのが始まりだという説もある。
ベッドウインドー(運転席の後ろの仮眠スペースの窓)のガラスとして入れるガラスエッチングは完全ハンドメイド。これには、デコトラの匂いがまだ残る。
これを作れる人は今ではもう一人しかいない。ガラスを後ろから彫刻して色を入れ、水銀を塗るなどして絵付鏡にするガラスエッチングだ。期限なしで待ってくださる方にだけ完全オーダーメイドで最後の職人さんに作ってもらっているそう。
「一般の読者の方々が欲しいと思いそうなものはあまりないですね・・・」と筆者がつぶやくと、「あるよあるよ」と見せてくれたのがこれ。
トラック用なので3.3メートルまで伸びる洗車用のブラシ。ホタテ加工工場やお寺さんといった意外なお客さんが購入しているという。
高いところなども掃除しやすくホースを繋いで水を使えるので、家の壁など洗車用ではない用途で購入する人も多いのだそう。
■取材を終えて
映画『トラック野郎』の撮影でデコトラを装飾した「トラックショップなかむら」。
現在の主力商品はトラックの内装アクセサリーだった。
今はGPSで運行管理されているトラックが多く、ドライバーさんが仕事中にちょっと寄っていくというようなことが少なくなってきているので、売上は店舗とインターネット通販が半々くらいだそう。
トラックドライバーは観光バスのドライバーに転職する人もけっこうな割合でいて、そんなドライバーさんが、「今日は観光バスで八景島に来たから」と、お客さんが八景島を楽しんでいる間、この店を訪ねてくれることも多いそうだ。
帰りがけにお店のステッカーをいただいた。
「このステッカーを張っているドライバーは皆いい人だから」という中村さん。開業以来、ずっと家族だけで経営されている店の雰囲気はとてもフレンドリーで温かい。そんな雰囲気が好きで通っているのもまた、きっと桃次郎のように心優しいトラック野郎たちに違いない。
トラックショップなかむら
住所/横浜市金沢区幸浦2-9-1
営業時間/10:00〜17:30
定休日/火曜日、第1・3月曜日
※本記事は2014年7月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。

