「夜逃げ同然の翌朝も何気ない顔で生放送を…」元TBSアナ、結婚詐欺で3億円以上の連帯保証人になった壮絶な過去
「人生をよくしたくて結婚したのに、一気に地獄に突き落とされた」。TBSの看板アナウンサーとして活躍を続けながらも、多忙な日々に「30歳を過ぎた頃には自分の未来が描けなくなっていた」という木村郁美さん。そんな折、「結婚しよう」と甘い囁きが。しかしこれが、現役アナの夜逃げ騒動まで巻き起こす壮絶な過去の入り口でした。
【写真】現役アナが夜逃げ同然で引っ越し!壮絶な過去をもつ木村郁美さんの現在(4枚目/全4枚)
弱っているときに現れた「結婚を急ぐ男」
── TBSのアナウンサーをされていたとき、9本ものレギュラー番組を抱えていたとか。
木村さん:はい。四六時中働いていたように思います。やりがいがあって大好きな仕事だったからこそ、仕事にすべてをかけて気力で乗りきっていました。でも30歳を過ぎて自分の将来を考えたとき、「私、ずっとこのまま走り続けなきゃいけないのかな」という不安に襲われたんです。今の状況を変えたいけど、どうしていいのかわからない。そんな日々を送っているときに、元配偶者に会いました。
── 元配偶者(以下、A)と結婚をして、多額の結婚詐欺にあったと聞きました。
木村さん:ワインパーティーの司会をしたときに、経営者と名乗るAと出会いました。そのつながりで、その場にいた方たちと改めて食事会をしようと誘われたのですが、実際にお店に来たのはAだけで…。さらにAは、店のオーナーに「この子、僕の彼女なんです」と突然紹介したんです。まだ会って二度目のことでした。
── 強引な展開ですね…。
木村さん:当時も「この人、何!?」と驚いたんですけど、それまでそんなに強引な人が周りにいなくて。私はごく一般の家庭で育ったので、経営者と聞いてすごいと思った部分もあったんだと思います。強引さも頼もしさに映ってしまいました。
会った瞬間からAは「結婚しよう」という感じでした。押しの強さとAのペースにどんどん取り込まれていき、出会って4か月で入籍しました。弱っているときって、判断力が本当に鈍るんです。
仕事で心身が弱っていて現実が見えなかった
── 違和感などは感じなかったのですか?
木村さん:冷静に振り返ると、おかしなことばかりでした。結婚前に貯金額を聞かれたり。私はあまりお金を使わないタイプなのと、そもそも忙しくて使う時間がなかったので、お金をしっかり貯めていたんです。その金額を何度も聞かれました。
それから「仕事が忙しい」と言って、結婚前に私の友人にも家族にも誰とも会おうとしませんでした。両親とは一度だけ顔合わせをして。父も母もAの行動や話に違和感を覚えていたそうです。でも「郁美が選んだ人だから、疑うのをやめた」「相手のことを調べるのは、郁美への裏切り行為になるからしなかった」と言っていました。
── つらいですね。
木村さん:さらに、結婚式には乗り気じゃないのに、とにかく入籍を急かされて。でも、自分が弱っていたから、現実が見えなかったんだと思います。そして「結婚」という言葉に飛びついてしまった。
当時の私は、忙しい現状にも将来にも不安を感じていて。Aは経営者だったので、結婚すればAを支えることが私の役割になるし、そうすれば、もう少しゆるやかな働き方ができると考えていたんです。人生を変えたいけど、自分では変えられない。そんな当時の私には、「結婚」がすべてを好転させてくれる魔法のように映っていました。
だからこそ、どこかおかしいという違和感に目をつぶり、誰にも相談しなかったのです。
入籍したら3億4000万円の連帯保証人になって
── その後、どんなことが起きたのでしょう。
木村さん:入籍して少し経った頃、Aの会社に呼ばれてとある書類に判を捺してしまいました。とにかく「会社の契約で妻の判が必要」とだけ説明され、そのときは彼の説明に納得してしまい、「そういうものだ」と押印をしてしまったんです。その場に、銀行の担当者もいて、Aの説明に同意をしていたので疑いもしませんでした。「判を押すことがどういうことか?」何も考えないまま、まさか「夫」に騙されるなんて思っていなかったので、本当に軽い気持ちで判を押してしまったのです。促されるままに、作業は進んでいってしまいました。
── そのとき押したのは、何の書類だったんですか。
木村さん:最終的には利子を含めた3億4000万になるAの連帯保証人になる書類でした。事業資金として欲しかったのだと憶測しますが、その辺りは説明されませんでした。確認すべきだったのですが「彼のすることにおかしな点はない」「彼は私のためを思って言っている」と現実逃避をしていたように思います。
書類に押印してしばらくすると、家に取り立ての人が来たり、「返済してほしい」という連絡が頻繁に入るようになりました。そこで初めて、自分が何に判を押したのかを調べたんです。ようやく、借金の連帯保証人になる書類だったとわかりました。
さらに、Aは私を連帯保証人にしただけではなく、「木村郁美の夫」という肩書を使って、あちこちで多額の借金をしていたこともわかりました。被害に遭われた方々に謝罪に伺った際、「木村さんが奥さんだったから信用した」と言われて…。本当に申し訳なくて、自分の借金以上に、胸が苦しくなりました。
── 少しでも早くお金を調達したかったから、入籍を急いでいたんですね。
木村さん:そうだと思います。実は入籍前にも,それまで貯金してきた私の全財産を「自分がキチンと保管しておくから」という約束のもと、渡してしまっていました。本当にお金に困っていた証拠です。人生をよくしたくて結婚したのに、一気に地獄に突き落とされて。騙されたと知り、すぐに離婚を切り出しましたが、「離婚はしない」の一点張り。家にも帰ってこず、どこにいるかもわからない。話し合いすらできませんでした。
── その間、お仕事はどうされていたのですか?
木村さん:会社に迷惑はかけられないと思い、何事もなかったように出社し、テレビに出続けていました。連帯保証人になっているわけですから、仕事を辞めるわけにもいきません。這うような思いで会社に向かっていました。
それでも、職場に行くと背筋が伸びるんです。「ちゃんとしなきゃ」って。仕事をしている時間だけは、ほかのことを考えずに済んだので救われました。ただ、スタジオから画面が切り替わってVTRなどで自分が映らなくなった瞬間に、涙が突然あふれて。こっそり泣くこともありました。
夜逃げの翌朝も、何気ない顔で生放送に出た
── その後どうなったんでしょうか。
木村さん:「自分でなんとかしないと」と、誰にも相談しないで抱え込んでいたのですが、ようやく弁護士に相談して、一刻も早く別居をしようということになりました。
見つからないようにAが仕事で不在の日中に荷物を運び出して、夜逃げ同然の形で引っ越しをしました。カーテンも冷蔵庫も何もない狭い部屋に移り住んで、しばらくはシーツをクリップで留めてカーテン代わりにしていました。
冷蔵庫がない生活が切なくて、出社してすぐに冷たい水を飲んだときは涙が出ました。それでも生放送があったので笑顔でテレビには出ていました。
私はいったいどうなるんだろう…。収録で出たお弁当を大事に持ち帰って、何もない部屋でひとりで食べる日が続きました。
── Aはどうなったんですか?
木村さん:別の詐欺事件で逮捕されました。Aの借金の話は誰にも言っていなかったのですが、Aと結婚したこともAの名前も同僚は知っています。ある日、昼のニュースで読む原稿を、同僚が直前に慌てて差し替えてくれたことがあったんです。「何があったんだろう」と差し替えられた原稿を見たら、Aが詐欺で逮捕されたというニュースでした。
逮捕されたという原稿を見て、「この人、木村さんの元夫だ」と気づいた同僚が、私が読むのではなく、同僚が読むように入れ替えてくれました。
Aが逮捕されことで、これ以上隠しきれなくなり、ようやく周囲の人に連帯保証人になっている今の状況を説明しました。それまで本当に誰にも相談できなかったんです。相談してしまえば、現実を突きつけられる気がして怖かった。自分の失敗を認めたくなかったし、認めてしまったら前に進めなくなるような気がして。だから、なんとかひとりで解決しようとしていたんです。
── 改めて、大変な状況でしたね。
木村さん:実際に周囲の人に話したら、同僚をはじめたくさんの方がサポートをしてくださいました。もっと早く、周りの人に相談をすればよかった。頼ればよかったと心から思いました。実際に、Aの悪い噂を知っている方から「大丈夫?」と声をかけられたこともあったんです。でも、「新婚ですから幸せいっぱいですよ!」と強がっていました。本当は不安でいっぱいだったのに。
心を開いて、もっと素直に助けを求めていれば、運命が変わったかもしれないと思いました。
取材・文:大夏えい 写真:木村郁美

