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納豆や缶詰、調味料などの食料品、電気料金…2026年6月も値上げラッシュによる家計への圧迫が続いています。物価高時代かつ人生100年時代の今、老後資金をどう増やしたらよいか悩む方も多いのではないでしょうか。そのようななか、夫婦でファイナンシャルプランナーとして活躍する横山光昭さんと関口博美さんは「『おふたりさま』(充実して暮らす夫婦)は、これまで以上にお金のあり方を工夫する必要がある」と語ります。今回は、お二人の著書『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』より一部を抜粋してお届けします。

【図】「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」の仕組み

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「繰り下げ受給」は10年で84%も増加

年金の「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」の制度について気になっている方は多いと思います。

年金の受給開始は原則65歳ですが、60〜75歳の希望するタイミングから受給できます。65歳よりも早い60〜64歳の間から受給することを「繰り上げ受給」、65歳よりも遅い66〜75歳から受給することを「繰り下げ受給」と呼びます。

それぞれメリット、デメリットがあります。繰り上げ受給では、1か月早めるごとに0.4%、受給額が減ります。1年の前倒しなら4.8%、5年なら24%も減ってしまいます。

一方、繰り下げ受給は1か月遅くするごとに0.7%ずつ受給額が増えます。1年の後倒しなら8.4%、5年なら42%、10年なら84%も増えます(図参照)。

減額または増額された年金額が生涯の受給額となるため、その判断が老後の暮らしに与える影響は少なくありません。

長生きリスクに備える「WPP理論」

老後の“長生きリスク”に備えるために、「WPP理論」というものが広まっています。「W」はWork longerの略で、つまり長く働くこと。「P」はPrivate pensionsで私的年金など。もう一つの「P」はPublic pensionsで公的年金を指します。

できるだけ長く働きながら暮らし、収入が少なくなったら私的年金などの老後資金で生活費を補い、公的年金はできるだけ繰り下げ受給して増やすという考え方です。


『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』(著:横山光昭、関口博美/小学館)

人生100年時代という長い老後を豊かに生きるためには、お金は少しでも増やしておきたいもの。おふたりさまの場合、年金の受け取り方の選択肢が複合的にいろいろ考えられ、得する可能性が高まります。

すべての方が実行できるとは限りませんが、可能な限り、繰り下げ受給を検討してみましょう。

生活が第一。繰り下げ受給にこだわらない

しかし、働きたいけれど働けない、もしくは現役時代に老後資金が十分につくれなかった方は、WPP理論の実践など考えるべきではありません。

定年後すぐに、日々の生活に困るという方もいるでしょう。この場合、繰り下げどころか、繰り上げを検討してください。

まずは生活が第一。日々の生活費に困るようであれば、早めに年金を受給し、支出を年金などの収入額にできるだけ近づけていきましょう。

こうして新たな生活基盤をつくり直し、それでも赤字が続きそうなら、改めてその後の暮らし方を再検討します。日々の生活を安定させることが先決です。

臨機応変に年金を受け取る

Gさん(67歳)は妻とふたり暮らしで、子どもはいません。贅沢に暮らしてきたわけではありませんが、あまり貯蓄できずに定年を迎えます。退職一時金は約600万円で、貯蓄は総額約800万円となりました。

老後資金が心許ないと考え、定年後も再雇用制度を利用して働き続けました。この間、70歳まで雇用される別の業種の委託社員になる話が舞い込み、転職を決意。ところが、転職先の業務が肌に合わず、ストレスが増して2年で退職。再就職も考えましたが、年齢的になかなか採用されず、年金生活に入ることを検討しています。

前述のように、年金は受給を1か月繰り下げれば0.7%、1年で8.4%、10年なら84%も増やせます。Gさんも定年直後は75歳までの繰り下げを目指しましたが、生活費や健康状態が気になり始め、70歳までの繰り下げを目標とする資金計画に変更しました。

5年の繰り下げでも受給額は42%も増えるため、老後資金不足はかなり解消できます。ところが、70歳まで働き続けるもくろみが頓挫しそうなのです。老後の就労は、体力的にも人間関係の面でも思うようにいかないケースが多々あり、Gさんのようなケースは珍しくありません。

こうして収入が減る状況となったGさんですが、年金は2年の繰り下げとなって16.8%増えるほか、妻が65歳になるまで、厚生年金の加給年金を月額約3万3000円受け取れることがわかりました。

健康保険料を支払った後の手取りは20万円弱。当面はできる限りこの金額内で支出が収まるように少しずつ生活を見直し、妻の年金受給が始まる3年後以降も、なるべく支出は増やさず、老後資金に回す方針にしました。見直し後の収支を維持できれば、3年後から毎月2〜3万円ほど貯蓄を増やせる見込みです。

手続きしなければ自動的に「繰り下げ状態」に

ちなみに、年金の繰り下げを希望する場合、「*歳まで繰り下げる」といった事前申請は不要です。65歳になる前に「年金請求書」が送られてきますが、何も手続きしなければ、自動的に繰り下げ受給の“待機状態”になります。65歳時点では月単位での繰り下げができず、66歳になってから月単位で繰り下げられます。

受給を開始するときは、年金事務所に申請書類を提出しましょう。受給開始までに2〜3か月かかるため、余裕を持って申請してください。

一方、65歳になる前に家計が厳しくなるようなら、繰り上げ受給を検討すべきです。日々の生活を犠牲にしては元も子もありません。生活の質の低下は、身体的にも精神的にも悪影響が及び、「老後の3K」のリスクがさらに高まります。

繰り下げ受給の制度が始まり、とかく年金は「どうもらうのが得か」という点に目が向きがちです。しかし、年金制度の本来の目的は、安心して老後の生活を送るためのものであることを忘れてはいけません。

※本稿は、『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』(小学館)の一部を再編集したものです。