グーグルにアマゾン、マイクロソフト…米“メガテック企業”が示唆する「S&P500の上昇余地」【FPが解説】
地政学的リスクによる下落から始まり一時は不透明感が漂った2026年前半の株式市場。しかし、5月に入るとS&P500は市場最高値を更新しました。その原動力となったのが、主要メガテック企業の驚異的な決算です。YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP鳥海翔氏が複数のデータをもとに、2026年後半の米国株の見通しと懸念材料について解説します。
S&P500最高値は“本物”か?
今後の株価動向を見極めるためには、まず株価の構造を正しく理解する必要があります。
株価の理論値は、以下の数式によって定義されます。
株価=EPS(1株あたり利益)×PER(株価収益率)
EPS(Earnings Per Share)とは「1株あたりの利益」のことで、企業の稼ぐ力を示す指標です。一方、PER(Price Earnings Ratio)は、市場の期待や不安を反映する指標となります。
中長期的な株価のトレンドを決める本質は「EPS」です。
短期的には、戦争や政治イベントによってPERが大きく変動し、株価が振り回される局面もありますが、企業のファンダメンタルズ(EPS)が右肩上がりに成長している限り、株価はPERの短期的なノイズを内包しながらも、長期的には上昇の軌道を描きます。
そのため、現在の株価上昇が企業の実力に裏付けられたものなのか、それとも一時的なPERの押し上げによるものなのかを判断するには、企業のEPSが実際に成長しているかどうかを確認することが重要です。
最近のAI・半導体ブームは“バブル”なのか
米国株市場では、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、アップルといった主要メガテック企業が、S&P500全体の利益成長を大きく左右しています。
これらの企業は指数全体の利益の相当部分を占めており、5社のEPSが伸びればS&P500全体のEPSも押し上げられます。つまり、これらの企業の決算内容は、市場全体の中長期的な株価の土台を判断するうえで極めて重要な指標です。
そこで、市場をけん引する主要メガテック企業5社の最新決算から、EPSの実態を確認していきましょう。
“メガテック”たちの決算内容にみえる共通点
1.アルファベット(Google)
売上高は前年同期比+22%、EPSは同+82%という驚異的な伸びを記録しました。このEPSの急増には投資評価益という一過性の要因も含まれていますが、本業の儲けを示す営業利益ベースでも同+30%と非常に強い数字です。
内訳をみても、その強さがわかります。主軸である広告事業(Google Services)が+16%と堅調なうえ、特筆すべきはAI事業やデータセンターを担う事業(Google Cloud)が+63%と爆発的に成長している点です。
これまで市場からは「AIに巨額の投資を続けても、本当に利益が出るのか」という疑念の目が向けられていましたが、同社は明確に実績を示しています。
2.アマゾン・ドット・コム
売上高は前年同期比+17%、EPSは同+75%(投資評価益含む)、営業利益ベースでも同+29%の成長となりました。北米事業(+12%)や海外通販事業(+19%)も順調ですが、やはり同社のクラウド・AI部門である「AWS(Amazon Web Services)」が同+28%と成長をけん引しています。
3.マイクロソフト
売上高は前年同期比+18%、EPSは同+23%と、こちらも市場予想を上回る好決算でした。
事業別にみると、Officeソフト等の部門(Productivity and Business Processes)が+17%、WindowsやXbox等のハードウェア部門(More Personal Computing)が−1%と横ばいだったのに対し、同社のAI・クラウド基盤である「Azure」を含むクラウド部門(Intelligent Cloud)が同+30%と大きく業績を伸ばしています。
まず、これら3社(アルファベット、アマゾン、マイクロソフト)に共通して、複数ある事業セグメントのなかで「AI・クラウド関連部門が最も高い成長率を記録している」ということがわかります。
AI投資が絵に描いた餅ではなく、確実に企業の収益基盤としてマネタイズできていることが証明されたといっていいでしょう。
メタ…好決算でも株価が下落したワケ
4.メタ・プラットフォームズ
売上高は前年同期比+33%、EPSは同+62%(税制上の特殊要因を除く実質は+13%)となりました。広告売上高(+33%)、広告表示回数(+19%)、広告単価(+12%)と、本業の推移は極めて良好です。
しかし、同社は好決算にもかかわらず株価が下落する展開となりました。
その理由は、前述の3社がデータセンターを他社に貸し出す(例:OpenAIがマイクロソフトのインフラを利用する)ことで強固なストックビジネスを構築しているのに対し、メタは自社のためにのみAI投資を行っている点にあります。
莫大なデータセンターへの投資に対するリターンの因果関係が市場から見えにくく、他3社の決算が秀逸であったがゆえに、過剰な設備投資への警戒感が先行した形です。
5.アップル
AI開発の遅れが指摘され、一時は市場での優位性が懸念されていた同社ですが、ふたを開けてみれば売上高は前年同期比+17%、EPSは同+22%と底堅さを見せました。主力のiPhone売上高が+22%、App StoreやApple Musicなどのサービス部門が+16%と過去最高を更新し、株価も上昇しています。
同社における今後の最大の注目点は、CEOの交代です。ティム・クック氏からテクノロジー分野に精通したジョン・ターナス氏へと交代し、iPhoneをOSレベルで高度なAIツールへと進化させる取り組みが期待されています。
現在、世界で最も普及しているChatGPTの週間アクティブユーザー数は約8億人ですが、世界中のiPhoneの稼働端末数は約15億台にのぼります。
今後、iPhoneそのものがOSレベルで高度なAI機能(各種アプリや資料・文章の自動作成など)を備えるようになれば、一瞬にして世界最大のAIプラットフォームが誕生することになり、同社株の起爆剤となる可能性があるでしょう。
AI投資は追い風も…株価の動きには注意
メガテック5社に留まらず、S&P500全体でみても現在の利益成長率は約27%という高い水準にあります。これは、コロナ禍の経済の落ち込みから急反発を見せた2021年以来、極めて高い伸びをみせています。
直近数年間(2023〜2025年)も年率20%近いペースで成長を続けてきたS&P500ですが、足元の利益成長率はそれらの時期をさらに上回っています。ファンダメンタルズがこれだけ強固である以上、2026年の年末にかけて株価がさらに5〜10%程度、史上最高値を更新していくシナリオが十分に考えられます。
ただし、株価は直線的な右肩上がりで推移するわけではないでしょう。2026年後半に向けては、マクロ環境における2つの懸念材料(リスク要因)に注意する必要があります。
市場に燻る2つの懸念材料とは?
1.インフレの再加速と金利の高止まりリスク
原油高をはじめとするエネルギーコストや物流コストの上昇は、社会全体の製品・サービス価格を押し上げる要因です。インフレが根強ければ、金利を下げにくくなります。
また、米政府による地政学的リスク(イラン等への軍事介入)への巨額の財政支出は、税収だけでは賄いきれません。そのため政府は、大量の米国債を発行しています。
新規に発行される国債を市場に吸収させるためには、国債の金利(利回り)を引き上げざるを得ません。金利が上昇すれば、株式市場のバリュエーション(PER)には抑制圧力が働きます。
その結果、企業のEPSが上昇していても、金利上昇によって株価がなかなか上がらない局面も想定されるでしょう。
2.中間選挙にともなう市場のボラティリティ上昇
また、2026年は米国の中間選挙の年にあたります。選挙結果によって今後の経済政策や法改正の方向性が不透明になるため、選挙前後は株価が乱高下する傾向があります。
これは過去の“中間選挙あるある”ともいえる、典型的な動きです。
短期の揺れに惑わされず、コツコツ長期投資を
2026年後半のS&P500を展望するうえで、足元の企業業績(EPS)は非常に堅調であり、AI関連需要を中心に、企業の成長がしっかりと数字に表れています。
マクロ金利環境や政治イベントによる短期的な不安要素はあるものの、投資家としては、こうした短期的な乱高下に狼狽して投資を中断するのではなく、企業の「稼ぐ力」の本質的な成長を理解したうえで、長期投資を継続していく姿勢が重要です。
鳥海 翔
株式会社Challenger代表取締役
FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資家
