若手指導者ウベルを切ることなく、そのまま続投させていたら、後藤はどうだっただろうか。RSCAフューチャーズ(U-21アンデルレヒト)でコーチを務めていたウベルは昨年1月、後藤をトップチームに上げて、経験を積ませていた。その1か月、後藤は公式戦4試合に出場(リーグ戦2試合1ゴール、カップ戦1試合、ヨーロッパリーグ1試合1ゴール)し、まずまずの結果を残した。その後藤が2月になってメンバー入りを果たせずにいると、ウベル監督はこう説明してくれた。

「ストライカー陣は2人体制を取っている。後藤がここ2試合、メンバーから外れたのはそのため。カスパー(ドルベリ)が負傷から戻ってきたので、ルーカス・バスケスと彼がうちのストライカーだ。しかし連戦の中で後藤が割って入ることもあるだろう。この1か月で2ゴール決めてくれたんだからね。とても満足している。君が案ずるまでもなく、彼はよくやってるよ(笑)」

 結局、ウベルの下で後藤は9試合にプレーできた。しかしレギュラーシーズンが終わると、アンデルレヒトがウベルを更迭し、ハシを招いたことで後藤はベンチに入ることすら厳しい状況に。昨季のプレーオフではアントワープ戦で先発して61分間プレー。1ゴールを叩き出したが、ハジの下ではこの時しかプレー機会がなかった。今季開幕2試合、ベンチ入りすら叶わないなか、アンデルレヒトはSTVVからベルタッチーニを獲得したことで、後藤は伸び盛りのいま、出場時間が必要と悟り、STVVで武者修行することを決意した。
 
 20歳の後藤は今季11ゴール。38歳のウベルはルーベンを経て、現在リーグ首位のユニオン・サン=ジロワーズの監督を務めている。後藤はまだ契約を残しているとはいえ、もう気持ちは離れている。アンデルレヒトはストライカーのタレント、指導者のタレントをみすみす逃してしまった。

 ベルギー、日本両国にとって、後藤の発言は大きなトピックであるうえ、保有元への決別宣言というデリケートな内容も含むため長文になったが、ベルギー記者団に語ったこのセリフが後藤の思いを簡潔に表している。

「(ウベル監督の下で)少ないチャンスでも自分は結果を残していたのに、それでも(アンデルレヒトは)信じてくれずにチャンスをくれなかったという思いが、自分の中で今日の“ああいう動き(喜びの発露)”になり、そういう気持ちにもなった」

取材・文●中田 徹
【動画】あわや乱闘のハプニング! 歓喜を爆発させる後藤啓介に、アンデレルヒトの元同僚が激しく詰め寄る!