「『お前は帰ってきたくないのか?』と言われたので『イエス』と言いました」

 クラブ広報がお茶を濁して最後の一言を訳さなかったため、後藤は「I said “Yes”」と付け加えた。いずれにしても、後藤のインタビューにはベルギーのテレビカメラも回っていたので、広報が訳さなかった言葉も最終的には拡散されていただろう。

「アンデルレヒトに戻る可能性はありますか?」の問いには「戻りたい気持ちは以前はありましたが、自分にチャンスをくれなかったクラブなので。こうやってチャンスをくれるクラブでしっかり結果を残しているので、(今はアンデルレヒトに)帰りたいという気持ちはないですね」と明確に否定。

 Keisuke, next season Anderlecht? というシンプルな英単語の羅列で真意を確認する問いには「カット、カット、カット(その質問はダメだから切り取って」と言いながら映像をチョキチョキするポーズをし、ベルギー人記者陣一同が笑いに包まれた。
 
 締めの質問は「(ゴールや勝利を)喜んだことについて、相手の選手が怒っていたようですが、それについてはどう理解してますか?」というもの。

「僕はアンデルレヒトのホームでは同じことをしてないです。ここはシント=トロイデンのホームだからサポーターも同じ気持ちです。シント=トロイデンの選手としてここで戦っているので、全然問題ないと思っています」

 しかも後藤はDAZN選出マン・オブ・ザ・マッチのインタビューで「フランケン監督は来季、ブンデスリーガで指揮すると噂されているが、あなたも一緒に着いて行きますか?」と問われ、「僕はもうベルギーリーグは卒業です。監督と同じクラブかどうかはわかりませんが、来季はドイツだと思います」と答え、瞬く間に映像が拡散された。

 こうして試合終了まもなく、ベルギーメディアは後藤のことを報じ、さらに日本メディアでも訳された。

「アンデルレヒトの選手たちは、後藤の過剰なセレブレーションに怒りを露わ。本人は『自分の心はただSTVVにある』」(ヘット・ニーウスブラット)

「喜びを爆発させた後藤、アンデルレヒトの選手から問い詰められる。フランケン監督は『ゴールを決めたら喜びを爆発させてもいいのでは?』」(スポルツァ)

 表現の仕方に是非はあるだろうが、後藤の気持ちには理解できる点が多い。そもそも私自身、「後藤が今季、アンデルレヒトに残っていたら、出場時間を稼げただろうか」とずっと思い続けていたからだ。
 ベルギー屈指の名門アンデルレヒトだが、リーグ優勝は2016-17シーズンが最後。17-18シーズンのスーパーカップを勝って以降、タイトルから遠ざかっている。

 育成の雄だけあって、多くのタレントを育てており、今季もアカデミー出身の選手がズラリとスカッドに並ぶが、不振が続くなか、勝利へのプレッシャーはとてつもなく高く、ある日本人選手が「アンデルレヒトはホームゲームでも容赦なくブーイングを飛ばすので、若手選手が可哀想」と語ったことがあるほど。監督のみならず、首脳陣も次から次へ変わっていき、クラブ&チーム戦略は一貫しない。

 アンデルレヒトは昨季、ドルベリ(現アヤックス)、バスケス(現ヘタフェ/期限付き移籍)のストライカー陣に、後半戦から後藤がトップチームに絡むようになったことで3人体制になった。しかし夏の市場でツベトゥコビッチ、ベルタッチーニを獲得したことで、ストライカーが5人まで膨らんだことがあった。その後、移籍・負傷者・不振によりアンデルレヒトはストライカーのやり繰りに苦労し、「STVVで好調の後藤を残しておけば...」という論調もあったが、STVVで2か月ノーゴールだった後藤は、アンデルレヒトなら数試合ゴールから遠かっただけで大騒ぎになっていたはず。しかも昨季終盤からアンデルレヒトの監督は現実主義者のハシ(今年2月更迭)だった。