対話型AI面接のイメージ

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 新卒や中途採用の選考で、AI(人工知能)の活用が広がっている。

 初期の選考だけでなく、最終選考までの全過程にAIを使う企業も登場。AIによって人事担当者の負担軽減や客観的な評価が期待されるとする。一方、応募者側からは評価基準の不透明さを指摘する声も上がっている。(林信登)

「公平な評価」

 「学生時代に頑張ったことは何ですか?」

 女性姿の「面接官」が、画面越しにこう問いかける。自宅などにいる応募者が「語学留学です」と答えると、「他の学生と英語で議論する際に工夫したことは?」などと質問を重ねる。会話に不自然な間はなく、話を聞きながらうなずくしぐさも見せる。

 これは博報堂DYグループ傘下の「Hakuhodo DY ONE」(東京)が来年4月入社の新卒採用で導入した「対話型AI面接」システムの一例だ。

 同社は3次選考でこのAI面接を実施。初期選考の書類審査やグループワーク、4次選考以降の面接を含む全過程でAIを使っている。公平な基準で評価のぶれを解消するのが狙いで、3次選考まではAIが合否の評価を提示する。

 一方、AIに不合格と評価された応募者については、人事担当者が面接映像などを確認し、「会社に合う人材」の可能性を感じれば次の選考に進ませている。4次選考以降はAIによる評価を参考程度にとどめており、担当者は「AIで基本的な能力を見極め、採用するかの最終判断は人の目で行う」と強調する。

 初期選考にAI面接を使うところは多い。

 同社が使うAI面接システムは、IT会社「PeopleX(ピープルエックス)」(東京)が昨年4月に開発。AIは、応募者の回答を踏まえて質問を続けるだけではなく、言葉の抑揚や顔の表情を分析し、論理的思考力や責任感を数値化。会話の要約や全文、録画映像とともに企業側に共有される。

 同様のシステムを提供する企業は他にもある。導入は少なくとも1000社以上に広がっている。

人の目通す

 活用が進むのは、採用業務の負担軽減が期待できるからだ。

 昨年6月に新卒と中途採用の1次面接で導入したIT会社「バルテス・ホールディングス」(大阪市)では、面接対応や日程調整が省略され、人事担当者の業務量が半分以下に減少。オンラインで、24時間受けられ、担当者は「日程が合わずに離脱する応募者が減った」と語る。

 ただ、AI受けのいい回答ができる人材ばかりでは個性が薄まる恐れもあり、来年4月入社の新卒選考からAI面接を導入している「西松屋チェーン」(兵庫県姫路市)は、必ず録画映像を確認し、考え方に個性を感じるような人は通過させている。同社は「人の目でしか伝わらない熱量もあり、個性を見落とさないようにしている」とする。

かみ合わず不安も

 一方、AIに評価されることへの抵抗感は少なくない。

 人材サービス会社「DYM」(東京)が1月に行った調査では、就活経験者855人の21%がAI面接で「熱意が伝わるか不安」と回答した。

 昨年2月に大手銀行の選考でAI面接を受けた同志社大の男子学生(23)は、AIとの受け答えがかみ合わない場面があり、ちゃんと評価されるか、不安を覚えた。面接は通過したが、「納得感はなかった」と振り返る。

 AI選考などの最新技術に詳しい岡崎浩二・東京都立産業技術大学院大特任教授は「何をどう分析しているのかを開示する方が納得感は得られやすい。応募者に良かった点や悪かった点を打ち返すことも有効。AIが学ぶデータに偏りがあれば、逆に偏向採用になる恐れがある。人の目を必ず通すなど、注意が必要だ」と指摘した。

書類添削など学生側も活用

 就職活動でのAI活用は学生側にも広がっている。

 就職支援会社「アイプラグ」(大阪市)の2月の調査では、来年に卒業する大学生ら500人の75・8%が就職活動に生成AIを活用。そのうち79・9%が、志望動機などを記入するエントリーシート(ES)や履歴書の添削に使っていた。

 AI活用でESの内容が均質化する中、ロート製薬(大阪市)は来年4月入社の新卒選考からESを廃止。入社後に「ミスマッチ」が起きやすい就活の構造に疑問を抱いたのが理由で、代わりに人事担当者と15分間対面で話す「エントリーミート」を導入した。

 同社は「対話で価値観を確かめ合うことを採用の出発点にしたい」とする。