【田代まさしインタビュー】「いまも依存症と懸命に向き合っています…」5度の逮捕を経た男が明かした、「薬物」と「盗撮」の意外な共通点
刑務所での気づき
「正直に言いますけど、明日はどうなるか分からない。だから『もう2度とクスリはやりません』と言うのはやめた。それが薬物依存症だと俺は理解しているから。少し前までは『JUST FOR DAY』、つまり今日一日だけのことしか考えられなかった。それが今は、『明日はちょっと自信ないです』と言えるようになった。これは大きな一歩だな、という実感はある」
5度の逮捕歴を持つ男の語り口は、どこか達観したようだった。間もなく古希をむかえる田代まさしは、「シャネルズ」や「ラッツ&スター」の一員として数々のヒット曲を飛ばすも、薬物使用で度重なる逮捕。その罪は重くのしかかり、芸能界の友人達からも匙を投げられた。人生を暗転させた薬物依存の葛藤と現状について、冒頭のように明かす。
2001年の覚醒剤取締法違反での逮捕を皮切りに、実に4度薬物事件で逮捕。さらに2000年には都内の駅構内での盗撮行為によって書類送検され、「ミニにタコ」発言で大炎上した。しかし、“懲りない男”は2015年にも再び盗撮の疑いで書類送検されるなど、計8年を3つの刑務所で過ごした過去を持つ。
2022年の出所から3年6ヵ月。薬物依存のリハビリ施設である「ダルク」のサポートなどを経て、現在は全国で薬物依存をテーマに公演を行うようになった。月に一度は自ら薬物検査を行うことを自らに課しているという。心の支えとなっている音楽活動も再開した。
4月30日には川崎市で自ら企画した「DooWop Carnival III & Soul Review Show」に出演予定である。過去2度はいずれも完売と盛況。今回は1000人規模の大箱だが、一般チケットはすでにソールドアウトだという。
薬物と盗撮。田代は二つの依存症とどう向き合い、改めて今何を思うのか。依存症と家族、自らの薬物遍歴、そして薬物の誘惑を断つことができなかった背景を聞いた。
「昔は『エッチする時はクスリがないとな』と、覚醒剤と性欲をセットで考える自分がいた。でも、このくらいの年になると不思議と『もういいかな』となる。2022年10月まで入っていた福島刑務所でそういう風に思えた。刑務所の中ではマスターベーションする気もそんなにおきなくてね。覚醒剤の誘惑から逃れられるという意味で、性欲が衰えたことは正直大きい。
ダルクの創設者である故・近藤恒夫さんも『死ぬ前にもう一回(薬物を)やりたい』と言ってたくらいだからね。近藤さんからは、『お前が逮捕された時の頬がコケた映像がすべてを物語っている。有名人でもこれだけ薬物がやめられないことを実証した。お前の存在自体が薬物依存の啓発だ』と言われたこともあったな(笑)」(田代。以下同)
衝撃だった息子からの言葉
依存症は一般的に、自身でコントロールできない状態を指すとも言われる。田代は家族との関係が何度も頭を過ったが、薬物を断つという選択には至らなかった。
「若い時、『やりたい時にどう克服するのか』ということをよく聞かれたんだけど、闘い方、向き合い方は教えてもらえるけど、辞め方は教えてもらえないのが薬物なんです。人によってやり方も違うから、これが正解というものはない。
それでも俺は、『つらかったことを糧に、どうその時を乗り越えるかっていう考え方をしなさい』と言うようにしている。じゃあ俺の場合、何が最もつらかったかというと、家族と一緒に住めなくなったこと。子供にも会えなくなったことだった。
元妻のお母さんからは、『あなたのせいで(マスコミが大挙して)洗濯物も干せなくなりました』と言われた時は堪えたね。でも結局、自分で欲望をコントロールできないからまたやってしまう。薬物をやっていることを1番知られたくないのは、やっぱり家族なんですよ。薬を使っている時は部屋に籠りがちになるし、家族と目も合わさないし、会話もなくなる。今では息子のタツヤと一緒にイベントに登壇することもあるけど、『ガラスを割って家に入ってきたり、奇行が目立った。なんとなく薬物をやっているんだろう。家族が壊れていくんだろう、という感覚はあった』と話していた時はビックリしたね。当時の俺は、自分の行動が変とは思ってないわけだから。そんなタツヤにも最近孫が生まれて、『孫のためにも6度目の逮捕をされるわけにはいかない』と抑止力になっている。
今の妻とは2011年に府中刑務所に入る前に籍を入れた。服役中も毎日速達で5枚の手紙を送ってきてくれて、何年も続けてくれた。それは本当に支えになった。こっちは毎日だと返信を書く内容が思いつかないから、頭を悩ませたけど(笑)。
今では取材や会食、イベントの際も妻が同行し、監視役になってくれている。以前、イベントの際にファンを装った売人から握手を求められ、薬物のパケと連絡先を渡してきたこともあった。一度捕まると、そういう誘惑に常に晒されるわけだから。再婚後も2019年に逮捕されたので結果的に1度は妻を裏切ってしまった形だけど、『もう家族は裏切れない』と思っていますよ」
田代が語った薬物と盗撮の共通点
一方で、娘との関係は長年修復することができなかったという。
「関係を築くのがめちゃくちゃむずかしかった。薬使ってエッチして、さらに盗撮でしょ。そういう直接的な性に関する犯罪だったから、娘からの目はそりゃあ厳しいものがあった。本人は口に出さないけど、学校などでも相当ツラい思いをしたんじゃないかな。
その関係が変化したのは、2024年に前妻が亡くなったことがきっかけでした。葬儀などのやり取りから関係が生まれ、少しずつ家族で会う機会が増えていった。今の妻が葬儀の段取りをしてくれたり、俺の子供たちともコミュニケーションをとってくれたことで、娘の態度も軟化していったのかもしれない。今では娘も俺を頼ってくれるようになり、それは本当に嬉しい。おじいちゃんという立場になり、『孫にいい格好を見せたいから、仕事もやらないと』と前向きになったね」
薬物と盗撮は異なる依存症だが、「共通項もある」と持論を展開する場面もあった。
「盗撮で捕まった時も、挙動がおかしいという理由で尿検査された。盗撮は『スカートをめくりたい』『パンツを見たい』という直接的な欲求よりも『撮る』という行為のドギドキ感やスリルを楽しんでいるというほうが、依存症としての要素は大きいと思う。薬物をやったときも『バレないだろうか』というスリリングな部分があるから、近いものがあるね。
私と同じように覚醒剤で逮捕された有名ミュージシャンと話す機会があって、彼が言うのは『相場の何倍もする値段で買っていた。高いけど、それは安全を買う意味もあった』と話していたな。スリルを楽しむという感覚とは違うけどね。まあ結局、彼もバレて捕まるわけだけど(笑)。
不思議なもので今は街を歩いていても、職務質問をかけられる機会がホントに減ったよ。前は1日2回とかバンバン職質をかけられて、飛行機や新幹線に何度も乗り遅れたくらいだったのに。たぶん警察官は、後ろめたいことがある人物は顔や挙動を見たら分かるんだろうね」
依存症について生々しく語った田代。続く後編記事『「いつか鈴木雅之の隣で…」5度逮捕された男・田代まさしが、「叶ったら死んでも良い」と語った夢』では、5度の逮捕、計8年の獄中生活を経た現在と未来について聞いた。
