穏やかな再婚生活を送っていたのに、6年ぶりに元妻と再会。「間違っていた」と泣かれて…「まだ間に合うのか」39歳夫の乱された心
【前後編の後編/前編を読む】新婚家庭に入りびたり、僕にやたらとなついてくる「義妹」がおかしい…妻はなぜ甘やかすのか 39歳夫が“わが子誕生の夜”にハメられて
田所祐汰さん(39歳・仮名=以下同)は、32歳のときに3歳年下の由希乃さんと結婚した。だが新婚生活が始まると、妻の7歳下の妹・美冬さんがたびたび家に出入りするようになり、祐汰さんに接近をはじめた。義妹の距離感、それを受け入れる妻に違和感を覚えた祐汰さんは、やがて由希乃さんから、美冬さんが“腹違いの妹”であることを知らされる。そして待望の娘が産まれたその日、祐汰さんが美冬さんを襲ったという事実無根の嘘をつかれ、家庭を失うことになった。
***
【写真を見る】「夫が19歳女子大生と外泊報道」で離婚した女優、離婚の際「僕の財産は全部捧げる」と財産贈与した歌手など【「熟年離婚」した芸能人11人】
子どもは祐汰さんの長女として出生届を出したものの、由希乃さんと子どもは実家から戻ってこない。それどころか離婚届が送られてきて、先方の弁護士が離婚を迫ってくる。調停、裁判も辞さない気持ちだったが、産後の由希乃さんを煩わせたくなかった。

「はめられた僕がバカだった。そう思うしかなかった。なにより由希乃が僕を信じてくれないのでは話にならない。こんなことってあるのかというのが本音でしたね」
それきり由希乃さんにも娘にも会わないまま離婚した。祐汰さんは自宅を出て、小さなアパートに越した。養育費だけは払うつもりだった。
「信頼している上司にはすべて話しました。話しているうちに泣けてきて。上司は僕を信用してくれた。『きみがそんなことをするとは思えない』と言ってくれた。別の部署の先輩も信じると言ってくれて。社内では急に離婚したことで、いろいろ噂も飛んだようですが、仕事には支障がなかった」
そのころ異動してきた5歳年下の瑠莉さんと一緒に仕事をすることが多くなっていたのだが、半年ほどたったとき瑠莉さんが「先輩って、ふっと寂しそうな顔をすることがありますね」とポツリと言った。噂、聞いてるのと尋ねると「まあ」と言葉を濁す。
「でも私は先輩のこと信じてますとニコッと笑って、それ以上追求はしなかった。彼女との仕事はとてもうまくいっていて、いいパートナーだった。そこから徐々に信頼関係を積み重ね、5年たったときには公私ともにパートナーになってしまいました」
結婚が怖い
だが結婚という形に踏み切ることはできなかった。深い関係になったとき、祐汰さんは、前の結婚の顛末をすべて正直に瑠莉さんに話した。瑠莉さんは絶句していた。
「その義妹さん、おねえさんに恨みがあったんじゃないかしらというんです。美冬は由希乃を絶対的な味方だと思っていたはずだし、恨みはないだろうと思いました。すると瑠莉は『じゃあ、おねえさんを取られた恨みが先輩に向いたとか?』と。それはあり得るかもしれないなと思いました」
瑠莉さんは意を決したように「先輩、結婚しましょう」と言った。そして次の瞬間、「私とじゃ幸せになれないかな」と照れたように笑った。
「僕は瑠莉が好きだったけど、結婚が怖かった。怖いんだよと言ったら、『じゃあ、怖くなくなるまで待つ』と。こんなにストレートに愛情をぶつけてくれる瑠莉を手放したらきっと後悔する。そう思いました」
もう一度、結婚にチャレンジしよう。そう思ってはいるのに、具体的に結婚への道が歩めない。由希乃さんと娘さんにちゃんと会ってきたらどうかと瑠莉さんに言われたが、それも怖くてできなかった。そうやってぐずぐずしているうちに半年が過ぎ、瑠莉さんからプロポーズされて1年近くがたってしまった。
「上司から瑠莉を異動させようと思うと話があったんです。上司には彼女とつきあっていることを話してありましたから。彼女、仕事ができるので別の部署から引きがある。今の仕事より向いているし、彼女の能力をより発揮できるはずだって。もちろん僕に反対はできませんが、彼女さえよければ結婚の話を進めたいと伝えました。それからすぐ彼女に、今度は僕からプロポーズさせてほしいと言ったんです。結婚と昇進が重なるのは大変だと思うけどと言ったら、どちらも最高にうれしいと彼女は大喜びでした」
突然、前妻が現れて
瑠莉さんの昇進と結婚は社内で同時に発表され、周りも祝福してくれた。いつの間にか祐汰さんの離婚にまつわる噂は消え、逆に「最初の結婚でひどい目にあった人」ということになっていた。噂なんてそんなものですよねと祐汰さんは少し笑った。
「新婚生活とはいってもふたりともめいっぱい仕事。でも週末は一緒に料理したり、映画を観に行ったりとメリハリのある生活でした。何より瑠莉と一緒にいると、子どものころのように自由な気持ちだった。言いたいことが言えて、ふたりで笑い合える。これが幸せというものなんだと痛感しました」
穏やかな日常生活が続く中、1年ほど前のある日、前妻の由希乃さんが突然、会社へ祐汰さんを訪ねてきた。外回りから戻って受付に彼女を見つけたとき、祐汰さんは思わず立ち止まって動けなくなった。何かを感じたのか振り向いた由希乃さんと目が合った。
「ふたりとも固まってしまって……。別れてから6年以上の月日がたっていたのに、気持ちはつきあっているときに戻っていた。由希乃は僕の前にやってきて、『私が間違っていた。ごめんなさい』と」
由希乃さんが涙ながらに語ったことは
近くの喫茶店に移動してふたりで向き合った。由希乃さんの目からぼろぼろと涙がこぼれていた。
「つい最近、義父が亡くなって、家の中で美冬の立場が微妙になった。義母はやはり美冬を心から愛してはいなかったから。そこで義母と美冬が口論となり、とうとう美冬が全部話したんだそうです。あのとき自分がしたことを。『私には子どものころからおねえちゃんしか味方がいなかった。だからおねえちゃんが結婚したら私はひとりぼっちになってしまった』と泣きながら義母を責めたようです。瑠莉が言うように、やはり美冬は由希乃を取られたくなかったんでしょう。しかもそこには複雑な気持ちがあったようです」
由希乃さんしか味方がいない。その由希乃さんはいつも優しかったけど、その優しさが「上から」だったと。あたかも何かを施すかのように、由希乃さんは美冬さんに愛を与えたというのが美冬さんの言い分だった。由希乃さんにそんな意識はなかった。ただ、母に疎まれていた幼い美冬さんがかわいそうだと思っただけだ。だが、それが美冬さんにとってはありがたいと同時に屈辱でもあった。だからきっかけがあれば、由希乃さんを苦しめたいという気持ちが心のどこかに巣くっていたのだ。
「由希乃が妊娠して、美冬は心が乱れたんでしょう。僕を陥れて離婚させようとした。ただ、由希乃が言うには、美冬は本当にあなたが好きだったのかも、ということでした。いずれにしても美冬を信じてやらなければいけないという由希乃のいつもの心のありようが、僕を排除することにつながった。あのときは何も考えられなかった、とにかく美冬を助けなければと思ったそうです」
「娘のためにやり直して」「再婚しちゃったんだよ」
由希乃さんは一気に話し、祐汰さんに頭を下げたそうだ。ようやくわかってもらえたと思うと体中から力が抜けた。
「娘はもうじき小学校に入る。会いに来てくれたらうれしいと由希乃は言いました。今さらと思ったけど、やはり娘には会いたかった。産まれたばかりの娘の柔らかさが手によみがえってきた。由希乃は写真を見せてくれました。由希乃にそっくりなかわいい子でした。でも会いに行っても父親だと思ってくれるかどうか……。怖いと正直に言いました。『私はあなたの悪口は一切言っていない。事情があって離れているだけと伝えてある』と。『私は今でもあなたしかいないと思ってる。今さらこんなことを言えた義理じゃないけど、娘のためにやり直してもらえないかしら』と由希乃は言いました。もう少し早く言ってくれればよかったのにと泣きたくなった」
再婚しちゃったんだよと祐汰さんは小さな声で言った。由希乃さんは息を飲んだが、「そうよね。あなたがひとりでいるとは限らなかった。ごめんね、忘れて」と言った。忘れてと笑いながら由希乃さんの目は濡れていた。
「それを見たらぐっときちゃって。僕が好きなのは由希乃なんだと、改めてわかってしまった。今まで封印してきた由希乃への思い、娘への愛情なんかが一気に体中からあふれて」
娘に会う日は改めて決めようと言って、その日は別れた。それ以来、祐汰さんの頭の中は由希乃さんと娘のことでいっぱいになった。
再会は瑠莉さんに言えない…
1週間後、彼は娘に会った。由希乃さんが「パパだよ」というと彼女は最初、母の後ろに隠れるように立っていたが促されて顔を覗かせ「パパ」と言った。それがかわいくて思わず近寄り、「長いこと会えなくてごめんね」と抱きしめた。
「パパは仕事が忙しくて、ずっといなかったんでしょと娘が言いました。そういうことになっていたようです。その日は3人で食事をしました。娘は大好きなアニメのことや、習っているピアノのことなどをずっとしゃべってた。『いつもはこんなにおしゃべりじゃないのよ』と由希乃もうれしそうで」
由希乃さんと娘に会ったことは、どうしても瑠莉さんに言えなかった。瑠莉さんなら「いいじゃない、たくさん会えば」と言うのはわかっている。だが、祐汰さんの「下心」が正直に言うことを妨げた。
「由希乃とやり直せないかと僕も思い始めてしまったから。瑠莉には感謝しているけど、僕が本当に愛しているのは由希乃と娘だとわかってしまったから。ただ、瑠莉に離婚してほしいとは言えない」
「きっかけ」を探す
瑠莉さんはまだ子どもはいらないという理由でピルを飲んでいる。だが勝手にピルをやめられたらどうしようと思うと、怖くてベッドで役立たなくなった。瑠莉さんは「疲れてるんじゃない?」と心配してくれたが彼を責めはしない。それがさらに祐汰さんを苦しめた。
「由希乃はもうやり直してとは言いません。僕ができる範囲で娘に会ってくれればいいと。でも会えば会うほど娘はかわいいし、由希乃への気持ちもよみがえる。今ならまだ間に合うんじゃないかと思いながら、瑠莉に離婚を切り出すなんてできない……」
義妹との不倫関係を疑われたところからすべては始まった。さまざまな嘘と、心の闇がおりなした長い期間のドラマのような話だが、祐汰さんの心は大きく由希乃さんに傾いている。
「ここで自分をごまかしたら、きっと後悔する。日に日にその気持ちが濃くなっています。あとはきっかけがあれば……」
おそらく今日も祐汰さんは葛藤しながら1日を過ごしているだろう。タイミングを逸しないようにと願わずにはいられない。
***
祐汰さんの心は、前妻と娘へと傾いている。だが、瑠莉さんが彼の決断を受け入れられるとは限らない。“前妻の妹”が引き起こした悲劇は、何の罪もない瑠莉さんをも苦しめようとしている――。その始まりは【記事前編】で紹介している。
亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。
デイリー新潮編集部
