「日本はAI敗戦国だ」佐々木俊尚氏が危惧する過去の失敗…『個人情報保護法改正』の懸念は

先週、政府が閣議決定したのは「個人情報保護法の改正案」。今の個人情報保護法は企業などが病歴や犯罪歴などの「要配慮個人情報」を取得したり、個人データを第三者に提供する場合、原則本人の同意を得ることが義務づけられている。
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松本デジタル大臣は「デジタル技術がものすごい勢いで進行している。いかにAIにたくさん正確なデータを学習させるかということが、特に国産のAIを開発していく上で非常に重要になっている」と国産のAI開発が重要課題だと述べ、法改正の必要性を強調した。
しかしXでは、「望んでないのに勝手に個人情報を提供するのは気持ち悪い…」「保護すると言いながら、実際に進めているのは利活用しやすさ」などの懸念の声があがっている。AI開発のための個人情報の利用はどこまでしていいのか?リスクはないのか。自民党の塩崎彰久議員と考えた。
■日本がAIで敗北した理由は「法制度」にあり?

今回の改正案の背景について、情報キュレーターの佐々木俊尚氏は「2005年に個人情報保護法が施行されてから、企業は『どこまで情報を使っていいのかわからない』と、ビッグデータの活用に消極的になってしまった。その間にアメリカや中国がAIで飛躍的に伸びた。これは日本がAIに敗戦した最大の理由の一つだ」と日本の過去の失敗を指摘した。
その上で、今後の展望について「これからは自動運転などの『フィジカルAI』が本番になる。このタイミングで法律ができるのは非常に良い。ただし、学習データの中で病歴などが名寄せ(特定)されてしまう『ブラックボックス化』の危険性をどう解消するかが課題だ」と、利便性とリスクの隣り合わせである現状を強調した。
■AI開発のために「本人の同意なく収集」が可能に

塩崎氏は、改正案について、「規制を緩和する部分と、今までより厳しくする部分のメリハリをつける法律だ」と説明する。「AIの性能を決めるのはデータの質に変わってきた。日本でも良いデータで学習するAIを作っていかなくてはならない」。
さらに「自ら公表している『要配慮個人情報』であれば、AI学習のために使っていいという形になる」と補足した。
弁護士の森亮二氏は「保護の方も強化されており、顔特徴量のような生体データや子供の情報、クッキーに紐づく情報についての規制強化、さらに課徴金の導入も提案されている。利活用と保護の両面で評価できる」。
しかし、懸念点として「間違いなく安全な統計になればいいが、データ集めた段階では名前も入っている生データ。それを削除して統計にする、あるいは学習モデルから個人の顔が出てこないようにできるのかという詰めがまだできていない」と語った
■デジタルタトゥーと向き合う「リテラシー」の重要性
SNSで発信する若者の現状について、リザプロ代表の孫辰洋氏は「20代の人はどこにどういう情報を渡しているか絶対把握していない。高校生などはほぼ認知していないが、さらにわからなくなるのではないのか」と指摘。
これに対し、塩崎氏は「プライバシーと利便性はトレードオフの関係にある。自分がどこまで情報をコントロールしないと安心できないか。規制、技術的制御、そして一人ひとりのリテラシーの3つを組み合わせることが大事だ」と主張した。
一方で佐々木氏は、「『リテラシーを高めましょう』というのはお題目としては良いが、現実的ではない。実際、クッキーの同意も皆めんどくさいから了承して終わっている。害が出てから悪い業者を罰するという『対処療法』的なやり方しかないのではないか」と、より実効性のあるルールのあり方を提起した。
(『ABEMA Prime』より)
