IWCが有人宇宙飛行向け腕時計を発表 Vastの商業宇宙ステーション「Haven-1」での使用を想定
スイスの高級時計メーカーIWCシャフハウゼンは2026年4月14日、ジュネーブで開催中の時計見本市「ウォッチズ&ワンダーズ」において、宇宙飛行に向けてゼロから設計・開発された腕時計「パイロット・ウォッチ・ベンチュラー・バーティカル・ドライブ」(Ref. IW328601)を発表しました。

この時計の最大の特徴は、一般的な腕時計に備わるリューズ(竜頭)がないことです。宇宙飛行士が船外活動(EVA)中に加圧宇宙服と厚手のグローブを着用することから着想を得ており、特許出願中の回転式ベゼルシステム「バーティカル・ドライブ」を通じ、ムーブメントの巻き上げや時刻設定など、全ての操作をベゼルの回転だけで行うことが可能です。また、機能の切り替えはケース側面のロッカースイッチで行います。
巻き上げには、内蔵ローターによる自動巻きとベゼルの手動回転のハイブリッド方式を採用。地球上だけでなく、微小重力・無重力環境でも安定して作動するよう設計されています。
約90分で昼夜が一巡する宇宙のための24時間表示
文字盤には、ミッションの基準時間を示す24時間表示が備わっています。宇宙船や宇宙ステーションは約90分で地球を1周するため、宇宙飛行士は24時間のうちに16回もの日の出と日の入りを経験します。こうした環境では通常の12時間表示では昼夜の区別がつかなくなるため、協定世界時(UTC)をベースとした24時間形式の表示が不可欠です。
センターの時分針は通常このミッション基準時間と同期しますが、時針を1時間単位で独立して動かすことで、地球上の任意のタイムゾーン(ホームタイム)を同時に確認することもできます。
ケースには、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つホワイトの酸化ジルコニウム・セラミックを採用しました。回転式ベゼルとケースバックには、IWCが独自に開発した素材「セラタニウム」が使われています。セラタニウムはチタンの軽さと構造的な強度に加え、セラミックに匹敵する硬度と耐傷性を兼ね備えた素材です。宇宙空間での激しい温度変動(直射日光下で100度超、日陰でマイナス150度)や放射線にも対応します。また、ストラップにはフッ素ゴム(FKM)製のラバーが採用され、断熱性と紫外線耐性を確保しています。
Vast社のテストで宇宙飛行認証を取得
この時計の宇宙飛行公式認証は、商業宇宙ステーション「Haven-1」を開発する米Vast社とのパートナーシップによって実現しました。2027年第1四半期の打ち上げを目指してHaven-1の開発が進むなか、カリフォルニア州ロングビーチの同社本社では、その運用環境を想定した広範なテストが実施されました。
検証項目は、ロケット上昇時の最大10Gに達する加速や激しい振動への耐性、圧力変化、さらにHaven-1の機内環境との素材適合性にまで及び、これら全ての厳格な基準をクリアしたことで、実戦投入に向けた認証を正式に取得しています。
IWCは航空用ツールウォッチの製造で90年の歴史を持ち、近年では「Inspiration4」や「Polaris Dawn」といった有人宇宙飛行ミッションにも時計を送り出してきました。ただし、これまで宇宙に持ち込まれたIWCの時計は、いずれも地球の航空用時計を改修したものでした。宇宙での使用を前提にゼロから設計された時計は、今回の「パイロット・ウォッチ・ベンチュラー・バーティカル・ドライブ」が同社初となります。
関連画像・映像



文・編集/sorae編集部
関連記事米Vastが商業宇宙ステーション「Haven-1」の統合作業開始 打ち上げは2027年第1四半期の予定米Vastが商業宇宙ステーション打ち上げに向けてテスト用の衛星を軌道投入米企業Vastが商用宇宙ステーション「Haven-2」を発表 ISS後継に名乗り参考文献・出典IWCシャフハウゼン - IWCシャフハウゼン、有人宇宙飛行向けツールウォッチ パイロット・ウォッチ・ベンチュラー・バーティカル・ドライブを発表(PR TIMES)IWC公式サイト - Pilot's Venturer Vertical Drive Vast - Haven-1
