Photo: Mayy Contributor/ Shutterstock.com

ガソリンが短期間で高くなりすぎた今、EVに走る気持ちはわかる。

アメリカの電気自動車(EV)市場は、波乱に満ちた1年を過ごしました。でも、ここにきてやっと、ちょっとだけ明るい兆しが見えてきたみたいですよ。

中古EV販売が12%増

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたAutomotiveのリポートによると、アメリカ国内の第1四半期における中古EVの販売台数が12%増加したとのこと。

トランプ大統領が最大7,500ドル(112万円)のEV税額控除を打ち切ったため、EVの価格は事実上急騰。それにより昨年末にはEV販売が急落していたことを考えると、これは喜ばしいニュースです。

ヒョンデ(現代)やKia(起亜)といった大手自動車メーカーは、税額控除の打ち切りを受けてEV販売台数が大幅に減少したと発表しています。また、2月には、フォードがリーマンショック以来最大の純損失を計上したと報告。同社のEV部門が2025年に48億ドル(7,670億円)の損失を出したのが足を引っ張ったとのこと。

こうした財務上の打撃を受けて、自動車メーカー各社はこれまでのEV投資計画の見直しや、一部車種の廃止、主要工場におけるEV生産停止などを発表しました。

税額控除打ち切りで動き出した中古市場

税額控除打ち切りは、EVを買いたい、でも高級車に手が届くほどの予算がない人たちに最も大きな影響を与えました。そして税額控除が終わってから数カ月がたった現在、中古EV市場は買い手市場へと変わりつつあるのかもしれません。

WSJは、リース満了後の中古EVが市場に急増しており、価格がかなり低くなっていると報じています。これは、アナリストが予測していたとおりの展開なのだそう。税額控除が2022年末に発効してから、2023年にかけてリース契約が急増。リース契約が満了を迎えて、返却されたEVが市場に出回り始めたというわけです。

おまけに、今年の初めに発表された調査によると、3年落ちの中古EVは、合計で10年間乗り倒した場合、新車や中古のガソリン車を同期間乗った場合に比べて維持費が安くなるといわれています。

ガソリン価格の急騰がもたらす追い風

最近の販売増の主な原因ではないかもしれませんが、短期的に見ると、ガソリン価格の高騰もEV市場にとっては恩恵をもたらしそうです。

2月28日以降、アメリカとイスラエルによる軍事攻撃が続くなか、イランが石油輸送の要衝であるホルムズ海峡をほぼ封鎖したことを受け、世界中でガソリン価格が高騰しています。アメリカでは、ガソリン価格が1ガロンあたり4ドル(1リットルあたり169円換算)を超え、マンハッタンの一部では6.99ドル(同295円)に達しているようです。

EVは、ガソリン車よりも地政学的な不安定さを乗り切るのに適しているのかもしれません。その好例として、3月にアメリカの自動車販売台数が急減した一方で、中国の自動車輸出は輸送上の障壁があったにもかかわらず加速しました。

これは主に、同国のEV産業が急成長していることに起因します。モルガン・スタンレーのアナリストは、ガソリン価格が1ガロンあたり4ドルの場合、ガソリン車よりもEVの燃料費の方が60%安くなると試算しています。

高止まりするガソリン価格と消費者への影響

自動車購入情報プラットフォームのCarEdgeによると、ガソリン価格が高騰した影響で、アメリカ国内ではEVへの関心が高まっており、戦争開始からわずか3週間でEVモデルのオンライン検索が20%増加したそうです。しかし、専門家の話では、ガソリン価格の高騰によって顧客が実際にEVを購入するようになるには、数カ月かかる見通しとのこと。

EV業界にとっては朗報だけど、消費者にとって悪いニュースになりそうなのは、ガソリン価格の高騰は想像以上に長引くかもしれないこと。

アメリカとイランの間で緊張が再び高まっていることを考えると、これから仮に恒久的な停戦が成立したとしても、ホルムズ海峡を経由する石油の流通と、世界のガソリン価格が正常に戻るには、数カ月かかりそうです。

高騰するのはガソリン価格だけではないんですよね。ガソリン価格高騰はそのまま輸送コストの上昇につながります。このまま石油危機が続けば、電気代も食料品も高くなります。もしかすると、EVに乗って、自宅に太陽光パネルと蓄電バッテリーを導入している人たちだけが、涼しげに今年の夏を乗り越えていくのかもしれません。

【こちらもおすすめ】
GIZMODO テック秘伝の書
1,650円
Amazonで見る
PR