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電車に乗っているとき、空いた座席を横取りされた経験はないだろうか。世の中には悪びれもせず堂々と割り込む輩も一定数存在しており、そのたび悔しい思いをさせられている人は少なくないはず。都心の会社に勤務する岸本敦さん(仮名・36歳)も、“席取りトラブル”に遭遇したひとりだ。
「平日の夕方、ラッシュアワーでした。車内は満席だったのですが、私の目の前に座っていたカップルが次の駅で降りる準備をしていたんです。その瞬間、私は心の中で『ああ、やっと座れる』と思いました」

◆空いた席に座ろうとしたら…

似たようなシチュエーションはどこにでもあり、日々当たり前のように遭遇するだろう。当然だが、『空いた席に誰が座るのか』というルールはどの路線も設けていない。しかし、目の前に立っている人が優先して座れる、というのが暗黙の了解だろう。岸本さんも同じように考え、カップルが立つのを安心して眺めていた。だが、想定外のことがその時に起こる。

「カップルが立ち上がった瞬間、隣に立っていた四十代ぐらいの女性がすばやく動いて、私が座ろうとしていた席を確保したんです。こうやって」

そう言うと、岸本さんはそのときの女性の動きを再現する。自分のバッグを席に放り、椅子取りゲームのように自分の腰を入れ席に座る動作を示してくれた。

「正直、『え?』って思いましたよ。だって、その女性の前の席も同時に空いたんですから」

◆「旦那の席」を確保するための行動だった

隣に立っていた女性の目の前の席も空いていたのだ。なぜわざわざ自分が座ろうとした席を横取りしたのか? その意味をすぐには理解できなかったという。

「女性の前の席に男性が座ったんです。そのときにわかりました。ひとりじゃなかったんです。隣に旦那が立っていて、旦那の前の席は空かなかったんですよね。二人で並んで座るために、女が僕の座るはずだった席を確保したんです。そこまでするのかよって唖然としました」

席に座った女性は悪びれた様子を見せることなく座り続けた。岸本さんは続ける。

「まるでそれが当然のような態度でした。バッグからスマホを取り出して、隣に座った旦那に話しかけて、僕の方なんて一切見ない。正直、めちゃくちゃ腹が立ちました。座れなかったからじゃないんです。みんなルールを守ってるのに、こういう図々しいことをやる精神にむかついちゃって。信じられますか?」

◆妻に対して強く言えない雰囲気が漂っていた

当時を思い出したのか、岸本さんの話し声が大きくなる。直接文句は言わなかったのか? と訊ねると、岸本さんは、「言えませんよ。それに、旦那さんがね……」と答える。

「隣に座っていた旦那さんが申し訳なさそうにしていたんです。その女性が話しかけても、俯いてちゃんと答えてなくて。きっと非常識な行為をわかっていたと思うんです。だったら注意しろよとは思うんですが、妻に強く言えない気持ちはわかるので……」

仮に正しいことでも妻には言えない。いや、正しいとわかりきっているからこそ言えない。その気持ちが痛いほど分かったので、岸本さんは我慢して車内で立ち続けた。

◆年配男性を無視して座った女性に対して注意したのは…

数週間後、またしてもその夫婦と同じ車両に居合わせたという。

「同じ路線の同じ様な時間でした。その時も満員だったのですが、状況が少し違って。僕は既に席に座っていたんです。でも、二人の顔は覚えてたから、『あ、あの時の夫婦だ』って気が付いて、様子を観察していたんです。しかも優先席の前でしたから」

車内で立つ女性の右側には旦那、そして左側には年配の男性が立っていた。仮に席が空いたとしても、心遣いが求められるシチュエーションだ。