「終わりだアナキン、私の方が有利だ」『スター・ウォーズ エピソード3』オビ=ワンVSアナキン、当初は別の決着だった
『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)では、ついにアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)が暗黒面に呑まれ、ダース・ベイダーと化す。灼熱の惑星ムスタファーでは、マスターのオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)と禁断の師弟対決。最終的には、オビ=ワンに飛びかかったアナキンが腕と脚を斬り落とされ、身体に火が移って悶絶するという、悲劇的な決着となる。
実はこのラスト、当初は別の展開となる予定だったという。プロデューサーを務めたリック・マッカラムが英Empireに語ったところによれば、元の案ではアナキンとオビ=ワンが溶岩流のそばに着地し、そのまま戦いを始めるという流れだったそうだ。
そこでアナキンがオビ=ワンの「武装を解除」、つまりおそらくはオビ=ワンからライトセーバーを手離させ、「彼の喉をつかむ」展開だった。そしてアナキンはオビ=ワンの首を斬り落とそうとするのだが、防衛のためにオビ=ワンがライトセーバーを(フォースによって)手中に戻す。その際に、アナキンの腕と脚が切断させる、というものだったという。
しかし、ジョージ・ルーカスがこの決着を好まず、別案を求めたのだそうだ。「オビ=ワンは、自分が始めたことをやり遂げる気になれない」「彼はもう、十分にダメージを与えたと思っている」と、マッカラムはオビ=ワンの心情を代弁している。
アナキンの攻撃を防ごうとする形で彼の身体を切断してしまうという展開に大きな変わりはないが、本編ではこの案とは違う結末が用意された。オビ=ワンは溶岩流を移動する足場から岩場に飛び移る。「終わりだアナキン、地の利を得た」。
この最も重要なシーンで登場する「地の利」の訳は、ファンの間でその意味が議論されたものだ。原語では“I have the high ground"。これは文字通り“高い位置”という意味から転じて、“優位な状況”を示す言葉だ。ここまで縦横無尽の激戦を繰り広げてきたのだから、今更岩場に登ったところで戦況が変わるわけでもないし、オビ=ワンも本気でそうは思っていないだろう。しかも、実際のところオビ=ワンとアナキンの間に高低差はほとんどない。
そこで解釈のひとつには、オビ=ワンはあえておどけたような言葉をいい、かつて互いに冗談を言い合っていた和やかな関係を取り戻そうとしていた、または少なくとも思い出そうとしていた、というものがある。そう考えると、両腕を広げる仕草もわざとらしいし、セリフを言った後のオビ=ワンも僅かに微笑んでいる。
この言葉によって、アナキンが矛を収める可能性などないことも、やはりオビ=ワンは分かっていただろう。そしてこの言葉は、心を闇に呑まれたアナキンには逆効果だったかもしれない。また「自分の方が有利だ」と言い、見下してくるオビ=ワンへの憎悪を募らせただけだっただろう。「僕の力をみくびるな!」と、敵意の目で睨みつけるアナキン。最後の冗談も通じなかったことを知ったのか、無念のオビ=ワンは「もうよせ」と力無く警告する。
もはやアナキンを、ベイダーを止める術は、なくなっていた。アナキンは雄叫び上げてオビ=ワンに飛びかかる。熟練のジェダイ・マスターはタイミングを合わせ、愛弟子を斬る。それは、戦闘としてはこの上なく的確な対処だったが、ひとりの人間としてはこの上なく残酷な対処だった。転がり落ちたアナキンを次に見た時、彼の身体からは左腕と両脚がなくなっていた……。
この決着について、もしも初期案のまま、つまり首を斬られそうになったオビ=ワンがライトセーバーを引き戻した際にアナキンを斬る展開となっていたら、“I have the high ground"のセリフのやりとりも誕生せず、もっと刹那的な事切れになっていた事だろう。クライマックスに向けた緊張感の張り方も、また違った強度になっていたはずだ。ちなみに「地の利を得た」の日本語訳は、現在では「私の方が有利だ」に変更されている。
Source:Empire April 2024, p.69
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