フランスのラグジュアリーファッションメゾン、シャネル(Chanel)は、1月2日、新キャンペーンをYouTubeで静かにローンチし、テレビ広告スポットでも宣伝している。

若い顧客向けの楽しさあふれるキャンペーン動画



「チャンスの新キャンペーン(The new Chance campaign)」というタイトルの30秒の動画は、シャネルのもっともアイコニックなフレグランスコレクションのひとつ、チャンス(Chance)の遊び心にあふれたカラフルな広告だ。フランスのジャン・ピエール・ジュネ監督によるこの短編は、古典的なキャンペーンをアレンジし、Z世代をターゲットにしていると思われる。ジュネ監督は、2009年に女優のオドレイ・トトゥ氏が主演したシャネル N°5(Chanel N°5)の短編ムービー『トレイン・ドゥ・ニュイ(Train de Nuit)』を手がけている。チャンスの動画にはモデルのアミア・ミラー氏、ズザ・ブリック氏、マチルダ・グヴァリアーニ氏、メイティ・フォール氏が登場。4人はそれぞれチャンスの4つの香りを表しており、音楽デュオのイベイーがキャンペーンのオリジナル曲を担当した。

この動画のキャプションには「ある夜、友情で結ばれた4人の若い女性がゲームで運試しをする。楽しくて気まま。どの香りも個性的。活動的なチャンス オー フレーシュ(Chance Eau Fraîche)、繊細なチャンス オー タンドゥル(Chance Eau Tendre)、大胆なチャンス、そして前向きなチャンス オー ヴィーヴ(Chance Eau Vive)」とある。現時点では視聴回数は81.3万回であり、シャネルのインスタグラムでもこのキャンペーンは進行中である。

シャネルの1月22日付け顧客向けメールで宣伝しているように、キャンペーンに付随してモバイルアプリゲーム「チャンス・ザ・ゲーム(Chance The Game)」もリリースされており、Apple StoreとGoogle Playでダウンロードできる。対象は4歳以上で、没入型でカスタマイズ可能なエクスペリエンスを提供、プレイヤーは「チャンスのコースに沿って、ドロップやツバキを集めながらできるだけ遠くまで進んで」スコアを上げるゲームとなっている。




若い世代を狙うラグジュアリーブランドの動き



ラグジュアリービューティブランドが若い消費者を惹きつけようと試みるのは新しいことではなく、シャネルも例外ではない。同社は、2022年1月、D2C eコマースサイトとアルタビューティ(Ulta Beauty)で、N°1 ドゥ シャネル(No. 1 de Chanel)というクリーンビューティラインを立ち上げた。チャンスの展開と同じように、シャネルはYouTube広告数本でこの環境に優しい製品ラインを宣伝し、美容の「新世代」を先導するというアイデアをアピールした。また、2023年5月には2022年の年間売上高が17%増加したと報告しており、美容とフレグランスのカテゴリーにおける堅調な売上と新製品開発が評価されていた。この記事のためにシャネルにコメントを求めたが、返事はなかった。

調査・コンサルティング会社のラグジュアリー・インスティテュート(Luxury Institute)のCEO、ミルトン・ペドラザ氏は「多くのラグジュアリーブランドは、現実逃避を強調して、まったく新しい世界に向かう傾向がある。それがメタバースが意味することだ」とGlossyに語る。「(チャンスの広告は)遊び心があり、楽しく、意欲的で、あのようなハッピーな世界にいたいという気持ちにさせる。(モデルは)製品を手にしており、製品が手頃な価格なのも見てわかる」。ペドラザ氏は、手頃な価格で魅力的な製品が増える傾向にあると述べている。Z世代の消費者はちょっとした贅沢品、特にフレグランスに依然として積極的に支出している。シャネルのクラシックなチェーンハンドバッグの価格は約3500ドル(約52万円)からだが、チャンスフレグランスの価格はサイズにより100〜165ドル(約1.5万〜2.4万円)である。

若い世代がラグジュアリー製品に接するようになるにつれ、彼らの欲求は高まっている。ニールセンIQ(NielsenIQ)のデータによると、Z世代の消費者の61%が高級美容製品を購入しており、高級スキンケアやヘアケア製品に対する支出額がミレニアル世代を上回っているという。ペドラザ氏によると、Z世代を魅了しているヘリテージブランドは、ブランドメッセージにおいて引き続き信頼性を優先すると同時に、若いラグジュアリー消費者と彼らの憧れの製品への欲求に関与し続ける必要があるという。

Z世代へのリーチに最適なYouTube



ペドラザ氏は、若い消費者がいる場所で彼らと関与することが重要だと言う。12月のYouGov調査のデータによると、YouTubeはZ世代のあいだでもっとも信頼されており、もっとも人気のあるソーシャルプラットフォームとなっている。

プリサイスTV(Precise TV)とジラフ・インサイツ(Giraffe Insights)の調査によると、Z世代はYouTubeを利用し続けており、これまで以上にYouTube広告に関与しているという。YouTubeは、2023年8月の調査で10代の10人に6人がYouTube広告を飛ばさずに見ていることが判明した後、2023年第2四半期の広告収入が4.4%増加したと報告している。

「YouTubeやテレビで誰かをターゲットにするのがこれほど容易になったことはない。非常にインタラクティブなので、これはとても効果がある」とペドラザ氏。「(広告が)煩わしいと感じる人もいるだろうが、ほとんどの人は気にしていない。なぜなら、(広告なしのオプションと比較して)ストリーミングプラットフォームの利用にそれほど金を払わなくてすむからだ」。

同氏は次のように付け加えた。「今後も、高度にターゲットを絞った、高度にパーソナライズされた広告が見られるだろう。そして、ラグジュアリーブランドは対象の消費者にアプローチするためにそのような広告をさらに活用するだろう」。

[原文:With new Chance ad campaign and game, Chanel targets Gen Z]

TATIANA PILE(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)