【最新モデル編】キャリア30年のオフロード乗りが心打たれたSUV・クロカン四駆
SUVがスタンダードなカテゴリーとなったことは、ある意味で自動車メーカーにとっては難しい局面となっていると言えます。かつてのSUVはやがてラダーフレームを捨て、ライトクロカンというカテゴリーを経て、現在のSUVへと進化してきました。
しかし、今やクロスオーバーと区別するラインはボディサイズだけとなっている感があり、ますます商品企画が難しくなっているのではないでしょうか。そんな中で、SUVの商品力のひとつとなっているのが「悪路走破性能」、つまりオフロード性能です。
あの腰高の箱形形状で、いかにオンロードを快適かつスポーティに走れるかという性能を追求してきたのが、SUVのこの20年。しかし、世界中の人の間で、自然回帰へのライフスタイルが再び広まっている中、SUVのオフロード性能も再び注目を集めています。
クルマのメカニズム、セッティングで言えば、オンロード性能とオフロード性能は相反する部分があります。その相反するものを解決に導いたのが、トラクションコントロールやテレインセレクトなどの電子デバイスです。
今回は、こうした電子デバイスなどの完成度も考慮した上で、現在発売されているクルマのなかから、筆者が欲しいと思うSUVを3台選びました。
e-BOXERが気持ちいい!ドライビングを楽むなら「フォレスター」
世界でも稀な水平対向エンジンメーカーとして、多くのファンを惹きつけているスバル。
かつてのような不等長ピッチエキゾーストマニホールドを採用していた頃の、ドロドロとした排気音はなくなってしまいましたが、日常ではボクサーエンジンを意識せずに乗れるのは、今のスバル車のいい部分なのでしょう。
そのスバルを代表するSUVが「フォレスター」。特に僕が気に入っているのは、「X-BREAK」というグレードです。
スポーティな配色と、アウトドアレジャーでの使用を意識した装備は、イマドキのアウトドアアイテムのような機能美を持っています。何よりも、2.0L直噴ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e-BOXER」の気持ち良さは抜群です。
このハイブリッドシステムは環境性能を最優先したものではなく、モーターを新たな過給器として、気持ちのいいドライブフィールを追求したもの。特にSI-DRIVEをスポーツモードにした時のモーターアシスト制御は、ワンディングでのシフトチェンジやアクセルワーク、ブレーキングが苦手な人でも気持ち良く走ることができます。
フォレスターの4WDシステムは、ボクサーエンジンをコアとするシンメトリーな構造が特徴ですが、フォレスターの「X-MODE」は、各タイヤへの駆動トルクの配分や出力のコントロール、ブレーキングなどを自動制御してサポートします。
この電子デバイスには「スノー&ダート」と「ディープスノー&マッド」の2つのステージが選べるテレインセレクトに加えて、ヒルディセントコントロールが内包しています。
操作は至極カンタンで、センタートンネル上にあるダイヤルを軽く回すだけ。よく「切り替えたら、何か差が出るの?」と言われる方がいますが、これが結構変わります。
特にディープスノー&マッドでは、ブレーキLSDを強めにかけることで、普通ならノーマルタイヤではスタックしてしまうような路面でも、危なげなく走破できるのには驚かされました。
また、電子デバイスがドライバーの知らないうちに利いている…のではなく、適度に「いま介入して利かせていますよ」というのを、ドライバーに知らせてくれるのが、安心感に繋がっている気がします。
最低地上高は220㎜と十分で、オフロード走行に重要な車体の対地障害角(3アングル)も、十分に確保されています。ランドクルーザーのようなクロスカントリードライブは無理かもしれませんが、日本でありがちな路面の荒れた林道などは難なく走ることができます。
ハイブリッドSUVでありながら、価格も約300万円とお値頃。これで燃費が15km/Lほど走ってくれると、もはや申し分のないクルマです。
トヨタが北米市場を狙っただけあって作りにソツがない「RAV4」
かつてのライトクロカンというカテゴリーを生み出し、現在のSUVの礎を築いたのがトヨタ「RAV4」です。現行型は初代から数えて5代目にあたるモデルで、4代目モデルは日本では販売されませんでした。
現行型はいわゆる“トヨタUSA顔”で、日米共に人気を博し、さらにクルマ自体のコンセプトも都市型からオフロード寄りに変更。全体的にアクティブなイメージに振っています。これは北米で「オーバーランド」といった余暇のライフスタイルが流行し始めていたことも背景にあります。
実際に、グレードラインナップにはオーバーランドを意識した「アドベンチャー」や、特別仕様車の「アドベンチャー・オフロードパッケージ(北米ではTRDオフロードというカタログモデル)」といったものがあります。
昨今のカスタム市場では、RAV4に本格的なオフロードパーツを装着して、ルーフラック、ルーフテントを載せたオーバーランダースタイルが流行中です。
現行RAV4の注目すべき点は、「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と名付けられた4WDシステムです。
各タイヤへの駆動力配分を電子制御で行う、いわゆるアクティブトルクスプリット式4WDですが、コレはひと味違います。一般的には前後輪の差動などを検知して前輪後輪への配分制御を行うのですが、ダイナミックトルクベクタリングAWDは前後輪への配分制御に加えて、後輪左右の配分制御も行うのです。このため、シーンを問わず非常にスムーズなハンドリングを実現。ダートなどでは、まさにオン・ザ・レールで走ってくれます。
さらに、フルタイム4WDに見られる2WD走行時の駆動損失を排除。前輪後輪の各ドライブシャフト上にドグクラッチを設けて、必要のない時の回転をカットしています。これにより、フルタイム4WDの弱点であった燃費低下を防ぐことに成功しています。
さて、ダイナミックトルクベクタリングAWDに加えて、ランドクルーザーで定評のある「マルチテレインセレクト」をガソリン車に標準装備。「ロック&ダート」と「マッド&サンド」を選択すると、ステージに合わせたエンジン出力やブレーキなどを統合制御する電子デバイスです。
このデバイスはフォレスターのものよりも、さらに1歩踏み込んだ制御プログラムが採用されており、これまでは直結式4WD(前後輪のドライブシャフトに差動制限装置がない4WD)でなければスタックしてしまうような場所でも、瞬時にクリア。まるで、クロカン4WDのような走りを見せてくれました。
とにかく、すべてにおいてソツのない作りを見せているRAV4 。キャンプなどのアウトドアレジャーに行きたいけど、どんなクルマを選んだらいいか分からないという人には、まず間違いのないモデルだと思います。
ちなみに、アドベンチャー・オフロードパッケージは、アドベンチャーの最低地上高200㎜よりもさらに10㎜高い210㎜を実現。225/60R18サイズのタイヤを採用することで、さらなる悪路走破性を備えています。
新時代の三菱を象徴する「アウトランダーPHEV」
三菱は「パジェロ」や「ランサーエボリューション」で一時代を築き、かつては“四駆王国”と言われたメーカーです。筆者も両モデルを所有していましたが、生活に彩りを与えてくれる実に楽しいクルマでした。
しかし、その後に様々なことが続き、なんとなく魅力的なクルマがない状態に。ファンとしては三菱車を買いたいけれど、欲しいモデルがないなぁと感じていました。唯一、アウトランダーPHEVだけは気になってはいましたが、実用的なエコなSUVとは思いながらも、いまひとつ決定打になる何かがなかったのです。
しかし、昨年末に登場した3代目は、私たちユーザーを驚かせるに十分な魅力を備えていました。
まずデザインですが、これまで通り、三菱顔「ダイナミックシールドデザイン」をコアに、サイドライン、リアビューを再構築。従来モデルよりもダイナミックシールドが車体全体に馴染んだものとなり、2トーンカラーの追加で選択肢も幅広いものになりました。
新型の魅力は、まず日常での運転のしやすさと乗り心地の良さにあります。初めて乗った時、電池をたくさん積んだPHEVのサスペンションとは思えない脚の動きに、猛烈に感動したものです。また前54:後46という若干前寄りの荷重バランスにセッティングされていることで、ナチュラルな操舵感とスムーズな回頭性を見せてくれます。
クルマはモーターで動いていますが、旧型と比べると“電気感”が薄く、まるでエンジン車を運転しているような自然さに好感が持てます。もちろん、モードを変えてモーターが発揮する“ロケットダッシュ”を体感することも可能です。
しかし新型アウトランダーPHEVの本当の魅力は、オフロードを意識した4WDシステムにあると言っても過言ではありません。ツインモーターを前後別々に駆動させる4WDに、統合制御システムである「S-AWC」を融合。特にS-AWCの進化は著しく、同車に新次元の走る魅力を付加しています。
テレインセレクトは他車同様にダイヤル操作で行いますが、モードはなんと7つ。「ノーマル」「パワー」「エコ」に加えて、「ターマック」「グラベル」「スノー」「マッド」の4つの路面別モードを設定しています。こんなにあって、違いが出せるのかと思ったのは杞憂。
例えば、グラベルは左右輪の駆動トルクに差を付けて配分することで、スリッピーな路面でもまるで無限軌道車のようなクイックな旋回を可能にし、狙ったラインを逃がさないオン・ザ・レール感を実現しています。
ではマッドはというと、あえて直結4WDのような駆動トルク配分を行い、ブレーキタッチもリニアな方向に制御。まるで往年のパジェロや三菱ジープをドライブしているような、電子制御車とは程遠い楽しさがあります。これを235/60R18のオンロードパターンタイヤで実現しているのですから、やはりツインモーター式の4WDはおそるべしと言えるでしょう。
しかも、今なら購入にあたってエコカー補助金制度が国、地方自治体とも使えるので、500万円オーバーのプライスながら、かなり身近になるはず。デザインについては好き嫌いもあるところですが、PHEVであることを考えれば、非常に魅力的な1台だと思います。近未来のクルマには、楽しさという点で不安を覚えるところもありますが、それを払拭してくれるSUVです。
