クラブワールドカップ決勝で、鹿島はレアル・マドリーと好勝負を演じた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 2013-14シーズンのチャンピオンズリーグ決勝、マドリード・ダービーを思い出す試合だった。ボールを持つチームと、ボールを持たれるチーム。90分の試合はイーブンでも、延長戦に入ると、残った体力の差が大きくなる。当時レアル・マドリーと対戦したアトレティコ・マドリーは、1-1で堂々と90分を戦ったが、延長戦は力尽き、1-4で敗れた。
 
 そして、2016年クラブワールドカップ決勝。
 
 見事なハードワークで戦い抜き、90分を2-2で終えた鹿島アントラーズだが、さすがに延長では足が止まった。2-4で惜敗。戦いの舞台は異なるが、その姿は3年前のアトレティコ・マドリーに重なって見えた。ここまで競るとは思わなかった。本当に健闘したと思う。試合中は「すごいな鹿島」という気持ちばかりが、何度も沸いてきた。
 
 一方、冷静になって試合を振り返ると、印象的だったのは、52分に鹿島が2-1で逆転した後の数分間だ。
 
 レアル・マドリーはMFカゼミーロを最終ラインに下げて3バックに変形し、両サイドバックのマルセロとカルバハルを早いタイミングで、高い位置へ送り込むようになった。その効果が表れたのが、56分のシーンだ。
 
 カウンターからカルバハルが右サイドをかけ上がり、ヴァランからロングパス。鹿島は左サイドハーフの柴崎が下がってマークしたが、さらにカルバハルはベンゼマとのワンツーで突破。この技術、スピード、身体能力に長けたスペイン代表右サイドバックの飛び出しに、柴崎は一歩遅れを取り、スライディングでプレッシャーをかけたが、危険なグラウンダーのボールを折り返された。
 
 もっとも、鹿島も中央をしっかりと固めており、この折り返しは、難なく西がインターセプトしている。問題は、その後だ。
 
 西はボールをつなごうとしたが、他の選手が動いていない。西は周りを探した後、相手に寄せられ、いちばん近くにいる昌子の前にパスを出したが、昌子は反応せず。パスミスを回収され、レアルの二次攻撃になった。
 気になるワンプレーだ。昌子とすれば、攻める気満々のレアルに対し、うかつに出ると危ない、というセンサーが働いただろう。つなぐのはリスクが大きいエリア。西には簡単にクリアしてほしかったはず。
 
 逆に、西はいつも通りにやろうとした。残り時間は35分ある。フリーでボールを奪えた。打たれ続けるには長すぎる。西の判断も間違いとは言えない。
 
 そもそも攻める気満々の全力レアルが、どれくらい恐いのか? どこまでならリスクを犯せるのか? そこが未体験ゾーンだ。柴崎がカルバハルに置き去りにされたとき、未知の生物が目の前に迫ってくる、そんな感覚があったのではないか。試合巧者の鹿島といっても、経験していないものには、どう対応していいのかわからない。慎重になる者、変わらない者に分かれた。
 
 そして2分後、58分の場面だ。カルバハルが中から外へ走り抜け、左サイドバックの山本脩斗を引き出すと、山本と昌子の間に空いたスペースへ、バスケスが、やはりベンゼマとのワンツーで侵入。柴崎はここでもう一度置き去りにされ、2ボランチも、モドリッチとクロースへの意識が強く、後ろをカバーできず。抜け出したバスケスを、山本と柴崎が倒したPK判定は、妥当なものだった。
 
 あの鹿島が、一瞬ふわっと戸惑った。そうは言っても、わずか5分程度のこと。ここを凌げば、レアルの圧力に対して修正し、守備のリズムができたはず。それが鹿島であるし、実際に2-2となった後は、柴崎をボランチへ移し、身体能力の高いファブリシオを2トップに入れた石井正忠監督の采配もあり、試合が落ち着いた。
 
 本当に、あの5分が勝負だった。凌いでいれば、どうなったかはわからない。しかし、凌がせてくれなかった。それもまた、レアルだ。
 
 鹿島にとって、この経験は先につながる。少なくとも次に戦うレアルは、未知の生物ではないのだから。

文:清水英斗(サッカーライター)