米小売 ターゲット が水着で仕掛ける「夏のフルコーディネート」戦略

記事のポイント
ターゲットは水着を単なる季節商品ではなく、「夏のフルコーディネート」戦略の中心に据えている。
自社限定コラボを通じて、Z世代向けのトレンド性、SNS拡散、パーソナライズ需要を取り込んでいる。
生成AI「ターゲット・トレンド・ブレイン」を活用し、SNSや購買データを分析することで、水着の商品開発スピードを強化している。
米小売大手のターゲット(Target)は、水着を単なる水着販売にとどまらず、より幅広い商品を販売するために活用している。同社はこのカテゴリーを、ビキニやワンピースタイプ、カバーアップに加えて、サンダルブランドのハワイアナス(Havaianas)、アクセサリー、日焼け対策製品まで含めた夏のフルワードローブの一部として打ち出している。
しかし2026年のターゲットの水着事業への注力は、より大きな事業戦略の一環でもある。すなわち、選択的消費(嗜好品・非必需品)カテゴリーで業績が振るわなかった時期を経て、自社のマーチャンダイジング力を改めて示そうとしているのだ。
第1四半期決算でアパレル不振、スイムは戦略の要に
5月28日に発表されたターゲットの第1四半期決算では、純売上高は254億ドル(約3兆8100億円)で6.7%増、既存店売上高は来店客数の増加を背景に5.6%増となった。
ただし、CEOのマイケル・フィデルケ氏は決算説明会で、家庭用品とアパレルの売上は2024年水準を下回ったままだと述べた。一方、ビューティーや食品、飲料、おもちゃやエンターテインメントを指す「Fun101」などのカテゴリーは成長をみせた。
ターゲットにとって、水着は同社の幅広いマーチャンダイジング戦略が実際に形になる場となっている。このカテゴリーはプライベートブランド、タイムリーなコラボレーション、そしてカバーアップからサンダル、日焼け対策商品といった関連商品を組み合わせており、同社は水着を季節的な定番カテゴリーではなく、夏のフルコーディネートを提供するビジネスとして扱うことができている。
「フィット感はどのカテゴリーでも重要だが、水着ではそれ以上に重要だ。トレンド、品質、フィット感、そして価格の組み合わせがターゲットらしさとして表れる。それが我々の勝ちパターンだ」と、ターゲットのデザイン担当シニアバイスプレジデント、ジーナ・フォックス氏は語る。
自社ブランドとコラボで多面的に攻める
ターゲットは、自社ブランドを通じてさまざまな切り口から水着商品を提供している。2018年に立ち上げられたワイルド・ファブル(Wild Fable)の水着は、若い顧客に向けた、スピード感のあるトレンド主導型ブランドだ。
5月の第4週ごろからは、同ブランドのリングディテール付き水着にチャーム(飾り)を加えられる「ビキニ・バー(Bikini Bars)」によるパーソナライズもはじまった。同じく2018年に設立されたシェイド&ショア(Shade&Shore)は、テクスチャー、ビーズ装飾、トロピカル柄など、より上質なディテールが特徴だ。
同社はさらに、インフルエンサー主導のローンチやコラボレーションにも力を入れており、5月末にはソリッド&ストライプド(Solid & Striped)とのターゲット限定コレクションをスタートさせた。ソリッド&ストライプド側は、ハイサマー期に向けて、より洗練されたリゾートウエア寄りの視点を加える役割を担う。
ソリッド&ストライプドにとって、このパートナーシップの魅力は全米規模のリーチにある。「夏は我々のシーズンであり、ターゲットはより幅広い顧客にファッションを届ける刺激的なブランドコラボレーションで知られている」と、ソリッド&ストライプドのCXO、ミシェル・ガイルズ氏は語る。
「歴史的に見ると、ソリッド&ストライプドの顧客の大半は東海岸に住んでおり、当ブランドをオンラインで購入してきた。今回のコラボレーションは、ソリッド&ストライプドを全米の店舗に持ち込み、初めて当社を知る顧客に届けることで、リーチに新たな次元を切り開くものだ」。
米ファッション業界紙のWWDが2021年に報じたところによると、売上を公表していないソリッド&ストライプドは、売上構成のおよそ60%がD2C、40%が卸売だという。
ガイルズ氏によると、ソリッド&ストライプドは今回のコレクションを、ストライプ、シンプルなシルエット、テクスチャーのあるファブリック、コーディネート提案といった、ブランドを象徴するコードに絞り込んで仕上げたという。「シンプルさ、汎用性、そして遊び心のバランスを取っており、まさにソリッド&ストライプドらしい仕上がりだ」と彼女は述べた。
ターゲットはまた、季節カテゴリーをさらに盛り上げるため、SNS主導のパートナーシップも活用している。水着分野で、フォックス氏は、最近のワイルド・ファブルと、デメトラ・ディアスとのカプセルコレクションを、若い顧客にとって「サプライズ」となる瞬間として挙げた。
デメトラ・ディアスはZ世代のファッションクリエイターで、インスタグラムで110万人、TikTokで440万人のフォロワーを持つ。1点あたり18〜25ドル(約2700〜3750円)のこのコレクションには、花柄、ギンガム、ストライプ、リバーシブルのドット柄ビキニが含まれる。
ターゲットの商品ページを見ると、いくつかのスタイルはこの1カ月でオンライン上で数千点単位で売れており、なかにはリバーシブルのドット柄ビキニトップが6000点以上売れているものもある。同社の内部声明によると、売上は「期待を上回っている」という。
より広い視点では、ターゲットのエグゼクティブバイスプレジデント兼チーフ・マーチャンダイジング・オフィサーであるカーラ・シルベスター氏は、決算説明会で、最近のパーク(Parke)およびローラーラビット(Roller Rabbit)とのパートナーシップが、これまでのコラボレーションと比べて大幅に高いソーシャル上のエンゲージメントを生み出し、期間限定コレクションとしては過去最高水準のローンチ週売上の一部を記録したと述べた。
ローラーラビットのコレクションは、ローンチ後最初の1時間で1分あたり約10万ドル(約1500万円)の売上を生み出したと、Glossyが以前報じた。
一方のパークは、米ビジネス誌のインク(Inc.)によると、3年半で売上を10万ドル(約1500万円)から約1600万ドル(約24億円)にまで成長させたTikTok発のブランドであり、ターゲットはこのブランドの世界観を取り込む形となった。
ヴィクトリアズ・シークレット撤退で変化した競争環境
ターゲットが初めて水着事業でリードを握ってから、競争環境は大きく変化している。かつてカテゴリーの代表的プレイヤーのひとつだったヴィクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)は、ブラジャー、ショーツ、ビューティー、そしてピンク(Pink)に事業を絞り込む過程で、2016年に水着事業から撤退した。
この決断は重要なものだった。報道によれば、当時のヴィクトリアズ・シークレットの水着事業は約5億2500万ドル(約787億5000万円)規模に達していたとされ、アナリストたちはのちに、同社が季節的な来店動機としての価値を過小評価していたと指摘した。
同社の撤退によって、アンディ(Andie)、サマーソルト(Summersalt)、フランキーズ・ビキニーズ(Frankies Bikinis)、レフトオンフライデー(Left on Friday)、カップシー(Cupshe)といったD2Cおよびソーシャル発のブランドが、フィット感、インクルーシビティ、価格の手頃さ、そしてインスタグラム時代の発見性をテーマに顧客層を築く余地が生まれた。ヴィクトリアズ・シークレットは2019年にオンラインで水着カテゴリーを復活させ、2021年には店舗にも戻している。
生成AI「トレンド・ブレイン」でスピード強化
ターゲットは裏側でトレンドデータを活用して、より細分化した水着市場でスピードを上げ、競合の先を行こうとしている。そのツールのひとつが「ターゲット・トレンド・ブレイン(Target Trend Brain)」だ。
これは同社が2025年後半から公に語りはじめた、自社開発の生成AI搭載のトレンド・インテリジェンス・プラットフォームである。ターゲットによると、このツールはSNSのシグナル、ランウェイやファッションショーのビジュアル、オンライン上の消費者コメント、購買トレンドといった膨大なビジュアル・テキストデータを分析し、各チームが手作業のリサーチよりも速く、色、素材、シルエット、プリント、商品のディテールを特定できるよう支援するという。
フォックス氏によると、ターゲットは現在のバケーション向け商品を、ローンチの1年以上前にトレンドシグナルをもとに形作り、その後も商品が店舗に並ぶ数カ月前まで更新を続けてきたという。
「トレンドがどこへ向かっているかを示すいくつかの指標を巡って、我々は引き続きその能力を強化している。どうすればもっとスピードアップできるのか? これらのパートナーシップをさらに発展させるにはどうすればよいのか? それを考え続けている」とフォックス氏は語る。
[原文:No. 1 in women's swimwear for 10 years, Target is refining its approach to the category]
Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)
