トラブル続きの沿海域戦闘艦、将来はどうなるのか? 「ちっぽけな粗悪艦」の最終艦が就役

(CNN)米海軍は今月、35隻を数える沿海域戦闘艦(LCS)の最終艦「クリーブランド」をオハイオ州クリーブランドの埠頭(ふとう)で就役させた。
フン・カオ海軍長官代行はこれを記念して、SNSに「鋼鉄、強さ、力」との文言を投稿した。
LCS計画に批判的な人々の評価は異なる。
ある人は「格好の餌食だ」と指摘。「不首尾に終わった実験」と評する人もいた。
それも高価な実験だ。計画の費用は600億ドル(現在のレートで約9兆5600億円)と見積もられているが、調査報道サイト「プロパブリカ」は2023年の記事で、最終費用は1000億ドルを超える可能性があると指摘した。
「長年にわたり高価な性能不足の兵器を購入してきた米軍の歴史の中でも、最悪レベルの無駄遣い」。プロパブリカの記事はそう評している。
LCSは米海軍が水上艦隊の「ローエンド」と呼ぶ位置付けにある。誘導ミサイル駆逐艦に比べて小型で、乗員は少なく、火力や防御能力でも劣るが、比較的高速で、より浅い海域での運用が可能だ。
だが08年の1番艦就役以来、LCSは相次ぐ機械的不具合や事故に見舞われ、頭文字をもじって「リトル・クラッピー・シップス(ちっぽけな粗悪艦)」と揶揄(やゆ)されるようになった。
先週末にエリー湖岸で「クリーブランド」が就役したのを受け、大きな疑問が浮上した。LCSの今後はどうなるのか?
ここまでの経緯17年の海軍報告書によると、LCSは20世紀末にルーツを持つ。海軍の計画立案者は当時、駆逐艦のような大型艦では脆弱(ぜいじゃく)になりかねない沿岸海域での任務に適した、より小型のプラットフォームを探していた。
海軍は老朽化した大型艦の退役にも直面しており、大型艦に比べスピーディーかつ安価に建造できる小型水上戦闘艦で艦隊規模を維持する方途を模索しているところだった。
当時の海軍作戦部長、バーン・クラーク大将が白羽の矢を立てたのがLCSだ。海軍がそれまで導入したことのないタイプの軍艦だった。
これが問題を招く一因になったのかもしれない。
ロバート・ワーク海軍次官(当時)による14年の報告書によると、批判派からは「クラーク大将はまず艦艇が必要だと判断し、後になってこの艦艇の役割を考え始めた」との主張が出たという。
報告書はLCS計画のルーツと複雑さを説明する目的で執筆された。ワーク氏はこの中で、海軍は要求通りの艦艇を手に入れたと指摘し、「いくつかの重要な点では予想以上に優れた艦だった」としている。
一方で、LCSの開発が「絶え間ない変更に見舞われた」結果、役割が曖昧(あいまい)になり、格好の批判の的になったとも認めた。
海軍はLCSが従来とは異なる試みだったことを認めている。
海軍の文書では「LCS計画は柔軟性と迅速性、費用対効果に優れた建造を重視しており、造船や艦隊近代化への海軍のアプローチにおいて重要な転換点となった」と指摘。LCSは対機雷戦や対潜戦、水上戦といった任務の変化に応じて、素早く再構成されることになっていたと付け加えた。
だが、単一の設計に落ち着くことはなく、二つのバージョンが建造された。「クリーブランド」のように鋼鉄製の単胴型艦体を備えた「フリーダム級」と、アルミニウム製の三胴艦「インディペンデンス級」だ。
海軍の文書によると、当初は建造を手掛けるロッキード・マーチンとオースタルUSAが提出した計画の中から一つだけ設計を選ぶ予定だったが、両社の競争で「極めて効率的な」造船方法が生まれたため、二つのバージョンが選定された。
ただし批判派は、二つのバージョンの併用は兵站(へいたん)や供給網の複雑化を招くと指摘する。
2種のうちサイズで上回るのはインディペンデンス級で、全長約128メートル、幅約32メートル。これに対しフリーダム級は全長約118メートル、幅約18メートルにとどまる。排水量は後者の方が大きく、3450トン対3200トンとなっている。
いずれもプロペラ推進や舵(かじ)は使用せず、代わりにガスタービンで高速ウォータージェットを駆動する。この設計により、LCSは比較的浅い沿岸水域でも運用可能になり、機雷を繋ぎ止めるワイヤーやケーブルに絡まるのも回避できる。
LCSの艦長はかつて、この艦を「飛行甲板と火砲を備えた軍用ジェットスキー」と称賛したことがある。
最初の単胴型LCS「フリーダム」が就役したのは08年。10年には、三胴型で初の「インディペンデンス」が続いた。
山積する問題LCSは米イスラエルとイランが戦争状態にあるペルシャ湾や、米国と同盟国が「航行の自由」を保護する南シナ海など、現在メディアの見出しをにぎわせている地域に展開する米海軍の重要戦力として構想された。
海軍の報告書によると、当初の提唱者いわく、LCSは「ストリートファイター」。高速性能ゆえに小型艇の群れに対抗でき、イランがホルムズ海峡に敷設したと報じられているような機雷を掃討する汎用(はんよう)性も持つとされた。
だが、問題が積み上がり始める。16年1月には、シンガポールで「フォートワース」の推進システムが損傷。後に操作ミスによるものと判明したが、当時就役4年目だったフォートワースは8カ月間、運用不能となった。
LCSの艦隊は1年で4件の機械トラブルに見舞われ、信頼性に関する評判に傷がついた。
LCSの抱える問題が顕在化するにつれ、海軍幹部の間では、プログラムに割り当てられた予算を他の用途に充てる方が有益かもしれないとの見方が広がっていった。
21年、海軍は古いLCS艦艇の退役を開始。これまでに計7隻が退役しており、中でも「スーシティ」は25年間の耐用年数が想定される艦隊にあって、わずか5年の就役期間で23年に退役した。
8番目の「フォートワース」は7月に退役する見込みだが、米連邦議会は海軍の艦船需要や、投入された数十億ドルの税金を守りたいとの理由を挙げ、これ以上の退役に待ったをかけた。
このため海軍は、ほんの数年前には幹部が不要とみなしたLCSを何とか有効活用しようと模索している状況だ。
今月公表された26年度の海軍造船計画では、LCSを「敵の意思決定を複雑化させる能力を持つ、不可欠な低コスト艦隊戦力」と形容。対機雷戦で有効なプラットフォームとなり得るほか、水上戦を想定してNSMミサイルを搭載することも可能だとしている。
「LCSを巡る戦略は、調達から維持および近代化の段階へ移行する。これらの艦艇の就役期間を通じて存在意義や戦闘能力、信頼性を保つためだ」。海軍の計画はそう指摘した。
専門家は懐疑的だ。
米外交政策研究所(FPRI)国家安全保障プログラムの非常勤上級研究員、エマ・ソールズベリー氏はCNNに対し「LCSは実戦経験が一度もないため、戦闘の場面で実際にどこまで有用かは未知数だ」 との見方を示した。
ソールズベリー氏は、現在のイランとの戦争では、機雷除去任務で中東に派遣された3隻のLCSが任務を遂行した証拠は見られないと話す。米中央軍はCNNの質問に対し、LCSがこの紛争でどういった役割を果たしているかはコメントできないと答えた。
米中央軍がホルムズ海峡での機雷除去に向けた条件整備に着手すると4月に発表した際、ホルムズ海峡を最初に通過したのはLCSではなく、駆逐艦だった。
戦争開始以降、機雷除去を想定して3隻のLCSが湾岸地域に割り当てられたが、そのうち少なくとも2隻はマレーシアやシンガポールといった遠く離れた場所で目撃されている。
米海軍退役大佐のカール・シュスター氏はCNNに対し、LCSが係争海域で実戦的な役割を果たすには対空防御能力が足りないとの見解を示した。
海軍は25年、ドローン(無人機)対策を念頭にLCSの防御力強化に着手したと発表したが、シュスター氏は懐疑的だ。
シュスター氏は「LCSは巡航ミサイルやドローン、航空機の格好の餌食だ」と指摘する。
「どんな脅威のシナリオを描いてもLCSはほぼ無力に等しい。敵対的な航空機やドローン、ミサイル、群れ(スウォーム)といった脅威が存在する海域では、海賊対策の哨戒活動でさえ危険すぎる」(シュスター氏)
ソールズベリー氏はこれに付け足して、LCSは「宣伝通りの成果を上げられなかった実験だ。米海軍は可能な範囲でこの艦艇を有効活用しようと最善を尽くしている」と言い添えた。
ソールズベリー、シュスター両氏とも、LCSは海軍にとって主に一時しのぎであり、昨年12月に発表された新世代フリゲートに取って代わられる可能性が高いとみている。
新型フリゲートは現時点では「FF(X)」と呼ばれ、沿岸警備隊の「レジェンド級」国家安全保障カッターをベースとする予定だ。ネイバルニュースが報じた今年1月の海軍シンポジウムで示された海軍の文書によれば、この艦はLCSより大型となる見込みで、排水量は4750トンに上る。
新型フリゲートに関する昨年12月の発表では、海軍は28年までに1番艦を進水させたい考え。ネイバルニュースによると、最終的には50〜65隻の新型フリゲートを配備する可能性があるという。
シュスター氏は、LCS艦隊の将来は明るくも長くもないとの見方だ。
「3〜4年後に新型(フリゲート)が就役するまでは維持されるだろう。その後は、1隻あるいは2隻ずつ静かに退役していくとみられる」
