手術中に外科医が“交代”…長時間労働の常識にメス 命守る“新たな働き方”
長時間労働などを背景に、人手不足が深刻化している外科医。“新たな働き方”で患者の命を守る医師たちに密着しました。
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すい臓がんの手術が始まりました。重要な血管や臓器が近い場所にメスを入れる、難しい手術です。
執刀する木村七菜医師は、ことし8年目で外科医としてはまだ若手です。助手として、ベテランの教授がつきます。
手術時間が3時間を超えようというそのとき。入ってきたのは10年目の八木健太医師です。
これまでの説明を丁寧に受け、残り10時間ほどかかる手術は八木医師らにバトンタッチしました。
実はここ、富山大学附属病院第二外科が徹底しているのは手術の「交代制」です。オペは最後まで同じ医師が担当する常識を変え、「交代制」にしたのには、ワケがあります。
「交代制」を導入・藤井努教授
「富山大学外科が(着任当時)本当に人が少なくて、このままでは組織としてやっていけないので」
「交代制」を導入した藤井努教授が語るのは、“外科医不足の危機”です。
■“長時間労働”や“緊急呼び出し”にメス


医師の全体数は増えているにもかかわらず、胃や腸などを手術する消化器外科医は、この20年で2割以上減少しました。その背景のひとつが、重たい業務負担です。
8年目・木村七菜医師
「厳しい、長時間働かないといけない、子どもを産んでも働いている外科の女性の先生がやっぱり少ないのが現実で」
外科医にはつきものの“長時間労働”や“緊急呼び出し”。そうした働き方に、まず入れられたメスが「交代制」でした。さらには…
藤井努教授
「スタッフ全員で月曜日、火曜日、水曜日…午前、午後すべて細かくわけて」
■「完全シフト制」家族の時間も大切に


もう一つのメスは、午前は手術、午後は外来など細かく業務を切り分ける「完全シフト制」です。これにより、家族の時間を大切にできるようになった医師も。
10年目・八木健太医師
「ぼく明日午前有給です。入園式いくために」
10年目の八木医師は、娘2人の父親です。
10年目・八木健太医師
「スーパー外科医にもなりたければ、パパにもちゃんとなりたいんですよ」
3年前まで別の病院で勤務していましたが、上級医のサポートのもと、若いうちから多くの経験がつめ、家庭も大切にできるこの病院に移ってきたといいます。
■「交代制」に患者から“不安の声”は?

ことし春に入局・新人外科医
「これから外科医として、一生懸命頑張っていきますので」
この春、病院には4人の新人医師が入局しました。働き方改革の結果、いまや医局の人数は、かつての2倍になりました。
ただ、「交代制」などのやり方に、患者から不安の声はないのでしょうか。
藤井努教授
「交代制のほうが、ちょっと合併症率(術後のトラブル)が低いんですよ」
医師が消耗しない働き方は、患者の安全にもつながっていて、理解も得られているといいます。
医師の不足は医療崩壊にもつながるなか、これまでの“常識”にとらわれすぎない、新たな働き方が求められています。