この記事をまとめると

■中古車販売店の低イメージの根源は過去の不正やユーザーとの情報格差にある

■2000年以降自浄作用による制度整備で業界全体が大きく健全化した

■最終的に問われるのは販売店の姿勢であることに変わりはない

中古車屋はなぜ疑われるのか

 中古車専門記者として長らく働いてきた筆者としては、編集部から届いた疑問「なぜ中古車屋は信用できない烙印を押されている?」に対して、もどかしさと納得感の双方を感じている。

 そもそも現在の、すべての業者ではないかもしれないが、少なくとも多くの中古車販売店は「アテにしてもとくに問題ない、ごく普通の会社」であり、「中古車屋」などという蔑称じみた呼び方をするべき人々ではない。そこに、まずはもどかしさを感じる。

 だが同時に、過去には(もしかすると現在も)アテになどしたら大変なことになりそうな“中古車屋”が一部に存在していたことも事実であるため、それなりの納得感も感じてしまうのだ。

 いまとなってはおおむねクリーン化された業界ではあるが、その一方で、なぜ今もなお「怪しさ」が付いてまわっているのか? 状況を整理してみることにしよう。

 かつての中古車業界は、情報の非対称性(販売店と客の情報量の差)を、その気になれば悪用できるブラックボックス的ビジネスだった。

 走行距離に関しても1990年代までは、専用の機械でアナログメーターを巻き戻すという不正が一部で横行しており、修復歴(フレームの歪みなど)を隠し、「無事故車」として販売することも、一部の販売店では常態化していたようだ。

 さらに、雑誌広告に掲載する車両価格は安いのだが、契約時には「整備代」「登録代行費用」などの名目で、ぼったくり価格の諸費用を上乗せするという手法も目立っていた。さらに、一般ユーザーには中古車仕入れ値がまったく見えないという事情もあった(※これはいまでもある意味そのままだが)。

 とにかく、どんな業界でも付き物ではある「情報の非対称性」がとくに顕著であったため、その気になれば、悪どいビジネスも容易に展開できたというのが、中古車販売業界の特徴だった。そのため、もちろん「全員」では決してないのだが、「中古車販売店=いまひとつ信用できない」という世間的なイメージが確立されたのだ。

不正を起こさない制度の整備で業界が一気にクリーンに

 だが中古車販売業界は2000年代以降、「これでは誰も買わなくなる」という危機感から、強力な自浄作用を働かせた。そのひとつは「走行管理システム」の導入だ。2001年から、日本オートオークション協議会(NAAC)は過去のオークション時の距離をデータベース化。一度でも中古車オークションを通った車両は、走行距離計の巻き戻しがほぼ不可能な仕組みとなった。

 また、近年ではAISや日本自動車査定協会(JAAI)などの第三者機関に所属するプロの査定士が中古車をチェックし、内外装等のコンディションを客観的に評価する制度も普及した。販売店が根拠なしで「キレイなクルマですよ、極上ですよ」的にいうのではなく、外部機関による証明書のようなものが添えられるようになったのだ。

 そして2023年10月からは、中古車販売価格の「支払総額」表示が義務化された。一部の業者で長年の悪習となっていた「安く見せて、後から不透明な整備費用などを上乗せし、総額を吊り上げる」という手法はルールとして封じられた。

 さらに最近では、「ネット上のユーザーレビューとSNSによる監視が強まった」という側面もある。デジタル時代の「口コミ」は、かつての雑誌広告よりも強力であり、悪質な対応や不正は瞬時にネットで共有され、店舗経営に致命傷を与えかねないものとなった。それゆえ、かつては極悪手法を採用していた販売店も、「店全体を廃業リスクにさらす可能性もある悪質な販売手法」はあまり採用しないようになったのだ。

 これら要因のほか、オークション会場における各種ルールの厳格化などもあって、現在は「誰が買っても大ハズレは引かない」というところまで、基本的なレベルは底上げされている。

 しかしその一方で、大手であってもノルマ主義による「過剰な整備や余計な整備、コーティングなどの抱き合わせ販売」といった、新たな形のグレービジネスが行われている側面もある。2023年に発覚した「ビッグモーター事件」を例に挙げるまでもなく、「大手だから100%安心」というわけでもないのだ。

 いずれにせ現在の中古車業界は、「仕組み自体はかつてないほどクリーンだが、運営側のモラル格差は広がっている」という状況だといえる。

 昔から「中古車選びは店選び」という有名な格言(?)があるが、近年はよりいっそう、物件選びそのもの以上に「販売店」と、それを運営している「人」のモラルを見極めることが、ユーザーにとっては重要となっている。試されているのは「人間観察力」なのだ、とまとめることもできるだろう。

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