「すごく斬新」ヤクルトはなぜ課題だった投手力が急激に改善しているのか 近鉄OB佐野慈紀氏の考察「投手陣の責任感や自覚が高まる」「非常にプラスに働いている」

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19日の巨人戦で好投した増居はプロ初勝利、新しい力も組み入れている(C)産経新聞社

12球団トップの防御率2.55

 近鉄OBの佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で占う「シゲキ的球論」。今回は好調なヤクルトの戦いぶりをクローズアップする。

 ヤクルトが好調に走っている。直近は3カード連続勝ち越し、2位阪神に0.5差をつけ首位をキープしている。

【動画】プロ初先発の増居は5回1失点と試合を作り、巨人を封じ込めた

 また何より課題とされた投手力に改善が見られていることも話題を呼んでいる。現在チーム防御率は2.55。これは投手陣の層が厚いとされる阪神を抜き、現時点で12球団トップの数字となっている。

 その躍進の裏には、池山監督の巧みなマネジメント力が光ると佐野氏は絶賛する。

 目を向けたのは先発投手に対する思い切った休養の与え方だ。現在のヤクルトでは先発陣は3登板すると1回、登録抹消。再びコンディションを整えて1軍マウンドに戻ってくるやり方を選択している。

 この方法に関して「エース級の投手でも、平気でローテーションを空ける。これはすごく斬新だ」と高く評価する。「調子には絶対波がある。間隔を空けることによって疲労回復はもちろん、投手陣の責任感や自覚が高まる」と相乗効果も生まれるとした。

 さらに、ただ休ませるだけではないメンタル面の効果も指摘する。「競争に勝たないといけないと追い込むのではなく、ある程度次を約束した上で間隔を空けさせている。これが非常にプラスに働いている」と分析する。

 直近のゲームでは19日の巨人戦でプロ初先発し、5回2安打1失点の好投でプロ初勝利をマークしたドラフト4位ルーキーの増居翔太も20日に抹消となった。“ゆとりローテ”で再度ファームで課題を見つめなおし、再び1軍合流することが期待されている。

 さらに救援陣も開幕から奮闘している。

 新守護神のホセ・キハダはNPB初登板から8試合連続セーブのプロ野球新記録を樹立した。

 清水昇、ヘスス・リランソ、星知弥、木澤尚文、ホセ・キハダと救援陣が安定していることも、ここまで多く逆転勝ちを果たしている要因となっている。 

 新守護神のキハダに関して「気持ちの乗った真っすぐで勝負できている。ピッチングはコントロールも大事だがメリハリが一番。常に10か0ではなく、力配分でもしっかり勝負に行けている」と佐野氏。クレバーな投球術を称賛した。
 
 打線についても、各選手が自分の役割を理解して取り組んでいるのも大きいと指摘する。何より「池山監督がうまく雰囲気を作っており、チームが明るい」とポジティブなパワーが選手の背中を押しているとした。

 ペナントレース最大の敵ともいわれる怪我人を防ぐための緻密な運用術。投打が噛み合うヤクルトのしたたかな野球から目が離せない。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。