国宝「北野天神縁起絵巻」全巻全場面を初公開 「刀剣乱舞ONLINE」コラボも大盛況 京博の特別展
「天神様」と呼ばれ、学問の神として広く信仰を集める菅原道真(845〜903年)。道真が神格化した過程や多様な側面、文化史の中での位置づけなどをひもとく特別展「北野天神」が京都国立博物館(京都市東山区)で開かれている。国宝「北野天神縁起絵巻(承久本)」(鎌倉時代・13世紀、北野天満宮蔵)の全巻・全場面を初めて公開するほか、源氏の重宝で“兄弟刀”とも呼ばれる同天満宮と大覚寺が所蔵する刀を並べた展示、人気ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」とコラボした商品、カフェなど、多岐にわたる企画が盛りだくさんで、初日から大盛況が続いている。


国宝・重要文化財48件を含む約140件を「天神信仰」「北野天満宮の歴史」「北野天満宮と芸能・文化」の3章立てで構成。天神信仰の成立から広がり、芸能・文化への影響までを、日本各地のゆかりの社寺に伝わる貴重な品々で総合的に紹介する、大規模な展覧会だ。

大きな見どころは3点ある。1点目は、国宝「北野天神縁起絵巻(承久本)」の全巻・全場面の公開。1つの展覧会ですべてを公開するのは史上初となる(会期中巻き替えあり)。数多く残る天神絵巻の中で同本は現存最古かつ最大(総長約80メートル、縦52センチ)で、北野天満宮の「根本縁起」かつ最重要の社宝である。道真の生涯と死後の霊威、さらには天神として祀られていく過程をつづった内容で、火災や落雷といった天変地異、地獄での生々しい描写、怨霊から神へと転じる劇的な場面など、ダイナミックなストーリーが展開する。東洋美術史家のアーネスト・フェノロサ(1853〜1908年)は手紙の中で、同本を「ダンテの『神曲』に比肩する」旨を書いたという。
会期中、巻き替えながら9巻すべてを公開する予定で、同館の末兼俊彦主任研究員は「研究者でもすべてを見たことがある人はあまりいない。展示替えごとに5回来てもらえたら、全部見ることができます」と、リピート鑑賞を勧める。




2点目は、源氏の重宝である“兄弟刀”の特集だ。「重要文化財《太刀 国綱ト銘ガアル(鬼切丸・髭切)》(京都・北野天満宮蔵)」「重要文化財《太刀 銘□忠(薄緑・膝丸)》(京都・大覚寺蔵)」の2振を同じケースに並べ中央に置いた“特別室”をつくった。兄弟刀はいずれも撮影OKで、そのことは会期前から大きな話題となっていた。さらにゲーム「刀剣乱舞ONLINE」とコラボし、ロビーに人気キャラクターの等身大パネルが登場。ショップではコラボグッズを販売、館内レストランでは「源氏の白パスタ」「源氏の黒カレー」(両メニューとも税込1800円)などコラボメニューも提供している。刀剣ファン垂涎の企画が目白押しで、関係する各スポットは大賑わいとなっている。


そして3点目は、天神信仰の多様性を紹介する展示だ。「受験の神様」というイメージが強い天神だが、実は「火雷神」「農業神」「和歌・漢詩の神」「武神」などの側面も持つ。北野社で歌舞伎踊りを始めた出雲の阿国を描いた「重要文化財 阿国歌舞伎図屏風」(桃山時代・17世紀、京都国立博物館蔵)やゆかりの能面、壮麗な鎧(よろい)、太刀なども並ぶ。また、道真が愛用したと伝わる精緻な金工品や装身具などは、天神が揺るぎない信仰の対象であったことを実感させる。

北野天満宮宮司の橘重十九さんは、「菅公(道真)は学者で政治家、教育者であり、詩歌にも秀でていた。天神信仰がどう広がっていったかを知ってもらい、国宝の絵巻を通じて、菅公の精神を感じてほしい」と話した。
会期は6月14日(日)まで。(前期は5月17日まで。後期は5月19日から)。問い合わせは同館テレホンサービス、電話075-525-2473。
