白身の極上トロ?──新品種「夢あじ」の魅力 価格3倍のエサで“上質な脂”に 貴重な養殖現場に密着『every.気になる!』
新たに誕生した養殖魚「夢あじ」に注目です。この春デビューしたばかりですが、「トロみたい」「臭みがない」と人気に。百貨店での販売は好調で、即完売する飲食店もあります。天然のアジとは違った魅力や、安定供給に向けた生産者の思いに迫りました。
■3月から本格的に販売がスタート

都内の百貨店のグルメフロアにある鮮魚店「中島水産 新宿郄島屋店」の売り場に並んでいた「夢あじ」。3月から本格的に販売がスタートしました。特設コーナーが作られ、刺し身は1299円、握り4貫は1280円(ともに取材時の価格)で売られています。
来店客からは「初めて見ました。おいしそうだな、食べてみたいなと思いました」「こんなに脂がのってるアジはなかなかない。興味あるよね」「すごく光ってて、見た目がおいしそうだったから買った」という声が上がりました。
■カイワリとマアジの掛け合わせ

旨味の強い高級魚のカイワリと、クセのない味わいのマアジを掛け合わせて生まれた新しい魚で、最大の特徴は“白身の極上トロ”とうたう上品な脂。甘みのある濃厚な味わいに加え、柔らかく弾力のある食感が魅力です。
千葉や静岡で養殖され、都内の高級すし店なども仕入れているという夢あじ。まだ流通量には限りがあるそうです。
■鮮度と味を保つため、船上で血抜き

3月、養殖場のある千葉・南房総市を訪ねました。午前9時前、富浦新港を出て夢あじの水揚げに向かいます。港から1キロほどの海にあったのは、2つのいけすです。その中には、出荷を控えた夢あじが泳いでいました。
水産スタートアップ「さかなドリーム」の石崎勇歩取締役は「(育てているのは)約8000匹。半分は出荷したので、残りは数千匹。25〜30cmあり、出荷できるサイズになります」と言います。重さは約300gで、天然のマアジの2倍ほどだそうです。
この日水揚げしたのは約40匹。鮮度と味を保つため、船の上で血抜きを行います。
石崎さん
「出荷するまでは気が気じゃない。おいしい魚を一定の単価で販売していくとなると、手間暇かけるのはかなり重要」
■低い生存確率で…生産量に限りが

出荷できるサイズになるまで2年近くかかります。養殖の研究が始まったのは2022年です。
1度に5万匹ほどが生まれ、陸上の施設で2か月ほど育てますが、「海に出せる状態になるまで(育つのが)約10〜20%になります」と石崎さん。生存確率が低いため、今は生産量に限りがあるのです。
最もこだわっているというのがエサ。石崎さんは「一般的なアジ科の養殖魚に与えるエサの約3倍の価格で、かなり品質のいい魚粉や魚油を用いている。上質な脂ノリになる。養殖特有の香りがしない」と話します。
■開店から30分で売り切れに

3月、港の目の前にある食堂「おさかな倶楽部」を訪ねました。丸々1匹の夢あじを刺し身にして期間限定で提供(取材時は1936円〜、現在は終了)。「夢あじあります?」「夢あじまだあります?」と続々と注文が入り、開店から30分で売り切れになりました。
埼玉県からの50代
「普通のアジより甘みと厚みがある。おいしいですね」
千葉市からの30代
「ほかのアジだと臭みがあるときがあるんですけど、(夢あじは)全然臭みがない」
小学生(8)
「みんなの分取っちゃうくらいおいしい」
SNSで知って注文したというお客さんも。都内から来た30代は「すごく脂がのっていますね。全然重くなくてさっぱりした脂。もっと流通してほしいと思います」と舌鼓を打っていました。
■安定供給に向けた石崎さんの目標

今はまだ貴重な魚ですが、石崎さんはこう語ります。
「おいしい養殖魚を安定的に供給していくことで、これからもおいしい魚を食べ続けられる世の中になっていく。今年出荷する量の100倍以上を来年海に出すのが目標です」
(4月15日『news every.』より)