《空き家だった古民家を改修 室戸市に新たな宿泊施設が誕生》地元で生まれ育った男性の思い【高知】
古い町並みが残る高知県室戸市吉良川町でこの春、新しい宿泊施設がオープンします。
準備を進めるのは、地元で生まれ育った男性です。宿泊施設に込めた思いを取材しました。
室戸市吉良川町。
明治から昭和の初めにかけて土佐備長炭の生産・流通の拠点として栄え、いまも町並みには、その面影が色濃く残っています。
古民家の中に整えられた落ち着いた色合いの家具やステンドグラスの照明。
建物と上手く調和し、レトロでおしゃれな空間を作り上げています。
「ここは、4月中にオープンをしたいなと思いゆう、一棟貸しの“きら玄”っていう宿です」
黒岩辰徳さん(46歳)は、空き家だった古民家を改修し、1組限定の宿泊施設「きら玄」をまもなくオープンさせます。
泊まった人に感じてもらいたいのは、吉良川のまちが栄えていた大正時代の雰囲気です。
■黒岩さん
「この町並みも、“大正”であったりとか、そういったとこなので、そういったものをちょっと感じれるようなものにしたいなあっていう思いはありましたね」
吉良川町で生まれ育った黒岩さんは、高校まで地元で過ごしたあと、就職で高知市内へ出ました。
その後、地元に帰り、2007年に土佐備長炭の窯元「炭玄」を立ち上げます。
■黒岩さん
「(高知)市内へ出た時は、アパートの隣の人の顔は分かるけど、名前も分からんと。で、会えばあいさつ程度、“おはようございます”とかいうぐらいで。やっぱ、その時に、本当に“ああ地元って本当あたたかったがやなあ”って思いました」
顔を合わせると、世間話に花を咲かせる。そんなふるさとの、人のあたたかさを感じた一方、働く場所がなく室戸を離れる若者が多いことに寂しさも感じていました。
■黒岩さん
「“こっちに残りたいのになあ”とかいう、その声を聞くと、やっぱり寂しいですよね。おりたいところにおるのが、やっぱり一番だと思うので。働く場所がないなら作ろうと」
この日、黒岩さんは朝から自宅を出て室戸市の中心部へ車を走らせます。
向かったのは、室戸岬町にある飲食店「室玄」。この店も黒岩さんが若者の働く場所をつくるため2022年にオープンしました。
自ら包丁を持ち、地元で水揚げされた魚を捌きます。
この魚は、スズキの仲間「ニベ」。柔らかい身とクセのない上品な味が特徴で店では、フライにして提供します。
■黒岩さん
「(ニベは)流通をあんまりしてない感じなので本当にここへ来てもらったら、地元のこういった魚が食べられるかなっていう感じ」
この場所にはもともと別の飲食店がありましたが、新型コロナの影響で閉店し、跡地を室戸市が管理していました。
黒岩さんは、オープン当初から指定管理者として運営を任されています。
「炭玄」の備長炭が入った特製の塩を使ったカツオのタタキなどが人気で、多い時には1日200人が訪れます。
店が一段落した後、スタッフに店を託して、再び車を走らせる黒岩さん。
向かったのは、近くの高台にあるグランピング施設「MUROTO base 55」です。
元々ライダー向けの宿泊施設だった場所で室戸市が再整備し、2020年にオープンしました。
黒岩さんは、この施設の指定管理も開業当初から任されています。
■黒岩さん
「ここが炭玄の宿泊っていう事業の一番最初なんですよ。けど、食であったり、体験であったり、あとはそこに宿泊があれば、全部がつながって、この室戸っていうものを体感してもらえるものが作れるなっていうふうに思ったので、挑戦してみようかなと思った」
観光における室戸市の課題の一つが、宿泊施設の少なさです。
特に観光スポットの室戸岬周辺では、新型コロナの影響などでホテルが相次いで経営を断念しました。室戸市を訪れる年間の観光客は、2016年は75万人だったのが、去年は20万人と大幅に減っています。
こうした課題の解決に向けて黒岩さんが考えるのが、「分散型」と呼ばれる宿泊モデルです。
室戸市全体を一つのホテルに見立て、宿泊機能や飲食する場所などを市内の各所に設けて観光客に長く滞在してもらうのが狙いです。
4月中の開業に向けて、黒岩さんの準備も大詰めを迎えている吉良川町の「きら玄」。
この日は、お湯を沸かすためのボイラーの取り換え作業がおこなわれました。
■黒岩さん
「これ、ガスがつくいうたら、いつぐらい?」
■業者
「ボンベやったら、明日つけるけんど」
■黒岩さん
「いや、別に、そんなに全然、大丈夫」
作業は滞りなくおわり、黒岩さんも片付けを手伝います。
■黒岩さん
「ありがとう、またじゃあガスついたら連絡して。お願いします」
開業に向けて、あとは、保健所からの営業許可を待つだけの状態です。
■黒岩さん
「本当に自分たち、炭玄が楽しんでもらいたいものは、やっぱり“まち”なんですよ。“まち”なので、本当に拠点としてですよね、ここへ来れば、この町並みのできた当時の雰囲気であったりっていうのを少しでも感じてもらえたら」
生まれ育ったふるさとの魅力を多くの人に知ってほしい。黒岩さんの思いが込められた宿の明かりが吉良川のまちを照らす日がもうすぐやってきます。
