神木隆之介が逆オファー「TXQ FICTION」制作陣が明かす“国民的俳優”を起用する難しさ
3月2日(月)より4週連続で放送されたTXQ FICTION「神木隆之介」。
「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」「魔法少女山田」「UFO山」に続くTXQ FICTIONシリーズ第5弾。
【動画】TXQ FICTION「神木隆之介」
主演の神木隆之介、監督の寺内康太郎、プロデューサーの大森時生(テレビ東京)に、その舞台裏を聞いた。
▲左から、寺内康太郎監督、神木隆之介、大森時生プロデューサー
神木隆之介が挑んだ、自分自身を演じない極限のリアリティー
――まずは、この作品が生まれた経緯から聞かせてください。
神木「作品内とほとんど一緒です。イベントで動画を作って…という展開は作中の話ですけど、僕は『ほんとにあった!呪いのビデオ』や『放送禁止』シリーズ(フジテレビ)がずっと好きで。『飯沼一家に謝罪します』を見て“こんなのやってるんだ!”と思って以来、『TXQ FICTION』シリーズのファンで、次回作も楽しみにしていました。
そこで今回、企画が通るかどうかは別として、この作品を作っている方とご一緒できたら幸せだなと思い、こちらからコンタクトを取らせていただきました」
大森「作品の冒頭は、本当に再現ドラマですよね(笑)。最初はマネージャーさんからご連絡をいただいて、率直に光栄というか、非常にうれしかったです。まさか神木さんがTXQを見てくださっているとは思わなかったので。ただ、最初にぶつかったのは、神木さんでフェイクドキュメンタリーを作ることの難しさでした。たとえ作中で死んだとしても、『今も生きてるよね』となった瞬間に物語が成立しなくなる。“子どもの頃、こういう過去があった”というストーリーも、神木さんは2歳からお仕事をされているのでほとんどできませんし(笑)」
神木「条件が限られちゃいますよね(笑)」
大森「俳優さんの中でもいちばん難しい方であり、それが逆に面白いとも思いました」
寺内「大森さんから話が来たとき、神木さんがどういうつもりでおっしゃっているのかまったく分からなくて…。我々が思っているフェイクドキュメンタリーで合っているのか?とも思いました(笑)。こちらのスタイルが守れるならば進めますが、神木さんの思うフェイクドキュメンタリーは、普通のドラマの可能性もあるぞと。でも、神木さんとお会いして、その不安が一切なくなりました。
一番心配だったのは、神木さんに何かしら損がないか…ということでしたが、神木さんがこちらの視点をよく理解してくださっていて、最初に3時間くらいお話して、“これは絶対に面白いものが作れる”と確信しました」

――神木さんは、もともと大森プロデューサーにどんな印象がありましたか?
神木「これだけの作品を作ってきた百戦錬磨な方なので、年上かなと思っていたんです。でも、僕より2歳下ですよね?」
大森「そうですね。神木さんが演技を始められた年に僕が生まれたということが、信じられないなと思っていました(笑)」
神木「“えー!?”と思いましたよ、僕も(笑)。撮影中に『大森さん、今、どう見えました?』って聞くと、『ここはこうだったので、こっちの方がリアリティーがあると思います』とおっしゃるんですが、その意見が的確すぎて、“どこまで俯瞰で見えているんだろう”と。頭が良すぎる、頭脳明晰。とんでもない方だなと思いました」
大森「今夜は気持ち良く眠れそうです(笑)」
――現場ではどんな演出が行われたのでしょうか。
寺内「神木さんが神木さんを演じるわけですから、演出なんて必要ないというか、しようがない。木に向かって演出はいらないわけで、そのまま立っていればいいんです。だから僕の仕事は、木だとしたら風を吹かせること、いかに自然現象を生むかということで。
あえて言うなら、それが唯一の演出ですね。だから、極力ファーストテイクを狙う。第2話でてるちゃんの家を訪ねる場面では、相手のことは何も教えずにピンポンを押してもらいました。相手側もガチンコで、絶対に事前に会わせないようにしていたんです」
神木「ピンポンを押してガラッと出てくるまで、西口さんという名前も知らなかったんですよ。だから西口さんが扉から出てきた瞬間、本当に怒られるんじゃないかと思って(笑)。カメラがあることを告げたら、『なんでカメラがあるんですか!』とか言われないかなって、リアルにドキドキしながら話しかけました。“大丈夫かな”という不安もありましたが、それが程良くいびつで、程良くピタッと合っていて。その不気味さが、僕の中でも初めての経験でした」
大森「打ち合わせしたとき、神木さんが過去の作品に関する考察をしてくださったので、現場でもそれをやってほしいとお願いしました。現場で思ったことを視聴者として素直に喋っていただけたら、それがそのまま神木さんのリアクションになるのではないかなと思ったんです。今までのTXQには主人公的な人がいなかったので、そういう視点で喋る人がいることが新鮮で面白かったですね」

――共演者の皆さんとは、どのようなやり取りをされたんですか?
神木「山内(圭哉)さんにも小林(綾子)さんにも、撮影が始まるまで一切お会いしませんでした。山内さんは、本当の話をしているようにしか見えなかったです。僕らの中には、実際にてるちゃんがいるんですよ。お互いにいないと分かっているのに…。山内さんも小林さんも、スラスラと本当の記憶を話しているかのようでした」
寺内「山内さんは撮影後に、『罪悪感を感じる』とおっしゃっていましたね。今までのお芝居とは違って、本当に何か悪いことをした気分になったと。他の作品とはちょっと質が違うんだなと、改めて感じました」
――そんな中で、神木さんには「演じる」という意識はありましたか?
神木「まったくないですね。ただ、言わなければいけないセリフがある中で、いかに無意識でそこにたどり着けるか、というのが難しかったです。“この先こうだから、こう動いた方がいいかな”とか、考えた瞬間に怖くなるんですよ。その瞬間から、そこに向かった演技になってしまうので。なるべく素で質問できるように、素で意見が言えるように、無意識のままそこにいることを大切にしました」
大森「全部のストーリーを知った上で無意識になるというのは、本当に難しいことだろうなと思いながら見ていましたね」
――神木さんは、「TXQ FICTION」のどこに魅力を感じているのでしょうか。
神木「真実が見えかけたときにゾッとする感覚。ヤバいことに気づいてしまったかもしれない…という予感が大好きなんです。しかも、いろいろな方の考察を読んでからもう一度見返すと、今まで気づかなかった部分にまたゾッとするんですよね。今回このチームに携われて、本当に幸せです」
――神木さんにとっては、贅沢な現場だったわけですね。
神木「本当に贅沢ですよ。ただ、それを気楽に楽しめる視聴者側と、作り手側とは全然違うんだなとも思いました。撮影中は“次、どういう流れだっけ?”と確認しながら進めていくのが本当に大変で、その苦労や構築していく過程があるから、我々視聴者はこんなにもゾッとできるんだなと。多角的に考察しても筋が通るし、だからこそどれが真実なのか分からなくなる。そういう構成に、職人技を感じました」
大森「フェイクドキュメンタリーって、手持ちカメラで生っぽい演技を撮ればいいと想像する方が多いんですけど、そうではなくて。設定を複雑にするのも、ただ闇雲にやっているわけではなく、真実にするためにはそうしないといけないからなんです。
真実にするために、自分は何をすればいいのか…。それを神木さんが一緒に探求してくださったからこそ、成立した企画だと思います」
「絶望」は救い 寺内×大森が考える「生きている実感」の在り処
――寺内さんと大森さんは、なぜ不穏なものを作り続けるのか。その根底にあるものを教えてください。
寺内「感情を揺さぶられることは、感動と一緒だと思っています。感動して涙を流す作品も好きですけど、絶望したいんでしょうね、常に(笑)。でもそれは、プライベートで絶望していないからこそできることでもあって。ホラーが流行っているということは、まだそれを受け入れられている、救いがある社会なのかなとも思いますね」

大森「僕も、“不穏なもの”が一番心が動くと思っています。神木さんがゾッとした瞬間の話を生き生きとされていたように、最悪なことが起きたり、どんよりした気持ちになったりしたときこそ、生きている実感を得られる…そんな世の中なんじゃないかなと思っていて。フィクションで明るい気持ちになることの方が、僕は逆にフィクションっぽく感じてしまうというか。故にそういうものを作っているのかもしれないですね」
――最後に、皆さんにとって“怖いもの”とは?
神木「虫です。たとえばハチは、あんなに小さな体で人間を死に至らしめるレベルの毒があるわけですよね。ゴキブリも、なんで0から100のトップスピードが出せるんだ! と(笑)。分からないことが多いので怖いです」
寺内「僕は龍とか空想の生き物が現実に現れたら、終わると思っています。想像を超えた何かが現れた瞬間、今までの人生をすべて否定される気がして。だからゲームでも、よく皆さん“架空のキャラクターと戦えるな”と思います(笑)」
神木「みんな、龍と戦いますからね」
寺内「あれはもう怖くてしょうがない(笑)」
大森「僕が怖いのは、自我を失うことですね。自分を客観視できていない人を見ると、異常な怖さを感じるんですよ。“なぜここで、そんなことを言うんだろう”っていう人、いるじゃないですか。でも、明日は我が身というか、その状態と自分が常に地続きであることが耐え難くて。どうにかしたいとは思っていますけど、今はそれが本当に怖いです」

(取材・文/nakamura omame)
【プロフィール】
神木隆之介(かみき・りゅうのすけ)
1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。2005年、映画『妖怪大戦争』で主演を務め、『第29回 日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。以降、ドラマ『探偵学園Q』『らんまん』『海に眠るダイヤモンド』、映画『桐島、部活やめるってよ』『バクマン。』『ゴジラ-1.0』など数多くの作品に主演。声優としての出演作には『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『サマーウォーズ』『君の名は。』『天気の子』などがある。2026年5月には、映画『君のクイズ』が公開予定。
寺内康太郎(てらうち・こうたろう)
1975年生まれ、大阪府堺市出身。映画監督・脚本家。2004年、映画『わたしの赤ちゃん』で脚本家デビュー。『口裂け女2』『華鬼』シリーズ、『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズなど、多数の心霊ホラー作品で監督を務める。
2021年より自身のYouTubeチャンネルにてフェイクドキュメンタリー『Q』シリーズを配信開始。「TXQ FICTION」では『イシナガキクエを探しています』『飯沼一家に謝罪します』『魔法少女山田』で演出、『UFO山』でプロデュースを担当。
大森時生(おおもり・ときお)
1995年生まれ、東京都出身。2019年、テレビ東京入社。2021年に『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』でプロデューサーデビュー。『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』などを経て、2024年より『TXQ FICTION』シリーズを始動。『イシナガキクエを探しています』『飯沼一家に謝罪します』『魔法少女山田』『UFO山』を次々と手がける。
テレビの枠を超え、『行方不明展』『恐怖心展』をプロデュース。2023年「世界を変える30歳未満 Forbes JAPAN 30 UNDER 30」に選出された。
・ジャケット…marka / マーカ \264,000(in tax)
・シャツ…marka / マーカ \26,400(in tax)
・パンツ…MARKAWARE / マーカウエア \44,000(in tax)
・靴、ソックス…スタイリスト私物(以上、神木)
【問い合わせ先】PARKING / パーキング
