体から「毒」と言われる食材を抜くとどうなるのか。医師の和田秀樹さんは「『四毒』と言われる小麦粉、植物性油、乳製品、砂糖を抜いて、栄養不足になってしまっては本末転倒だ。乳製品であるヨーグルトの免疫機能は、最近よく指摘されるし、甘いものを食べて気分がよくなり、結果として免疫が上がる人も大勢いる」という――。

※本稿は、和田秀樹『死ぬまで元気 88の読むサプリ』(新潮社)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/karammiri

■「四毒」を排除したらどうなるか

最近、発がん性が指摘されている有機フッ素化合物PFASが、浄水場などから国の目標値を超えて検出されて騒ぎになりました。

しかし、この種の「発がん性物質」が発がんを促したとしても、がんになるのは1万人に1人とか2人というレベル。ふつうに暮らしていても一定の確率でがんになるのですから、無視できる程度のものです。

日本人は「毒」に敏感ですが、適量なら体にいい毒だって多いのです。

たとえば放射線は、福島第一原発の事故後、微量でも避けたがる人が続出しました。ところが鳥取県の三朝温泉などは、天然の放射線量が全国平均の約3倍にもなるのに、この地域の住民でがんになる人は、全国平均の半分程度です。

このように「毒」といわれるものも、一定の量を超えないかぎり体によい効果をもたらすことが少なくありません。

「毒」に敏感なあまり、体に不可欠な要素まで避けてしまっては本末転倒です。「四毒」とは「小麦粉、植物性油、乳製品、砂糖」のこと。江戸時代の伝統的な和食に含まれていなかったこれらを抜くことで、病気や老化を予防できると、一部の人が主張しています。

しかし江戸時代には、日本人の平均寿命は30歳台だったのです。それを考えると、これら四つの栄養を「毒」と断じるのはとても危険なことのように思われます。

たとえば乳製品。20世紀初頭、平均寿命が世界ではじめて50歳を超えた国はオーストラリアだった、という事実が示唆的です。当時、肉を食べる量も乳製品を摂取する量も、オーストラリアは世界一でした。

つまり、乳製品が体に悪いという主張は、歴史的事実に反しています。そもそも日本人の乳製品摂取量は、欧米よりずっと少ないのに、さらに減らしていいのでしょうか。

高齢で食が細くなり、以前ほど脂っこいものや肉などが食べられなくなってきた人は、せめて牛乳を飲んだりアイスクリームを食べたりしてほしいです。

■免疫力は確実に下がる

小麦粉は、日本人の年間消費量が2020年度で31.7キログラム。欧米は90キログラム前後だから3分の1にすぎません。「うどん県」を標榜する香川県では若干多いとしても、香川県民の健康状態が悪いという話は聞きません。

「四毒」を避けたい人は植物性油もダメなので、天ぷらなどもってのほかでしょう。心臓病予防や血圧の改善などに効果があるオリーブオイルも、「四毒」がダメなら排除されてしまいます。甘いものだって、糖分は年齢を重ねるほど脳のために必要です。

日本人は世界でもとりわけ小食だと指摘されています。だから、ただでさえ栄養が不足しがちなのに「肉は毒だ」「甘いものは毒だ」といって、それらを抜いてしまっていいのかという話です。

私も以前、人に誘われて断食道場に行ったことがあります。すると、なんとなく体がデトックスされたような気分にはなります。だから危険なのです。

「四毒」も、「江戸時代の食事には含まれていなかった」といわれると、それなりに説得力があるので、信じてしまう人がいるのでしょう。「四毒」を抜いた結果、気持ちがいいと感じることもあるのかもしれません。

しかし、これらの食材を抜くと、免疫力は確実に下がります。乳製品であるヨーグルトの免疫機能は、最近よく指摘されますし、甘いものを食べて気分がよくなり、結果として免疫が上がる人も大勢います。

栄養を摂取する機会をわざわざ避け、免疫を下げてしまうような愚は、犯さないでほしいと願います。

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■たんぱく質不足ならサプリで摂取を

私たちの健康や長寿を支えてくれるのは栄養です。だから、サプリメントに頼ってでも、栄養はしっかり摂るべきです。

たんぱく質なら、体重1キロあたり1グラム程度は、毎日摂取したいところです。体重70キロの人なら70グラムということです。しかし、それを肉で摂ろうとすると、たんぱく質の5倍程度、つまり350グラムも食べなければなりません。納豆などにも、思ったほどはたんぱく質が含まれていません。

だから最近は、たんぱく質不足を補うためにサラダチキンがよく売れ、高吸収のプロテインドリンクが人気で、たんぱく質のサプリメントに頼る人も増えています。

たんぱく質を直接摂るのは「よくない」と批判する人もいます。しかし、不足しているなら、サプリメントを通してでも摂ったほうがいいです。足りないことによる害に、もっと敏感になってほしいと思います。

アメリカで心筋梗塞で亡くなる人が半減したのは、DHAを摂取するようになったからだ、という話はすでにしました。心筋梗塞の予防といえば、以前は「コレステロールを減らす」の一点張りでしたが、DHAを摂るほうが、コレステロールを減らすより死亡リスクが下がったのです。コレステロールを「引く」よりDHAを「足す」ほうがよかったわけです。

体に悪いといってなにかを減らすと、それが足りないことによる害も生じます。コレステロールなら、足りないとがんのリスクが高まります。そこでサプリメントの出番です。

「足りない」ことの害が、もっと叫ばれなければいけません。

私が子どものころは栄養失調に陥る人がいたので、「食べろ」といわれたものですが、1980年代から、肥満にならないように「食べるな」という呼びかけに変わりました。しかし、そもそも日本人に肥満は少ないのです。

■不足すると味覚障害やEDになる栄養素

たとえば亜鉛。高齢者には不足しがちですが、不足すると味覚障害になったり、性ホルモンが減ってED(勃起障害)になったりします。

亜鉛を多く含む食品にはニンニクや牡蠣がありますが、私は牡蠣が食べられないので、サプリメントで亜鉛を摂っています。

嫌いなものを無理に食べるくらいなら、サプリメントで摂ることを勧めます。いけないのは嫌いなものを食べず、サプリメントも摂らず、必要な栄養素を摂取しないことです。

サプリメントには特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品もあり、薬のかわりに摂る人もいます。しかし、本来足りないものを補うのがサプリメントです(この英語は「補うこと」を意味します)。魚が嫌いな人はDHAのほか、コエンザイムQ10などのサプリメントを摂ってもいいでしょう。

あるいはビタミンD。医者がよく骨粗鬆症の薬として活性型ビタミンDを出しますが、これを飲んで胃腸障害を起こす人もいます。欧米人にくらべると、日本人は胃腸が弱いようです。

しかし、ふつうのビタミンDも体内に吸収されたのちに、日光を浴びると活性型に変わります。活性型ビタミンDを摂って胃腸を壊すくらいなら、ふつうのビタミンDを摂って日光に当たればいいでしょう。

野菜が嫌いな人は食物繊維のサプリメントもいい。そうやって補えばいいと思います。

■日本にはコレステロールのサプリがあるといい

私が日本に「あればいいな」と思うのは、コレステロールのサプリメントです。高齢になるほどコレステロールは必要なのに、コレステロール値が高い食品は高齢になるほど食べられなくなります。だから、コレステロールが不足している人はとても多いのです。

和田秀樹『死ぬまで元気 88の読むサプリ』(新潮社)

それなのにコレステロールが高いからと、薬を飲まされている人が多いのが実情です。

そんなことをして体にいいわけがないし、コレステロールを下げる薬のスタチンには、軽度の(重度の場合も)横紋筋融解症を引き起こす副作用が指摘されています。

よほど肥満の人でないかぎり、コレステロールを摂りすぎる害のほうが、足りない害よりよほどマシだと、私は考えています。

欧米にくらべると、日本では生活にサプリメントを取り入れている人は、まだ少ないようですが、不足しがちな栄養素を手軽に補えるサプリメントを活用しない手はありません。私たちは、不足していた栄養を補うことで長寿になったのですから。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)