子どもの中学受験のサポートのために仕事を辞める「中受離職」という現象が生じている。

【映像】中学受験における親のサポート内容(画像まとめ)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、この中受離職について、慶應義塾大学の中室牧子教授とともに、受験のあり方や働き方の課題について深掘りした。

■深夜までサポート「フルタイムやりながらではかなり厳しい」

 新卒で入社し、勤続10数年のAさん。出産後も育休などを利用し働き続けてきたが、辞めるきっかけになったのが中学受験の壁だという。

「仕事しながらだと、どうしても子供を見てあげられる時間がほとんどなかった。どこを志望校にするかも全然調べられておらず、娘のフォローに集中するため、その時点で会社を辞めることを決心しました」

「採点してあげたりとか過去問を印刷して作ってあげたりだとか、そういうのもサポートがある家とない家だと、勉強量にかなり差が出てしまうと思う」

「塾が終わるのが8時半頃。私も大体8時半ぐらいに帰ってきて、そこからご飯を作って、片付けをして、お風呂に入ったりして、寝る準備をして…となると大変で。単純に私の体力がない。1日仕事をして帰ってくると子どもの勉強を見られないというのが正直あって。どっちかしか出来なかった」

 番組では、およそ20年続けた仕事を受験のために辞めたという別の保護者にも話を聞いた。「気力と体力の限界」だったという。午前5時半に起床し、子どもと一緒に勉強。日中はフルタイムで働き、夜は子どもと塾の課題に取り組んでいた。塾のクラス分け対策など、テキストやマニュアルが存在しないものは子どもに合わせた独自の教材を作り、寝るのは日付が変わってからという日が続いていたという。

 また、現在娘が中学受験を目指している女性Cさんは「フルタイムやりながらではかなり厳しい。漢字と計算の丸付けをするだけでも結構時間取られて。ちょっとした計算ミスを教えるだけでも、10、20分あっという間にかかってしまう」と語る。

 仕事を辞めたきっかけは受験ではなかったものの、現状ではフルタイムでの復帰は厳しく、しばらくはパートなど融通の利く形で働く予定だという。

 子どもの受験が保護者のキャリアに影響を及ぼす状況について、仕事を辞めたAさんは次のように話している。

「会社の周りの人には『もったいない』と言われた。もったいないかな…と自分でも思ったけれど、天秤にかけた時に娘の受験を一生懸命やったとなった方がより良いのではないかと。正直悩みもしたけれども、働いてきたレコード(職歴)と娘を比べると、娘の方が大事だなと思ったので。もったいないから、ということで会社員を続けて、娘のサポートをしない選択は私の中では違うかな、そう思ったらまあいいかと思って、スパッと辞めようと振り切れた」

 こうした中受離職のリアルについて、中室氏は「個々人の選択だと思うので、こどものサポートをしようと思って就労を一旦中断した選択はありうるが、一方で、こうしたケースから、『受験するのだったら私も仕事辞めなきゃいけない』と思う必要はないと思う」とコメント。

「親の就労が子どもの学力に与える影響は非常にミニマルだという研究もあるので、就労しているからダメというわけではないことを知っておいていただく必要がある」

■中室氏「長期的には主体性が失われる可能性も」

 学校選びから課題の丸付け、独自課題の作成、過去問の管理まで、サポートの背景には、保護者が手伝うことで有利になるなら手伝いたいという親心があるようだ。ただ、中室氏は親がやることによる懸念も指摘する。

「親が全部やってあげるのは、子どものためにならない可能性もあるのではないか。例えば、中国で行われた有名な研究に、小学校の時に生徒会やクラスのリーダーをやっていたら、果たしてそれが学力を下げるのかを示した研究がある。実際に中学校でリーダーをやっていると勉強する時間は短くなるが、いろいろなことに対する主体性が身に付いて、それによって学力が上がったという研究がある」

「子どもの主体性を育てることは、長期的に見て非常に重要なことだと思う。短期的にはサポートによって受験や学力を上げることに効果があったとしても、長期的に考えると親が全部やってあげることは主体性を失わせるリスクがある」

 また、親が自分のために仕事を辞めて伴走してくれたとなれば、子どもにとってプレッシャーになる心配もある。「親の過度なプレッシャーは、子どもにとってあまり良い影響がないのは、数多の研究で示されていることだと思うので、プレッシャーをかけすぎないようにすることは大事」。

 さらに、時間投資と経済的投資のバランスも指摘する。「経済学の研究では、教育の投資を『時間投資』としていて、子どもの勉強を見てあげる時間投資と、学費や塾の授業代を支払うお金の投資に分けている。子どもの学齢が小さい時は時間投資の効果はすごく大きい。しかし子どもの学齢が大きくなってくると、今度はお金の投資効果が大きくなってくる。そのため離職することがあったとしても、いずれどこかで復職して経済的に安定していること自体は、子どもの20年間で見れば重要なことかもしれない」。

(『わたしとニュース』より)