◆あおっていたハイエースが、あっけなく警察に止められる瞬間

 相手を刺激すれば、原付バイクなんてかんたんに潰されてしまうと思うと、石田さんは、うかつに停車できなかった。それでも意を決して、歩道ギリギリまでバイクを寄せてみたという。

 すると次の瞬間、ハイエースは急にスピードを上げて、石田さんの真横を一気に追い抜いていった。

「ようやく後ろの“大きな壁”が消えて、ホッとしたのを覚えています」

 そして数百メートル先、信号を3つほど通過したところで、思いがけない光景が……。

「さっきのハイエースが、パトカーと一緒に路肩に止められていました。スピード違反か信号無視かはわかりませんでしたが、私をあおっていた車があっけなく警察にとめられていて、少しスカッとしました」

 石田さんは、涼しい顔で30キロをしっかり保ちながら、ハイエースの横を通過した。

◆■ 数字が語る「暴走の代償」と取り締まりの現実

 今回紹介したエピソードのように、一時の感情で無謀な運転に及ぶドライバー。彼らが直面する「代償」は、決して軽いものではありません。

1. 逃げられない「反則金」と「点数」の現実

 無謀な追い抜きや信号無視。こうした暴走行為には、現場で以下のペナルティ(普通車の場合)が突きつけられます。

▼速度超過(普通車)

15km/h以上20km/h未満:反則金 12,000円 / 違反点数 1点

20km/h以上25km/h未満:反則金 15,000円 / 違反点数 2点

25km/h以上30km/h未満:反則金 18,000円 / 違反点数 3点

30km/h以上(一般道):刑事罰(罰金等) / 違反点数 6点以上(即・免許停止)

▼信号無視(赤色等・普通車)

反則金 9,000円 / 違反点数 2点

 こうした身勝手な振る舞いの背景にあるのは、「自分だけは捕まらない」という根拠のない自信です。しかし、Case 1で登場したように、道路には交通機動隊の覆面パトカーが目を光らせています。

2. 「一般原付」の脆さと、命を守る冷静な判断

 車体が小さく、体がむき出しの状態で走る一般原付にとって、異常な運転をする車に付きまとわれる恐怖は計り知れません。令和8年1月6日に公表された最新統計によれば、令和7年(2025年)中に一般原付の乗車中に亡くなった方は、全国で年間134人にのぼります。

 Case 2の石田さんが見せた「無理に相手をせず、安全な場所に避難してやり過ごす」という判断は、自らが事故の当事者にならないための、極めて冷静で正しい対応です。

 警察庁は「悪質・危険な違反への取り締まり強化」を改めて明言しています。ほんの数秒の暴走で失う金銭、そして社会的信用。その重さを、私たちはこれらの数字とエピソードから、自分を守るための警告として受け止める必要があるのではないでしょうか。

<取材・文/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。