Image: かみやまたくみ generated with ChatGPT (Image 1.5) and Gemini (Nano Banana Pro)

もううるさいよってくらい、AIに関する情報が溢れています。それを見ながら常々「結局、何が起こってんだよ?」と感じていました。さすがのAI業界も落ち着いたように見える年末年始は、ゆっくり振り返るいいタイミングでしょう。

そんなわけでこの記事では、2025年の「AIの潮流」をまとめてみます。

本稿はスタンフォード大学がまとめた「調査研究に基づく2025年のAIのトレンド」で主に扱われていた希望的なAIの潮流(光)を参考に、自分が観測していたAIの社会問題的な側面(闇)を補足したものです。

光と闇という軸を加えたのは、「全体的にはまぁ希望的なのでは?」と言われても「はい、そうです」と言える感じではなかったから。AIは慎重になったり、気を引き締めないといけないところが多すぎるのです。

1. 順調すぎる進化。AGI(汎用人工知能)の輪郭が見えてきた

2025年はAIの性能向上が著しく、従来の「物差し」が壊れるほどでした。

光:2025年に登場した新しいAIモデル「Google Gemini 3 Pro」が知性の限界に挑む難関ベンチマーク「Humanity's Last Exam」で従来より各段に高いスコアをマーク。チューリングテストは気づけば突破されていました。従来の性能指標が使いものにならなくなりつつあり、新たな指標が作られるほど進化しました。

闇: 対応は着実に進んでいますが、もっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」は根絶されていません。性能が上がるほど、その「知的な嘘」を見抜くことはさらに困難で、最新モデルのミスはかなり見つけにくいと感じます。未成年が自死し、AIがその原因だったと主張する訴訟が起きている状況で、さらに伸びたのです。

2026年は「汎用人工知能(AGI)レース」が本格化していくでしょう。ChatGPTは「Apps」という新機能で「能力の幅」を広げる方向に向かっています。Googleは「世界モデル」と呼ばれる3D空間内で思考するAIを開発しており、これを絡めて「本当の意味で人間を超える知性」を実現していくと思われます。

最先端は今のところこの2社ですが、Anthropicやアリババなど有力なプレイヤーは多く、新技術でブレイクスルーが発生する可能性もあります。どこがレースを制するのかは正直見えません。

2. ビジネスへの浸透と、手に入らなくなる「スマホ」「PC」

AIは特定の業種では既に「不可欠な相棒」となっています。

光: 「コード生成」「応対」といった実務をある程度任せられるソフトウェア開発やコールセンターとは相性がいいようです。開発との相性の良さは、CursorやClaude CodeなどのAIエージェント型開発ツールの隆盛が証明しているでしょう。日本ではNote・Qiita・Zennなどに情報が多く、今から入っていくのも難しくありません。Antigravityのようにプログラムを書かずにアプリが作れる「ノーコードAIアプリ開発ツール」も登場しており、波は非エンジニアにも広まるかもしれません。

闇1:AIの導入は必ずしも生産性や収益を上げるわけではないようです。「エンジニア自身は生産性が20%向上したと感じていたが、実際には作業時間が19%増加(生産性が低下)していた」という研究が出たりしています。ところが、「従来的な仕事需要は減る」といった報道は多く、「これまで通り仕事をして暮らしていけるのか?」という不安を多くの人が抱えることに。

闇2: 「AI需要の暴走」のような現象も起きています。AIデータセンター向けのメモリへのニーズが今は非常に高く、結果として消費者向けのメモリ・SSDも高騰。2026年のスマホやPC新製品は安くないかも。

AIのビジネス利用・技術開発はさまざまな形で拡大していますが、回り回って「個人がそれを利用するためのデバイス」を手にするのを難しくしていきそうな流れがあります。仕事への影響については、Financial TimesがYouTubeで公開している「エントリーレベルの求人が米国で激減している」という取材動画が「今まで通りではいられなさそう」をよく感じさせてくれました。

3. 「パーソナルな使いやすさ」の向上と、悪用の深刻さ

スマホやウェアラブルで動く「高性能なオンデバイスAI」が登場、スマホやPCの最新機種の一部には既に搭載され、“プライバシーを気にせず利用できるAI”の普及も進んでいます。

光: プライバシーを守りながら、身近なデバイス上でいつでもAIの支援を受けられる未来が半ば到来しています。一般的なスマホ・PCで動作するAIの開発が継続的に行われており、今後もカジュアルに使いやすいAIが追求されていくでしょう。

闇: 「悪用の民主化」が起こっているような節があります。身近な人物の写真から「性的ディープフェイク」を作成した・AIチャットを利用してハッキングツールを作成したといった報道は、「身近なもの」となったAIを悪用したという事例となっています。

4. AI教育の拡大と、無視される「他者の権利」

AI教育が拡大し当たり前のものになろうとしていますが、現状の利用のされ方やAIを訓練するための学習データの扱いを見るとまだ「文化的なアプローチ」を強化する必要がある状況だと言えます。

光:生成AIは日本では若年層を中心に浸透し、利用率は5割を超えるという調査もあります。ChatGPTは 「チャッピー」の愛称を得て、流行語大賞にノミネートされるなど既に文化の中に取り込まれています。教育の対応も進んでおり、大きなところでは東京都のカリキュラムに生成AI教育が盛り込まれました。AI教育格差の問題も指摘されていますが、日本については順調なように見えます。

闇: 上述のような悪用事例が後を絶たないのは、教育的な取り組みがまだ不十分であることを示しています。加えて、AI開発側の「権利意識の低さ」も問題になっています。著作権を軽視した学習利用に対し、権利者団体からの反発が激化しました。

ディズニーがOpenAIと正式な利用契約を結んだ事例は、「AIの利用時や訓練時に他者の権利や権利物をどう扱うべきか?」という議論に影響していくのではないかと思われます。

5. 「増大する環境負荷」とその解決策

AIが推論を繰り返すたび、莫大な電力と水が消費されます。AIのコストは莫大なもので、しかもそれは単に「リソースが消費される」に留まらない面があります。

光: AI自身がモデルの効率化を助け、省電力化への技術革新が加速しています。たとえば、Google DeepMindはデータセンターの冷却に必要なエネルギーを40%削減できたと発表しており、これはAIによって達成されたとのこと。こういったやり方は「Green AI」などと呼ばれることもあります。

闇: 問題なのは、AIインフラが不足するほどの需要がある点です。アメリカでは「Stargate」計画に絡んだデータセンター建設をめぐり、住民との摩擦や反対運動が顕在化しました。日本の日野市・印西市でも摩擦が発生しています。巨大なデータセンターは環境に影響を与え、景観も変えます。経済的なメリットもあるはずですが、デメリットにも注目が集まっています。

「AI運用コストの支払い」が始まっている

AIの性能の進化は「AIが何をもたしてくれるか?」という話です。ベンチマークやらなんやらいろんなデータがありますが、要するに「何ができるようになったか?」がAIの技術的なキモであり、価値です。

しかし、話はそう単純ではありません。そこからAIにかかるコストを差し引く必要がある。

サブスクに月3,000円かかるのも重ければ、環境負荷も高い。使い方によっては他者を踏みにじったり、今までに築かれた文化資源を搾取する形になる。それらへの対応が安易に社会や個人に転嫁されるようでは、どこかで崩壊してしまう気がします。

AIを使うのは確かに楽しい。でも、進化が非常に速く、技術の射程も広く、社会実装もどんどん進んでいる。結果として「夢のある技術」として楽しむ時間がそこまでないなぁ…と感じた1年でした。

Source: Stanford Online, Psychology Today, 東京新聞, Google DeepMind (1, 2), Sobot, Google Antigravity, arXiv, Finantial Times, Apple, FNNプライムオンライン, 下野新聞デジタル, 日本リサーチセンター, 自由国民社, 東京都, Tokyo MX, テレ朝NEWS

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