開発途上国では子どもたちに充実した教育を与えるべく、技術へのアクセスを向上させる取り組みが試みられてきました。その中の1つが、1人に1台のノートPCを与える「One Laptop per Child(OLPC)」プログラムです。ペルー・カトリカ大学のサンティアゴ・クエト氏らは、ペルーでのOLPCプログラムの10年分のデータを検証し、報告しています。

Laptops in the Long Run: Evidence from the One Laptop per Child Program in Rural Peru | NBER

https://www.nber.org/papers/w34495



Laptops in the Long-Run: Evidence from the One Laptop per Child Program in Rural Peru

https://publications.iadb.org/en/laptops-long-run-evidence-one-laptop-child-program-rural-peru

OLPCはその名の通り、「児童1人当たりのPC台数を1台にする」というプログラムです。ペルーでは531校の小学校が無作為に介入群と対照群に分けられました。介入群の教職員はPCの操作方法と教育目的での活用法について40時間の研修を受けることが想定されており、2009年からノートPCが割り当てられました。

なお、2011年以降は対照群の学校へもPCの導入が進み、対照群の児童1人当たりのPC台数が0.4にまで増加した一方、導入したPCの紛失や故障により、介入群の児童1人当たりのPC台数は1を切りましたが、2つの群ではPCへアクセスできる度合いに引き続き大きな差が残ったとのこと。



クエト氏と米州開発銀行、ノースウエスタン大学のオフェル・マラマッド氏による研究チームは、2009年から2016年に2年生を対象に行われた全国学力テストの結果を調査しました。

すると、OLPCプログラムによって児童の学業成績が向上したことを示唆するようなデータはほぼなく、むしろ、進級率のデータでは負の影響すら確認されたとのこと。これは、十分な支援がない状態のところにPCだけ提供したことで、児童の学業成績に貢献するどころか負の影響を及ぼした可能性があることが示唆されています。



また、2年生・4年生・8年生を対象に行われた全国統一試験と、クエト氏らが5年生・6年生を対象に行ったテスト、そして縦断的な行政データをもとに進路への影響を評価したところ、初等教育の満期修了率が2.1%、大学への出願率が2.2%とわずかに向上していたものの、有意な影響は見られなかったことがわかりました。

10年間もプログラムを行ったのになにも影響がなかったというのはどういうことなのか、研究チームは原因を探りました。たとえば、介入群の教師は使用訓練を受けた割合が対照群の教師より35%高かったのですが、PCやネットを使うデジタルスキルには両群で有意な影響は見られなかったとのこと。また、介入群の児童については、ノートPCを用いたデジタルスキルが確かに身についたことが確認されましたが、デスクトップPCを用いるとスキルは「わずかに有意」程度、インターネット関連スキルは影響なしと判断されました。研究チームは学校で教育目的でノートPCを利用する機会が限定的だったこと、デジタルスキル以外の中間成果の効果が小さかったことで、学業に対する肯定的影響が出なかったものと推測しています。

研究チームは、追加的な教育支援の必要性を示唆しています。

なお、日本でも児童生徒に1人当たり1台のデバイスと高速通信ネットワークを整備するGIGAスクール構想が推進されており、すでに全国の小中学生に1人1台以上のデバイスが行き渡っています。GIGAスクール構想の詳細や実績は文部科学省のページにまとまっています。

教育の情報化・GIGAスクール構想の推進:文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/index.htm