大山季之【米国株マーケット・ビュー】 ─「マグニフィセント7」、実は4社? では脱落する3社とは
◆あまりにも大きなギャップ、「FRBの本音」と「マーケットの期待」
S&P500株価指数がついに2年ぶりに史上最高値を更新した。昨年後半から米国株式市場はゴルディロックス(適温)相場が続き、当面は高値圏でのもみ合いが続くとは考えていたが、正直、今の相場の勢いには「怖さ」さえ感じる。少し前まで多くの専門家が、2024年は米国景気がスローダウンするだろうと予測し、ソフトランディングできるかどうか、などと話していたのだが、いまでは、ひょっとしたら"ノー・ランディング"か、という声さえ出始めている。
確かにこの1カ月の米国経済の動きを見ると、小売り統計も堅調だし、昨年末に感じていたような景気悪化のリスクは後退したようだ。実際、米国の消費者マインドを反映すると言われるミシガン大学の消費者信頼感指数では、1月19日に発表された数値が市場予測の70を大きく上回る78.8となり、前月、12月の数値を9ポイント以上上回った。この数値は新型コロナウイルスによる行動制限が緩和されたばかりの21年7月以来の高い水準だ。
株式市場でも、昨年11月のウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事の発言をきっかけに、早期利下げの思惑から始まった年末"パーティー"が、年が明け、1月も終わろうとするいまも、まだ続いている。ただし、いまのS&P500の株価はPERが19.7倍程度まで上昇していて、コロナ前5年間の平均約17倍と比べてもバリュエーション面で過熱感があるし、普通に考えれば、これ以上の伸びしろはない。ここにきて、パーティー開始のきっかけをつくった当のウォラー理事が「射程距離には入っているが、急ぐべきではない」と、市場をけん制する発言をして"パーティー"の幕引きに動き出してもいる。
私が納得したのは、1月18日のアトランタ地区連銀、ボスティック総裁の発言だ。「利下げを決定した後に、再び利上げをするようなことがあれば、中央銀行たるFRBの決定としては最悪だ」。これに尽きるのではないか。確かに、アメリカの物価は着実に2%の目標に向け、徐々に下がってきているし、誰もが今年は金利が下げに転じる、と考えている。だが、問題はその時期と規模だ。ボスティック総裁は、それを慎重に見極めるためには時間が必要だと言っている。
したがって、今年の利下げは、FRBが年末に示唆した通り、第3四半期以降、年3回(多くとも年4回)が妥当ではないか。昨年来、多くの市場関係者たちが期待した、「3月から年6回以上の利下げ」というのは、やはり「前のめり」過ぎる。現状では金融当局と市場の期待値のギャップがかなりあると言わざるを得ず、この状態が続く限り、当面は両者の綱引きで、ボラティリティ(変動率)が高い相場が続くのではないか。
◆マーケットの期待通りだったTSMCの好決算
ところで、いまの米国株高をけん引しているのは、言うまでもなく「生成AI」ブームをはじめとしたマグニフィセント・セブンなどハイテク各社への期待だ。今回の決算の先陣を切って、1月18日に発表された台湾積体電路製造(TSMC) の決算では、24年12月期は20%台の増収となる見通しだという。同社の発表によると、昨年までコロナ禍で積み上がっていた在庫がさばけたために、今期は、本格的に「生成AI」などの先端半導体の生産に力を入れることができるためということだが、この決算内容は、世間の期待通りに先端半導体へのニーズが高まっていることを証明したと言えよう。
今後、「コパイロット・プロ」の提供を開始したマイクロソフト をはじめ、ハイテク各社の注目決算が目白押しだが、一方、一時は「生成AIブーム」に乗り遅れたと思われていたアップル の株価も持ち直してきている。バンク・オブ・アメリカ が投資判断を「中立」から「買い」に引き上げたことがきっかけになっていて、アップルの端末に生成AIが組み込まれることへの期待が背景になっている。
