「もっとボールを動かしたい」パレスチナを下して連勝も油断なし、川颯太は気を引き締める。A代表のドイツ撃破も刺激に【U-22代表】
MF川粼颯太(京都)にとって、この勝利は決して心の底から喜べるモノではなかった。
9月9日に行なわれたU-23アジアカップ予選のU-22パレスチナ戦。U-22日本代表は序盤から相手のパワーに屈し、ヒヤリとする場面を何度か作られてしまう。なんとかFW藤尾翔太(町田)のゴールで先制し、試合のリズムを引き寄せた一方で、最後まで追加点は奪えなかった。
4−3−3のアンカーでプレーした川粼もそのひとりだ。ベンチスタートとなった藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)に代わってスタートから中盤の舵取り役を任されたが、ゲームをコントロールできなかった。「こういう展開もあるのでイライラしないことを考えた」と前置きしたうえで、川粼は試合をこう振り返る。
「相手が蹴ってくるというところもありましたし、そういうところでもう少しセカンドボールを拾えたはず。ただ、セカンドボールのところで相手の圧力が強かったのは誤算でした」
とりわけ、課題になったのが、試合の入りだ。序盤から相手が前からプレスをかけ、ロングボールを主体に攻め込んできた。想定はしていたものの、押し込まれる展開となり、はね返してもこぼれ球を拾えない。そこで川粼は大きくクリアして時間を作ろうと試みたが、試合の流れを引き戻すまでには至らなかった。
先制点を奪ってゲームが落ち着くと、川粼はビルドアップを助けながら中盤でテンポよくボールを散らした。だが、決定的な仕事はできず、誤解を恐れずに言えば無難なプレーに終始してしまう。普段から「もっとボールを受けたい」と話しているように、課題の攻撃面で成長の跡を見せたかったが、簡単には事が運ばなかった。
74分に藤田が投入されてインサイドハーフにポジションを移してからは、積極的に攻撃に関与していただけに、アグレッシブさをアンカーの位置で見せられなかったのはパレスチナ戦の反省点だろう。
【PHOTO】日本代表のドイツ戦出場17選手&監督の採点・寸評。8人が7点台の高評価!MOMは1G1Aの伊東純也ではなく…
6月にA代表に初招集されるなど、この1年間で目覚ましい成長を遂げている川粼。昨年3月のチーム発足当初は、序列が決して高いとは言えなかったが、京都でレギュラーとして活躍し、今の立ち位置を築き上げた。
継続してU-22代表に招集されるようになったからこそ、主力として絶対的な存在を目ざさなければならない。ほぼ同時刻に行なわれたA代表のゲームではドイツに敵地で4−1で快勝を収めており、そうした事実も刺激になっている。
「結果だけでも素晴らしい試合をしたのはわかりますし、ドイツ相手に4得点は素晴らしいと思います。自分たちもその基準を求めないといけない」
もちろん、過酷な環境で行なわれている今予選だからこそ得られるモノもあるが、最終的にはA代表の一員としてワールドカップまで辿り着かないといけない。だからこそ、アジアの戦いで立ち止まっているわけにはいかないのだ。
パレスチナ戦の反省を踏まえ、バーレーンとの最終戦でどんなプレーを見せるのか。引き分け以上でパリ五輪の最終予選を兼ねたU-23アジアカップ出場が決まるが、敗れた場合は2位に転落するケースもある。そうなれば全11グループの中で上位4か国に入る必要があるため、予選敗退という可能性も想定しなければならない。より緊張感が高まる一戦に向けて、川粼は気を引き締める。
「インサイドハーフでプレーする(鈴木)唯人や(山本)理仁が自分たちのチームでキーポイントになってくる。自分がもっと人もボールも動かしたい。あの2人に気持ちよくボールを触らせてあげたかったので、自分がもうちょっと良いポジションを取って、相手を引き出したり、自分が引き付けて(周りを)フリーにさせたい。そういうのを理仁たちと合わせていければ、脅威になるはず」
現状に満足はしていない。さらなる高みを目ざし、京都の若きキャプテンはバーレーンの地で戦い続ける。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
