紗倉まなが明かす“不器用な”恋愛事情「恋愛でボロボロに切り裂かれたとしても、いいなと思ってしまう」

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人気AV女優として活躍中の紗倉まなが、三年ぶりに最新小説集『ごっこ』(三編を収録)を出版。
恋人ごっこ、夫婦ごっこ、友だちごっこ……曖昧な関係性に振り回される女たちの“不器用すぎる恋”を描いた話題作だ。

【短編あらすじ】

・「ごっこ」
六つ年下の恋人の浮世離れした逃避行に付き合って、あてのないドライブを続けるわたし。そろそろ逃亡資金が底をついてきた――。

・「見知らぬ人」
友人の結婚式に集う客たちの中に、夫の不倫相手が混じっているのではないか。あの女を探す那月が出会ったのは――。

・「はこのなか」
田舎町の中学で出会った奔放な女友達・タクボに思いを寄せる戸川。今の願いは、結婚したタクボの隣室に住むことだった。

「テレ東プラス」は、小説家としても精力的に活動を続ける紗倉まなにインタビュー! 作品にかけた思い…自身の恋愛事情に迫った。

※2021年のロングインタビューはこちら!



恋愛でもっと理不尽に振り回される時期があってもいい



――三編とも、設定や登場人物たちの関係性が、非常に独特ですね。どれも面白く、一気に引き込まれました。今回の着想はどのように生まれたのでしょうか。

「前々から書きたいと思っていた題材でした。ままならない関係性に翻弄される人々が登場しますが、ヒステリックな場面があると同時に躍動感のある話が書けたと感じています。
元々、私自身がかなり短気で。自分の心の奥底で濁ってたまっているものをどこかで書けたらいいなと思っていました。そんな思いが、今回の作品に登場する激しい人物たちに投影されたのかなという気がしています。
友達、夫婦、恋人と胸を張って言い切れる関係性は世の中にたくさんありますが、そのどこにも結びつかないような、なんと形容したらいいのかわからないという関係性も、私は魅力的だと感じていて、説明するのが難しい“もどかしい関係性”を描きたかった。それは前作の『春、死なん』にも通じるものがあるかもしれません」――初の恋愛小説となりますが、今回の作品には、ご自身の経験も反映されていますか。

「これまで、恋愛でうまくいかなかったことが、三編すべてに少しずつ反映されていると思います。特に色濃く出ているのは、妻と愛人が出会ってしまう『見知らぬ人』。主人公の妻・那月は、好きな相手の短所をすぐに見つけてしまい、純粋に“好き”を貫けないところがありますが、こういう部分は特にそうだなと。もっと寛容に受け止められれば続く関係を、自ら歪ませてしまうというか…」

――そんな紗倉さんの言動が原因で、玉砕してしまうというわけですね。

「恋愛において、私も那月のように感情的になってしまうことが多いのですが、男性から理路整然と返されると、どうしたらいいのかわからなくなってしまうんですよね。
自分が感じたことを懸命に伝えても、相手がものすごく冷静に『いや、それはおかしいよね』と返してくると、心が折れてしまうというか…(笑)。温度差をものすごく感じてこちらも冷めてしまうんです」

――なるほど…。でも、恋愛において本気で感情的になってしまう紗倉さんだからこそ、今回の作品のようなちょっと複雑な関係性を、リアルに面白いシチュエーションで書くことができるのかなと思います。
私は既婚者なので、特に先ほど話に出た「見知らぬ人」に感情移入しました。妻と愛人が夫の友人の結婚式で出会い、さまざまな展開が生まれますが、“自分があのシチュエーションに遭遇したらどうするかな?“と、最後まで惹きつけられました。

「そう言っていただけると本当に嬉しいです。今回の作品は、女性の方に読んでいただきたいという気持ちが強かったんですけど、特に『見知らぬ人』に出てくる愛人はどぎついキャラクターで非常に嫌なシチュエーションなので(笑)、既婚者の方はどう読むのか…正直不安でした(笑)」

――今回恋愛小説を書いたことで、ご自身の恋愛観が整理されたみたいなところはありますか?

「実は恋愛小説を書かせていただくとなった時、最初はどう書けばいいのかわからなかったんです。書きながら“恋愛ってそもそもなんだっけ?”と自分に問われ続けているような気がして…。でも、今回書いたことで、自分が恋愛をする時に、相手の何を見ていたかというのもよくわかりましたし、その発見は小説の中にも顕著に出ていると思います」

――今はSNSも発達し、恋愛の形態も変わってきていますが、紗倉さんはどう客観視しているのでしょう。

「“傷つくくらいなら恋愛はしない”とか、アイドルや好きな芸能人を応援すること方に熱量を傾けるとか…そういう一定層の方々はいますよね。私の世代だと、ギリギリ恋人がいることがステータス、付き合っている人とどんなクリスマスを過ごすかなど、特別なイベントの時に、隣に誰かがいてほしいと夢中になっていた時期がありました。
でも、今はもう、1人を楽しめる時代になっていますし、恋愛にすがりつかなくても充実したコンテンツがたくさん転がっているな、と。自分よりも少し年が離れただけで、執着する対象や恋愛観がまるっと変わっていて驚くこともあります」

――推し活文化もありますからね。“もっと恋愛を楽しんで欲しい”と思いますか?

「そうですね。恋愛でもっと理不尽に振り回される機会や時期があってもいいんじゃないかなとは思います。最近はそういう、面倒くさいことや無駄が多いと感じることに対しては、人に時間や労力を割きたくないからと断ち切る方向で自分を守る人が多いような気がするので。
“恋愛をする”って、ものすごく疲れることじゃないですか。でも私は、それを経験してきて良かったなと今でこそ思えるというか。相手と自分の面倒くさい部分を引き受けることで、疲弊はするけれど、向き合うことの楽しさも知れたな、と感じています。
推し活にも似たような部分はあるかと思いますが、自分の推しは模範解答を返してくれるし、夢を見せてくれるから、自分の悪い部分をも見せ合って衝突しながら築き上げる恋愛とは、違う向き合い方なのかなと思います。今回の作品でも、“恋愛ってままならないけれど、良さもあるよ”というところが伝わったら嬉しいです」

――2016年に、初の小説「最低。」を出版。デビュー当時と今を比べて、変化を感じていますか。

「小説は4冊しか書けていませんし、書きたいことを書く力はまだまだ足りないですね。AV女優という畑から出てきて書かせていただいているので、作家として名乗れるような身分ではありませんが、依然として、書くことが楽しくて好きであることに変わりはありませんし、“書くことは裏切らない”というのはあります。
過去の作品でも、書き続けてきたことがいい意味で自分に跳ね返ってくることが多く、“書くことで救われたな、苦労して書いた甲斐があったな”と感じる瞬間が増えました。なので今も昔と変わらず、自分が書けるものを書ければいいのかなという思いでいます」――執筆する上で、大切にしていることは?

「以前、ある編集者の方から『背伸びしている、かっこつけているように見えます』と言われたことがあって、自分の中でそれを感じたことはなかったんですけど、そう思われるのは恥ずかしいなと思ったんですね。そもそも自分自身に堅苦しい部分があるので、そこが出てしまわないように少し肩の力を抜いて、なるべくその人物像を動かすことをしようと心がけています。
あと、以前の私は家に引きこもりがちだったんですけど、書くようになってからは、あえて面倒くさいことを引き受けるようになりました。面倒くさいことをしている時にこそ気持ちが動く気がしていて。人と関わることを避けていると、観察もできないし、理解することもできない。もっと言うと、世の中の動きすら分からなくなってしまうので…。
なので自分自身にノルマを課して、あえて感情を動かすように努力しています。自宅に帰ると、まず“本当に嫌だった。疲れた…”と思うんですけど、そこでもう1歩、“でも、なんでこんなに疲れたんだろう? 何を嫌だと思ったんだろう?”と紐解いていくと、出会った人の癖みたいなものを感じることができるようになったんです。そういう発見はなるべく見落としたくないなと思いながら、日々生きています」

――ありがとうございます。それでは最後に、読者にメッセージをお願いします。

「3年ぶり、4作目の小説です。恋愛を題材とした三編で、これまでとは違う文体や題材になっています。ぜひ女性の方にも読んでいただけたら嬉しいです」


【紗倉まな プロフィール】
1993年、千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてA Vデビュー。著書に小説『最 低。』『凹凸』『春、死なん』 、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』『働くおっぱい』などがある。初めて書き下ろした小説『最低。』は瀬々敬久監督により映画化され、東京国際映画祭にノミネートされるなど話題となった。文芸誌「群像」に掲載された『春、死なん』は、20年度野間文芸新人賞候補作となり注目される。

(取材・文/蓮池由美子)